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【メルセデスAMG SL】「SL史上初」づくし!リアルスポーツカーへ原点回帰した新型の“ここがすごい”

レスポンス / 2022年10月25日 8時0分

日本でもついに最新のメルセデス『SL』が発表となった。往年の名車である『300SL』を初代とすれば、7代目となるコードネーム“R232”は、「SL史上初」が盛りだくさんのモデルである。


まずはその車名だ。新型は“メルセデスSL”ではなく“メルセデスAMG SL”と、AMG名義となった。これまではメルセデスSLがまずあって、それをベースにAMG版が仕立てられてきたが、R232はAMGに一本化されたのである。


これにはさまざまな理由があるようだが、そもそも初代の300SLはルマンをはじめとするさまざまなレースで輝かしい戦績を残してきたスポーツカーだった。しかし2代目以降はラグジュアリーなオープンカーの雰囲気をまとうようになっていく。新型をAMG名義としたのは、リアルスポーツカーとしての原点回帰という意味も込められているのだろう。


ゼロから開発した新規プラットフォーム


新型SLのプラットフォームはゼロから設計したというまったくの新規開発で、現時点ではSL専用となっている。アルミを主体に、スチールやマグネシウムや繊維複合材を適材適所に使う複合型アーキテクチャであり、ベースはアルミ製のスペースフレーム構造だが、実は初代300SLもスペースフレーム構造だった。


オープンボディは不利とされるボディ剛性の確保にも余念がなく、ボディシェル自体のねじり剛性は先代比で18%向上、横方向の剛性はAMG GTロードスターより50%増、前後方向は40%増を実現している。一般的に、ボディ剛性を上げると重量が増える傾向にあるとされるものの、新型SLのホワイトボディの重量は270kgで、これはこのサイズのオープンボディとしては軽量と呼んでいい数値である。


また、スポーツカーとしての性能を存分に引き出せるようパッケージにもこだわり、パワートレインを可能な限り低い位置に置くことで低重心も達成した。


SL史上初の2+2パッケージ


パッケージといえば、ここにもSL史上初がある。新型は2+2の4人乗りとなったのである。4代目のR129ではオプションで2+2が存在していたものの(日本正規未導入)、標準仕様が4人乗りは初めてだ。といっても大人ふたりが座るには少々キツい広さであり、子供かエマージェンシー用、あるいは荷物やジャケットなどを置くスペースと捉えるのが現実的だ。


ただ、完全ふたり乗りと2+2の両方を所有した経験のある方なら痛感すると思うのだけれど、前席の後方にスペースがあるのとないのとでは、たとえそれが限られた広さであったとしても日常の使い勝手に雲泥の差が生まれるのである。


ルーフは先代の金属製バリオルーフから電動ソフトトップへと取って代わった。21kgもの軽量化、特にクローズ時の低重心化、ラゲッジルームの容量拡大などが主な理由とされている。開閉に要する時間は約15秒で、60km/h以下であれば走行中でも操作可能となる。


ラゲッジルームはクローズ時で240リットル、オープン時でも213リットルが使えるよう工夫が施されている。なお、ソフトトップはブラック/グレー/レッドの3色から選べるそうだ。


F1由来の電動ターボを搭載


日本仕様のSL43が搭載するのは、AMG『A45』などですでに使われている直列4気筒ターボのM139型を改良したBSG仕様のユニットで、特に注目すべきは電動ターボを採用した点にある。この機構はメルセデスAMGペトロナスF1チームの技術由来のもので、約4cm幅のモーターがターボのタービンとコンプレッサーの同軸上に組み込まれている。


ご存知のように通常のターボは、排気がタービンを回し同時にコンプレッサーも回って吸気側の空気を圧縮してシリンダーへ送り込むシステムだが、タービンを回すに十分な排気を待ってから過給するため若干の時間を要する。これが俗に言うターボラグだが、SL43のM139は排気を持たずにモーターでコンプレッサーを回すことができるので、理論上はターボラグが存在しない。また、アクセルペダルから足を離したりブレーキペダルを踏んだりした時でもコンプレッサーを一定の回転数に保つので、再加速時に直ちに適正のブースト圧を得られるのである。


これに組み合わされるトランスミッションは、これまでAMGの63モデルのみに搭載されてきたAMGスピードシフトMCTの9速ATで、トルクコンバータの代わりに湿式多板クラッチを用いることでダイレクト感とシフトチェンジの優れたレスポンスを両立している。


本国には『SL55』と『SL63』もあり、いずれもこれまたSL史上初の4輪駆動(4MATIC)と後輪操舵を備えているが、日本仕様は後輪駆動で後輪操舵もない、ある意味SL本来の素性が味わえるシンプルな諸元となっている。


SL55とSL63はケチの付けようがない出来だったが


サスペンションは前後ともに5本のリンクからなるマルチリンク式で、アルミ製電子制御式ダンパーと軽量コイルスプリングを採用したAMG RIDE CONTROLサスペンションを標準装備する。このダンパーはふつのバルブを持ち、伸び側と縮み側を相互に独立して無段階に動かすことができるので、減衰力の変化幅を通常よりも広げることが可能となった。これにより、ばね上の動きを抑え込みたいスポーティな走行シーンにも、ゆったりとしたクルージングを楽しみたい場面にも適用できるのである。


SL55とSL63に試乗したときの記憶を辿ってみると、ボディ剛性の高さ、アジリティの高さ、乗り心地のよさ、圧倒的動力性能など、ほとんどケチの付けようがない出来だったことを思い出す。SL43まだ未体験だが、SL55/SL63と比べると重量が軽く(特にフロント)、前輪には駆動力がかかっていないので、より俊敏ですっきりとした操縦性に期待を寄せている。

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