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【VW TロックR 新型試乗】速さとバランスの妙、でもお値段は…中村孝仁

レスポンス / 2022年10月23日 12時0分

何てったって300psである。かつて自主規制があった時代はツインターボの『フェアレディZ』だって、『スカイラインGT-R』だって成し得なかった数値である。


今となっては俗にいうハイパーカーなど1000psを超えるようなクルマも売られる時代だから、300psでは誰も驚かないかもしれないが、それでも300psはとてつもないパワーである。試乗会という限られた時間でその魅力を堪能するにはあまりに短い。それでもこのクルマ、VW『TロックR(T-Roc R)』は少なくとも私には最大限の魅力を見せつけてくれたように思う。あくまでもクルマとして。


速さではなくバランスに魅力


300psという数値が先行してどうしても速さやパフォーマンスの印象が先に来てしまうかもしれないが、このクルマの魅力はむしろバランスにあるような気がする。ノーマルのガソリン仕様は150ps、250Nm。対するRは300ps、400Nm。パワーだけをみればノーマルの倍。トルクだって6割増しだ。重量増は一番軽い「TSIアクティブ」の1320kgより220kg増えて1540kg。パノラマルーフが付くとさらに30kgの重量増になる。


しかし、そんなものは何するものぞというパフォーマンスを持っているし、何よりもRはFWDではなく4モーションと呼ばれる4WD仕様だから、その安定感はさらに高くなって、前述したようにバランスの良さを感じさせてくれるのである。そもそもこの形で今まで4WD仕様が存在しなかった(日本市場に)ことにも少し疑問を感じてしまう。


FWD仕様もいわゆる走る、曲がる、止まるという自動車にとって不可欠な3要素は高次元でバランスしているのだが、このRはそれを2~3段引き上げたという印象であった。400Nmの最大トルクは2000rpmから5200rpmという広い範囲で発揮されるのだが、残念ながら街乗りをしている限り2000rpmに到達するのは信号からの加速時など限られた状況でしかなく、通常は精々い1500rpm程度で静々と回るから、この領域ではTSIと何ら変わるところはない。


ところがいざここからグイっとアクセルに力を込めた時の加速は、TSIとは次元の異なる活発さを見せてくれる。とりわけ上りのきついワインディングなどでは、このパワーは大いに重宝するはずだ。


TロックRが作り上げたRの新たな世界観


DCCと呼ばれる可変ダンピングシステムを装備するRは、走りに応じてダンピングを好みに変えられるという点では如何にも走り屋向き。とはいえこのR、初めて『ゴルフ』に設定されて日本に登場した時は、その過激な印象に高性能でならした「GTI」がかすんでしまう強烈なインパクトを残し、さらにそのエクゾーストノートもアクセルオフでボボボっという如何にも高性能車的サウンドを聞かせてくれたものだが、今回のT-Roc Rの場合、やんちゃさは影を潜めてむしろ優等生的なRに変貌していた。冒頭に速さよりもバランスの良さがこのクルマの持ち味と評したが、まさにそこが今回のTロックRが作り上げたRの新たな世界観という印象であった。


だからというわけではないだろうが、乗り始めても高性能車にありがちな、きちっと硬い脚の印象は皆無で、むしろ快適…と思ってしまうほどスムーズな走りを披露する。今回は高速と街乗りの試乗が中心で、ワインディングはほとんど走っていないから、ヒラリヒラリとした荷重変化による乗り味がどうであるかは未知数だが、少なくとも高速や街乗りで体感する乗り心地は実に快適であった。


そのお値段、626万6000円である


とはいえ、そのお値段、626万6000円である。試乗車はディーラーオプションのフロアマット3万8500円が載るから630万4500円となる。ゆえに乗り出しはほぼ700万円だ。多くのジャーナリストは適正価格とみているようだが、私には高い。まあ、ベース仕様のTSIアクティブがギリギリ394万3000円とほぼ400万円だから、4モーションにDCC、ディスカバープロなどつけられる装備はほぼ満載なので、考えようによっては適正である。


円安だの半導体不足だの紛争だのクルマの値段を日本において押し上げる要素はいくらでもあるし、大体何よりも日本が通貨において没落していることと給料が上がらず相対的にモノの値段が高く感じられるからそういう考えになるのだと思う。きっと作っている本国では魅力的な価格なのだろう。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★


中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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