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若手エンジニアやメカニックが活動するHonda R&D Challengeの戦い…スーパー耐久

レスポンス / 2022年10月17日 21時0分

2019年よりスーパー耐久ST-2クラスに参戦する743号車Honda R&D Challenge FK8。人材育成を目標に自ら車両製作、メンテナンス、開発を行う。チ若手エンジニアが多く自己啓発のために参加している戦いぶりに注目した。


『シビックタイプR』開発責任者の柿沼秀樹はレース参戦の目的を説明する。「人材育成というのが1番の柱です。ここにいる若いエンジニア達もレース参戦当初は指示を待っていたのが、今では自分達から率先して行っています。いろいろありましたが、シーズン途中で『君たち若い人が自分で考えてやっていくんだよ。自分達がリーダーとして引っ張っていくんだ』と改めて言ったことで取り組み方が変わってきたと思います」と若手エンジニアの参戦マインドが変わってきたという。


スーパー耐久の現場で、トヨタ(GR)、スバル、マツダ、ホンダの4メーカーの開発陣が揃って意見交換を行う機会がたびたび開催されている。今回の岡山戦ではその意見交換会にメディアの参加も許され一緒に参加する機会を得た。


メーカー開発陣のトップと若手エンジニアが参加した今回の意見交換会で、ホンダは3名のエンジニアを同席させた。そこで各社に向けて自分達が通常業務で行っていることや、レースに対する想いなどを語り意見交換を行った。


参加したのは電子制御ユニット開発課の長福夏紀、車両運動性能開発課の後藤勇也、中大型パワーユニット性能開発課の小林天翔の3人だ。


長福さんは普段はECUの基盤開発やユニット、ソフト・ハード両方の開発に携わっている。レースにおいてはエンジニアとして全体を統率しメンバーの役割分担なども行っている。「レース参戦当時はスケジュール通りにチームを動かすことに精一杯でしたが、今では慣れたこともありレベルをあげることもできるようになりました。レースに関しては、今までは前が見えない差でのレース展開でしたが、今回は前が見える展開でした。次のFL5は戦闘力も上がっていますし期待もしています。」と語る。


意見交換会に関しては「メーカーにより参戦目的が違っています。ホンダは自己啓発の人材育成がテーマですけど、会議でもあった、どうやって人を育てるのか、クルマを良くするのか、レース業界を盛り上げるにはどうしたら良いのか、お客さんに見てもらうにはどうしたら良いのか。大きな柱で考えれば同じ話しができるんだ。親近感を感じながらも、どうやっていけば良いのかを考える良いきっかけになりました。何かコラボレーションができると良いなと思いました」とコメントする。


車両運動性能開発課の後藤さんは通常業務ではシビックタイプRの開発に携わっており、テストドライバーも兼ねて性能評価も行っている。レースにおいてはエンジニアとしてデータ解析やマシンのセットアップ、ドライバーのフィーリングをエンジニアリングに落とし込むことを行っている。「クルマのセットアップは簡単にできるものではない、決勝が始まる直前まで考えてできることは行う。自分達にはそういう部分がまだ足りないと実感しています。タイヤの摩耗具合なども長年の経験が必要なところもあり、まだまだ知見が足りないところがある。燃費計算の難しさもあり多く燃料を積んでしまい、マシンが重くなってしまうなど難しさもあります。去年はここ岡山でガス欠でリタイアしたことが脳裏にかすめたところもあります」とエンジニアリングの難しさを実感しているという。


次期車両のFL5に関しては「開発を担当していることもあり一番知っているのですが、レースで走らせたことがないので逆に一番知らないかもしれない。期待はしていますが、マシンが速くなることはその分どこかに負担がかかることも考えられます。その辺はやってみないと分からない部分でもあるので、いろいろ不安はありますが期待していきたい」と開発者だからこその不安と期待が入り混じっていた。


意見交換会については「自社の中にいると視野が狭くなってしまう部分もあります。他のメーカーの皆さんと一緒にお客さんのために何かしようという観点はすごく良いと思います。自分達だけではできないことも、多くの会社やメンバーがそろうとできることもある。いろんな角度からみんなに良いことが生まれるようなことをしたい。お客さんに対する恩返しもそうですし期待にも応えたい。こういう場があるとすごく刺激をもらえるので今後も続けていって欲しいですし、自分の意見を言えるように準備をしていきたいと思います」と語った。


中大型パワーユニット性能開発課の小林さんは、通常業務ではエンジン開発を行っており、レースではタイヤエンジニアリングを行っている。一見畑違いに感じられるがレース活動の経験がありタイヤエンジニアとしてレースに携わっている。「通常はエンジン開発を行っておりドライバビリティ領域などを開発しています。レースでは他のレース経験もあってタイヤマネジメントを担当しています。N-ONEワンメイクレースに参加していて、過去にはチャンピオンを獲ったこともあります。しかし現在のホンダではN-ONEよりも上にあがるカテゴリーがないため、このR&Dチャレンジに参加して知見を得るということをしています。FF車ではもっとリアタイヤを積極的に使っていきたいのですが、車両全体パッケージもあり難しい部分もあります。でもデータを見てタイヤの表面を見て、ドライバーとコミュニケーションを取って最適なタイヤの使い方を考えています」とレース経験があることが仕事に繋がっている。


意見交換会については「2人の先輩が良い意見を言っているのを横で見ていて、もっとあれを言えば良かった。これについて言えば良かったと思うこともありましたが、改めて思うのはメーカーもモータースポーツを発展させていけば会社の利益になると思う。手段はいろいろあると思いますが共感できるところはありました。自分自身も小さい頃からモータースポーツに憧れて影響を受けてきているので、若いエンジニアや小さい子供達にとっても夢をもてるようにしていきたいと思います」と次世代の子供に向けても目を向けていた。


プロのメカニックやエンジニアがいないなかで、自分達の可能性を高めていく743号車Honda R&D Challengeの戦い。次戦スーパー耐久最終戦は11月26~27日に鈴鹿サーキットで5時間のレースが行われる。

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