三菱「ラリーアート」復活にファン歓喜!過酷な1700kmを駆け抜ける『トライトン』の底力を味わった
レスポンス / 2022年10月13日 20時0分
ラリーアートがついにモータースポーツ活動に本格的に復帰する。「チーム三菱ラリーアート」がアジアクロスカントリーに参戦させる『トライトン』のテスト車両を日本で公開、報道関係者が同乗試乗を行った。
ラリーアートとは三菱自動車のワークスとしてモータースポーツ活動を行ってきた部門で、その名を冠したスポーツモデルも存在し、人気を博していた。2010年にラリーアートは消滅するのだが、2021年5月の中期決算報告でラリーアートの復活が宣言され、2022年の東京オートサロンには『アウトランダーPHEV』をベースとしたコンセプトモデルの「ヴィジョン・ラリーアートコンセプト」やドレスアップモデルとなる「アウトランダーPHEVラリーアートスタイル」なども展示された。
また2023年には北米においてラリーアートの名前を冠したモデルを発売するとも言われていて、ますますその存在感が高くなっている。
とはいえラリーアートの本分はモータースポーツでの活躍であり、勝利である。その最初の一歩としての活動が始まった。三菱は2013年から2015年の3年間に渡って、アジアクロスカントリーにアウトランダーPHEVで参戦してきたが、今回は同ラリーにピックアップトラックのトライトンで参戦する。
1700kmのクロスカントリーランを走り切る性能
ラリーへの参戦形態は三菱自動車が技術支援という形となる。参戦チームは「チーム三菱ラリーアート」で、総監督は2002年、2003年にダカールラリーを制した三菱自動車の増岡浩氏が務める。今回のラリーは2022年11月21日にタイをスタート。タイ国内で競技を行ったうえでカンボジアへ舞台を移し26日にゴール。6日間、約1700kmに渡って開催される。
現在、実戦車両はタイ国内で熟成を重ねているが、同時進行で日本での技術、セッティング確認のための先行試験車両があり、今回はその先行試験車両を使っての同乗試乗が山梨県の富士ヶ嶺オフロードにて行われた。
ドライバーは『ランサーエボリューション』などの開発も手がけた実験部の小出一登氏。エンジンはノーマルながら、サスペンションはクスコのスペシャル版。タイヤは横浜ゴムのジオランダーMT G303。LSDはプレートクラッチの機械式が組み込まれる。
実戦仕様はサブタンク付きの大容量ダンパーとなるとのことで、同乗試乗のモデルは少し硬めの設定。同乗試乗で一番感じたのは、クルマの動きがクイックでありながら収束性のいいものであるということ。アクセルを踏み込んでテールスライドさせていった際だけでなく、ジャンプしたのちの着地でもクルマの挙動がスッと収まり、何事もなかったかのようにすぐに次の動作に移行していく。じつに乗りやすそうで、これなら総行程1700kmにも渡るクロスカントリーランを走り切ることが可能だと感じさせてくれた。
モータースポーツ活動を「小さく産んで大きく育てたい」
総監督である増岡氏は、今回の参戦と車両開発について次のように語る。
「約7年ぶりとなりモータースポーツ活動となりますが、小さく産んで大きく育てたいと思っています。今年、目指すのは上位入賞です。今年のモデルは量産にかなり近い形です。トライトンで参戦するのは、ASEANのマーケットは三菱自動車にとって大切なものですから、その地域の商品力強化ということも大きいのです。今までもラリーで得た見識を市販車に生かしてきていて、それがいいクルマ作りにつながっています」
「今回のトライトン(競技車両)の開発には最初から携わりました。とにかく“どこまでもつのかやろう”ということで十勝のテストコースを使って、600kmのテストを行いました。このコースは1周1kmくらいなので約600周ですね。3日間掛けてドライバーの小出くんと交代で走りまくりました。コースが50cmくらい掘れてしまう状態でした。タイでも耐久試験を2回行っています。この時の走行距離も700km程度でした。タイのテストでは吸気系への水の進入が懸念されました。シュノーケルを付ければいいように思うかも知れませんが、シュノーケルは高速で走ると巻き上げた水を吸ってしまうので効果が薄く、どう付けるか? どの向きに付けるか? などの検討も必須でした」
ラリーのスタートまで残すところ約40日。ラリーアートの復活劇は世界の三菱ファンの心に響く出来事になるのではないか。そして、増岡氏は“さらにその先”の活動についても言及した。
「ラリーで勝つことは第一ですが、ライバルのいすゞやトヨタも頑張っているで、協力して競技を盛り上げていくことも大切だと思っています。後輪駆動のピックアップトラックを使ったサーキットレースにも興味があります」
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