チリツモの軽量化、ライバルを突き放したSUBARU BRZ…スーパー耐久 第6戦
レスポンス / 2022年10月18日 17時45分
スーパー耐久第6戦岡山3時間レースでST-Qクラスに参戦する61号車SUBARU BRZ CNF Conceptは、前戦のモビリティリゾートもてぎでライバルの28号車 GR86 CNF Conceptに惨敗。その悔しさをぶつけて戦った。
前戦の第5戦もてぎスーパー耐久5時間レースで、28号車 ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは、予選でAドライバー蒲生尚弥が2’08.817、Bドライバーの豊田大輔が2’11.105で合算4’19.922となった。一方の61号車Team SDA Engineering BRZ CNF ConceptはAドライバー井口卓人が2’10.458、Bドライバーの山内英輝が2’10.312で合算4’20.770となった。
同じカーボンニュートラル燃料を使い、将来のスポーツカーの開発を行うために競っている2台。車両の差はもちろんあるが、予選に合わせてマシンを作り上げタイムを出したのは28号車だ。A/Bドライバーそれぞれで少しづつタイム差があり、これは28号車が第3戦SUGOをスキップし車両改善を行い、第4戦オートポリスでトラブルを起こしたことの反省から、猛烈にマシンを作り上げて第5戦もてぎに挑んできたのがわかる。
もてぎでの決勝は28号車がレースラップでも61号車を圧倒して勝利を得た。これで28号車と61号車の戦いは28号車が2勝、61号車が3勝という結果になった。GAZOO Racing/ROOKIE Racingとしては嬉しい勝利となり、61号車のスバルは落胆していた。
61号車はもてぎにおいて、リサイクルカーボンを使用したボンネットや、スバルのお家芸と言えるアイサイトをレース現場に登場させ、将来的にコースサイドのフラッグの確認、レースという速い速度でのアイサイトの認識、FCY(フルコースイエロー)時の運転補助など、希望に満ちたプレゼンを行い注目を浴びていた。この画期的な挑戦とは別に、レースにおいて純粋に負けてしまったことで開発陣は打ちのめされてしまう。
しかしスバル開発陣は、前戦もてぎから1か月ちょっと経った、岡山国際サーキットで開催される今回の3時間レースに向けて大幅なアップデートを行ってきた。
電装品のノイズ対策、軽量化、エンジン出力アップ、そして開発メンバーのモチベーションアップを主に改良を行ってきた。特に軽量化に関しては参加する開発メンバーからアイデアを募ったところ、数多くの軽量化に対するアイデアが出され、-70kgを目標に軽量化に挑んだ。結果的には-60kgになったが大幅な軽量化に成功した。
大きな物を変えることが難しいなかで、前戦でトピックになったアイサイトを一旦撤去、10月という涼しい時期になってきたことで、リサイクルカーボンで作られたボンネットの一部をダクト形状から平板にした。エンジンルームにあるプラスチック製のカバーの一部を切除、車内に置くドライバーの水分補給に行うドリンクホルダーに穴あけ加工を行う。ドライバーに涼しい風を送るエアコンの撤去。量産車であればトランクはダンパーで開くが、レーシングカーはダンパーが無く蝶番で開け閉めを行う。そのダンパーが付く金具部分の不必要な箇所を切除。極め付けは前後エンブレムを撤去しシールタイプに変更。と数え上げればキリがないほど、本当に小さなチリも積もればの結果、60kgの減量に成功した。
そして迎えた岡山での戦い。金曜日の練習走行は1時間が3回の合計3時間。マシンのセットアップを行っていく中で軽量化は抜群に効果を見せ、井口・山内両ドライバーも軽量化の効果は高いとコメントする。1時間の練習走行の間にピットに戻りセットアップを決めていく中でデフの交換作業も行う。今回はデフの効き具合なども検討し数種類のデフを持ち込んでいた。走行時間と走行時間の間にあるインターバルでデフなどの交換を行うのが一般的だが、走行時間内で交換を行いその性能差のチェックをする荒技なことも行った。
その結果、予選で61号車はAドライバー井口卓人が1’41.239、Bドライバー山内英輝が1’41.087の合算3’22.326となる。一方の28号車はAドライバー蒲生尚弥が1’40.288、Bドライバー豊田大輔が1’42.295の合算3’22.583となった。その差はわずか0.257だが61号車が前に出た。前戦で悔し涙を流したスバルの若いエンジニア達は満面の笑みで予選を終えることができた。
決勝では軽量化と吸排気系の見直しで少しパワーアップをした61号車が快調に後続の28号車を引き離していく。ピットインのタイミングなどもあり、一時は61号車山内が28号車をラップダウンすることも起きた。その後61号車もピットインを行い社員ドライバーの廣田光一が走る。その際にスピンもあり差が詰まってしまったこともあったが、順調にドライブ。最後に28号車は蒲生尚弥が追い上げ、61号車は井口卓人の戦いになったが序盤のリードを守り切り61号車が勝利を得た。
この結果にスバルの本井監督は「ホッとしたというのが本音です。本当にみんなの小さな積み重ねでここまで来た。しかしまだまだ出来ていないこと、やりたいこともあります。ドライバー単体では蒲生選手に負けています。こちらのドライバーが遅いという訳ではないと思うので、ドライバー込みで勝てるようにしていきたい」と勝ったがどこか悔しそうな表情を浮かべながらコメントをする。
井口・山内両ドライバーも「勝てて良かったですが改善点は多くあります。負けている部分もあります。でもチームのみんながいろいろ積み重ねてきたことで良いレースができたと思います」次戦に向けてさらなる改善を望んでいた。
次戦スーパー耐久最終戦は11月26~27日に鈴鹿サーキットで5時間レースが行われる。開幕戦が鈴鹿だったこともあり、今シーズンの開発や進捗の結果を見るには最高の舞台かもしれない。
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