ジェイテクトがEVと自動運転のフィーリングを変える? 自動操舵「ペアドライバー」とeアクスル用デフは何がすごいのか
レスポンス / 2022年10月14日 11時51分
ジェイテクトは10月4日、同社の伊賀試験場(三重県伊賀市)において一部メディアを招いた製品試乗会を開催した。
同社はステアリングシステムや駆動系部品などのサプライヤーで、電動パワーステアリング(EPS)の分野で世界をリードしている。トルセンLSDは同社のナンバーワン&オンリーワン商品でもある。
今回の製品試乗会は、同社の強みを活かして生み出された商用車の電動化に貢献する「BS-EPS」や従来製品の性能を維持したまま小型化・軽量化が実現された「トルセンType-D」の他、この日初めてメディア公開された自動操舵制御システム「ペアドライバー(Pairdriver)」、同社が今年8月31日に発表したeアクスル用超小型デフ「JUCD(JTEKT Ultra Compact Diff.)」の紹介を中心に行われた。
◆人と自動運転システムの協調操舵技術「ペアドライバー」
まず自動運転への対応やクルマの電動化に貢献するジェイテクトの各製品のプレゼンテーションがそれぞれの技術の開発者たちによって行われた。
この会場で初披露されたペアドライバーは人とシステムが協調する自動操舵制御システム。現在のADAS(先進運転支援システム)およびAD(自動運転)はレーントレースするためのステアリング舵角制御が主となっており、システム介入時のフィーリングに違和感があることが課題となっているが、このペアドライバーがシステムとドライバーの意思をつなぐことにより、レーントレース性能を確保したまま、より自然なドライビングが可能となる。
続いて電気自動車(BEV)などの電動車に欠かせないeアクスル用に開発されたJUCDが紹介された。小型化が大きなテーマとされるeアクスル向けのデフということで、最大の特徴は超小型であること。構造を一新することにより、同じデフ強度なら一般的なベベルギア式と比べてデフ内部のギア群の容積を半減することを可能にしたこのJUCDにより、小型車やスペースの関係で今まで搭載できなかった車両へのeアクスル搭載が現実的になる。
その他、タイヤの操舵を電気信号によって行うステアバイワイヤシステムの「J-EPICS」、ギアのかみ合い構造を新開発して小型化することにより、FF車などへの搭載性が向上した「トルセンType-D」、商用車で主流となっている車軸懸架方式専用のステアリングギヤを電動化する「BS-EPS」、駆動用バッテリーをアシストする働きを持つ「ハイパワー二次電池」の説明も行われた。
◆ジェイテクトだから実現できた「ペアドライバー」と「JUCD」の開発
そしていよいよ製品試乗会へ。開発が進められている各システムが搭載された試作車が全長1000mの直線路、大小様々な曲率のコーナーが続くワインディング路、さらには登坂路、人工低μ路、異音評価路、冠水路などがある同社テストコースの伊賀試験場に並んだ。
ペアドライバー評価用試作車のトヨタ『カムリ』では周回路を3周した。1周目に設定された「ADAS(レベル2)」ではレーンを外れそうになると車線逸脱防止支援システムが介入して強い反力が発生し、フィーリングに少々強引さがあること、車線中央維持支援システムとの連続性がないため、唐突さがあることが感じられたが、続くペアドライバーによる「ADAS(レベル2)」ではそのどちらもが滑らかなフィーリングに変化したことを体感できた。そして最後のペアドライバーによる「AD(レベル2+)」ではあらかじめ設定された軌跡に沿って手放しで自走した。
JUCDの体験試乗用に用意されたのは、電動FWD車である日産『ノートe-POWER』をベースに、リアに試作eアクスルが追加搭載され、4WD化された2台だった。eアクスル内のデフにJUCDが搭載された車両と一般的なベベルギア式が搭載された車両を乗り比べることで、JUCD搭載車は路面が荒れたワインディング路を走る際の挙動が安定していることが体感できた。風が強い日は直進安定性が向上し、上級感が増すことも感じられるそうだ。
ペアドライバーはジェイテクトがこれまで培ってきたEPSセンサー技術や制御技術を応用・発展させたもので、同社がEPSの世界的なリーディングサプライヤーだから実現できたものだという。また、JUCDにはトルセンLSDの特徴である差動制限機能が備わっており、トルセンLSDのナンバーワン&オンリーワンメーカーならではの製品と言える。
◆培った技術の応用・発展でさらなる自動運転対応とクルマの電動化を推進
異形ステアリングの他、レバーやボタンなど、様々な方法でのステアリング操作が検討されている「J-EPICS」が搭載されたトヨタ カムリとインフィニティ『G37』の試乗ではステアバイワイヤの特徴のひとつであるクイックな操舵を体験。また、タイトターン時や車庫入れ時のステアリングの持ち替え操舵が必要なく、ステアリング操作による疲労が減少することも想像できた。
量産車とトルセンType-Dが搭載された日産『キックス e-POWER』のFWD車2台の乗り比べでは、アイスバーンと雪道が設定された登坂路にてトルセンType-D搭載車は確実に前に進んでいくなど、FF車でも4WDに迫る悪路走破性が実現されていることを体験でき、トルセンType-Dが日常的な場面でも安全・安心に貢献する未来が垣間見られた。
プレゼンテーション時に、ジェイテクト取締役経営役員 松本巧氏から「この製品試乗会はお客様目線で製品を評価いただく場と考えています。お客様の視点に立って製品を体感してください」というコメントがあった。自動運転対応やクルマの電動化に貢献する技術はその効果を体感することが難しいものが多いが、今回の製品試乗会で披露されたものはどれも効果がしっかりと体感できた。
今回は比較用車両が用意された技術が多かったことも関係あるが、各技術の効果を体感できるのはユーザーも同様だろう。個人的にはペアドライバーとJUCDがジェイテクトだから実現できた技術であることも心に残った。これらの技術をさらに発展させていく同社が引き続きクルマ社会の明るい未来に貢献していくことが想像できる製品試乗会となった。
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