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「2030年までにBEV専業化」最新の電動モデル『40シリーズ』に、ボルボの本気を見た

レスポンス / 2022年10月21日 12時0分

2030年までにBEV専業メーカーとなることを公表しているボルボ。2025年でも半数をBEVに(日本は45%)置き換えることを約束するなど、その動向は慎重かつ確実性を優先しているのが如何にもボルボらしい。


すでにクロスオーバーSUVの『C40』にはBEVの第一弾となる「C40リチャージ」が発売され、100台限定ではあるものの、サブスクプランを導入して話題となっていた。それに続き今度は欧州と日本でカー・オブ・ザ・イヤーを受賞した、絶大なる人気を博す『XC40』が2023年モデルとしてフェイスリフトを実施。そんな「40シリーズ」のBEVモデルに加え、48Vハイブリッドモデルと併せて一足先にメディア向けの試乗会が行われた。


最初に試乗したのは、「XC40リチャージ」。予めお伝えておくと、このXC40とC40のBEVモデルは、フロント側にモーター1基を備える「リチャージ プラス シングルモーター」というグレードと、前後1基ずつモーターを配置する「リチャージ アルティメット ツインモーター」がラインアップされ、まずはその前車にあたるXC40リチャージ プラス シングルモーターから試乗することとなった。


BEVの見本的ウルトラスムーズ!シングルモーターの「XC40リチャージ」


最初に驚くのは、クルマがスタートするまでのアクションの少なさだ。近づけばドアロックは自動的に解除され、あとはシフトをDレンジに入れるのみ。スタートボタンは存在せず、起動は運転席に座った時点で行われるとのことだが、これがなんと新鮮なことか!実に先進的で好ましい。もはやこれで良い!これが良い!という印象からスタートとなったのだが、走り出してからもさすがはボルボだと唸らせた。


XC40のシングルモーター仕様の最高出力は170kW(231ps)、最大トルクは330Nmで、バッテリーは69kWhの容量で満充電あたり502km(WLTCモード)を走行する。無論1モーターだからFWDということになるが、内燃エンジン車から乗り換えても違和感なく受け入れられるほど、ごく自然でバランスの良さが際立つ。フロア下には96セルにも及ぶリチウムイオンバッテリーが搭載されているとはいえ、さほど自重を感じず、ウルトラスムーズに走行するその様は、BEVの見本とも思えるほどだ。


BEVの場合、その特性に併せて比較的おとなしく走ってしまう傾向にある筆者だが、意図的にアクセルを深く踏み込んでも急激に立ち上がるような印象もなく、かといって不満もないという、ちょうど良いさじ加減に仕上げられているから実にボルボらしい。それに加えて、いわゆるワンペダルによる回生ブレーキの感触も好印象。世にあるBEVをすべて乗っているわけではないものの、このフィーリングならすぐに慣れるし理想的だと思わせた。


ボルボも本気になると恐ろしい…ツインモーターの「C40リチャージ」


その点、次に試乗した「C40リチャージ アルティメット ツインモーター」は、ボルボも本気になると恐ろしい一面を顕にするとばかりのパワフルさで魅了する。何しろ、最高出力は150kW(204ps)×2=300kW(408ps)、最大トルク330Nm×2=660Nmである。バッテリー容量も78kWhと増えているが満充電で484kmと、さすがにシングルモーターよりはわずかに劣るとはいえ、それでもこの差に留めているから十分、実用的だろう。


しかし、これは羊の皮を被った狼!とまでは言わないまでも、それに近いツワモノ。かといってスポーティという表現が相応しいとまではいかない絶妙なところを狙っているようだ。0-100km/h加速4.7秒と主張するように(ポルシェ『718ボクスターS』とほぼ同等!)、アクセルを深く踏みこもうものなら強烈な加速をお見舞いされるが、さすがに重心の低さが効いているようで、BEVならではの“ふんばり感”が功を奏して終始安定しているのが、かえって恐ろしい。


4WDによる効果も重なり、その走りには不思議な魔力なようなものもある。おそらくワインディングでも相当良い動きをしそうな予感がする。150kgほどシングルモーター車よりも重いとはいえ、その動きに不満がないどころか、BEVの可能性を期待させるような出来栄えだ。


もちろん、ゴ―&ストップを繰り返すような街中では“普通”にドライブできるが、その際どうしても気になるのが回生ブレーキの強さ。シングルモーターと比べて急激に効く傾向にあるため、慣れが必要なのは確か。エネルギー効率など航続距離をかせぐためにもワンペダルドライブを推奨したいところだが……。


ちなみに両モデル、両グレードともにスポーツモードなど別途ドライブモードが用意されているわけでもないし、回生ブレーキのレベル調整もない。ただ、回生ブレーキのオン/オフは可能だから、どうしても慣れない場合は切ればいいのだが、それも本末転倒のような気がする……。


内燃エンジンの効率化、最終地点か「XC40 48Vハイブリッド」


そして最後は、2リットル直列4気筒ガソリンターボエンジン+電気モーターを組み合わせる「XC40 48Vハイブリッド」に試乗。2023年モデルのラインナップは大きく分けてFWDの「B3」と、AWDの「B4」を揃え、同じエンジンながらB3は163ps&265Nm、B4は197ps&300Nmを出力する。ちなみに2022年まで導入されていた「XC40リチャージ プラグインハイブリッドT5」はBEVモデルに取って代わり、実質ハイブリッドモデルはこの2モデルのみ。グレード名なども変更された。


今回の試乗会にこの48Vハイブリッドを用意したのは、主にBEVのメリットを実感させたかったのか定かではないが、乗っていても取り立てて特筆すべき点はなかったというのが本音。


エンジンは新たにミラーサイクル技術を採用し、VVTによるインテークバルブの制御と、ピストンデザインの変更、インテークマニフォールドも形状を見直したほか、VNT(バリアブルノズルタービン)ターボチャージャーと新型オイルポンプの採用に加え、7速DCTも進化版を搭載しているというが、基本的に制動時に得られるエネルギーをジェネレーターが電力に変換して48Vのバッテリーに蓄えることで、加速時にそれを再利用するという仕組みを採るのがウリだ。


それだけに加速に関しては、意外にも活気づいていて、BEVに比べれば軽量なぶん、同じXC40でも軽快感に富む。ただ、他社の多段化が多く見られる中で今や7速というのはややスペック的に劣るようにも思えるが、それでも悪くはないし、過渡期のハイブリッドモデルとしては熟成の域に達していて大きな不満もない。国産のハイブリッドモデルのように電気モーターのみで走行をするわけでもなく、別途、充電することもないから、内燃エンジンの効率化、最終地点のようにも思えば、これを最後にBEVへ移行するのも悪くないだろう。


もっともボルボらしい組み合わせは


それにしても今回のフェイスリフトをきっかけにあらためて思い知らされたのは、ボルボならではのデザインや走行性に加え、インフォテインメントシステムなど、“シンプル・イズ・ベスト”という姿勢に深く共感した。


12.3インチのメインディスプレイには中央に地図表示、左側にデジタル速度表示、右は回生レベルや電力容量など必要最小限に留まる。ACCもステアリングに設けられたボタンひとつ押せば作動するなど、余計な情報や動作を必要としないのが秀逸で尊敬に値する。グーグルとの連携も万能とも言えるほど多機能で、すべてが直感的に操作でき、各表示も分かりやすい。


ただ、今回この40シリーズを通じて若干感じたのは、C40もXC40も、BEVも48Vハイブリッドも、全体的にやや硬い乗り心地であったのが少々残念。シートのクッションやホールド性が人にやさしくできているからこそ、硬さが目立ってしまう。ACCやレーンキープアシストの精度をこのコンパクトクラスで実現するには、実際に仕方がないことなのはわかるが、もう少し緩めることはできなかったのだろうか。


それさえ目をつぶれば、すべてに満足、間違いない良質車である。その中でもベストは、XC40のシングルモーター(もちろんC40も)。筆者ならXC40リチャージ アルティメットを選択して、オプションのウール素材を用いたテイラード・ウールブレンドシートを選ぶだろう。これがもっともボルボらしいと思う。


■5つ星評価(総合評価)
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★★


野口 優|モータージャーナリスト
1967年 東京都生まれ。1993年に某輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。後に三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務し、2008年から同誌の編集長に就任。2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。25年以上にも渡る経験を活かしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動中。

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