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【テスラ モデルY 買いました 7】「アリア」や「bZ4X」ではなくテスラを選んだ理由

レスポンス / 2022年10月25日 21時0分

テスラ『モデルY』が発売されたと同時にとっさにポチッてしまった一編集者である筆者。金額は619万円! テスラを買うとはどういうことか? これから始まるテスラ購入までの道のりを消費者目線でレポートする本連載。今回は、納車までの時間にやった加入任意保険のことや、なぜほかのEVを選ばなかったのかの話をしようと思う。


任意保険選択など納車前の準備


さて、あとは納車を待つだけだった時間を振り返ってみよう。車検証は納車直前に発行され、その時点で、ナンバーも判明する。任意保険加入や補助金申請はナンバーがないとできないので、それまでに情報収集などをやっていた。


ちなみに任意保険はテスラ社と提携している保険会社を案内されたので、その保険会社で入ることにした。というのも、わざわざほかの保険会社と契約しても、テスラに慣れた会社でないと、万一の事故処理もわからないことだらけになりそうだと感じたからだ。しかも提携しているのであれば多くのテスラユーザーが加入していると思われ、より多くのテスラの事故情報が集まっているだろう。であれば事故処理もスムーズに行われると期待できる。


また、車両保険は必須という情報も得られた。というのも、テスラはメガキャスティングという製造方法をとっていて、これは車台を後、真ん中、前と3つの部分に分け、究極的には部品3つに集約して製造しようとしている。現在、モデルYは後の車台のみ、いままで70以上の部品で構成されていた部分を1つの鋳型にし、アルミ合金を流し込んで製造しているそうだ。これにより、製造コストも下がり、安全性や剛性も上がったようだが、それとトレードオフの関係で、万一事故に遭ったとき部分部分で修理することができず、修理費がときに100万円以上と非常に高額になるみたいなのだ。つまりは、車両保険を満額で付けておかないと安心できないということになる。


とはいえテスラは、もっとも安全なクルマを目指し、欧州安全基準を定めるユーロNCAPやオーストラリアのANCAPやNHTSA(米国運輸省道路交通安全局)の評価でも“ほぼ満点”と言える5つ星を取得している。オートパイロットと呼ばれる運転アシスト機能の働きも安全性へ寄与し、その評価は高い。まぁ、ぶつからなければそれでいいのだが、自動車にはうっかり自損事故やもらい事故ということもある。そう考えると保険は重要だ。


国産メーカーもEVを発表したが


このコラム第1回「20分で600万超のクルマを躊躇いなくポチった理由」で、カーシェアリングからの卒業という話を書いた。しかし実は、そこからすんなりとテスラ購入となったわけではない。それは『モデル3』を試乗したときに感じた内装のシンプルさとスポーティな足回りにワケがある。個人的には嫌いではないが、家族はどう感じるだろうか、やはりこれまでのドイツ車や国産車のほうを好むのではないか、そういう懸念があった。とはいえ個人的には次のクルマはもうガソリン車ではなくEVだと決めていた。


排気ガスを出さないクルマに乗りたかったのだ。と言っても「環境保護のため」というよりも個人的事情によるものだ。ボクは自動車部出身でありながら恥ずかしいことに車酔いがひどい。通常は運転していれば大丈夫なのだが、山道になると運転していても気分が悪くなるほど。その原因の1つが車内の臭い、ひいては排気ガスの臭いなのだ。ボクだけでなく家族は皆車酔いがひどい。その原因の1つでもなくすことができれば良いという思いをEVに託したというわけである。しかし実際には納車後の日常使いが始まらないとわからないことでもある。


そんな折り、国産メーカーもテスラに匹敵するほどの航行距離を走ることができるEVを発表した。日産の『アリア』、トヨタの『bZ4X』、スバルの『ソルテラ』だ。資料を見る限り、国産ならではの内装を備えているようで、また、ハンドルの前にメーターがある、などいままでのクルマのカタチを踏襲しているので違和感はない。さすがにテスラほどシンプルではないだろう。


さて、そこで試乗しようとしたのだが、今年2022年3月時点では試乗はまだ先のようだった。アリアの最初の予約はすでに終わっていて、いまから注文すると納期は1年くらい先になりそうだと言う。う~ん。これでは検討も難しいか…。しかしトヨタのbZ4Xは、5月には予約できるらしい。納期は未定だが世界のトヨタが発売する斬新のEV。これは期待できそうだ。しかしbZ4Xは販売するのではなく、トヨタの個人リースサービスKINTOでのリースのみだという。まぁ、リースでも乗れるのであれば、車検など丸々リース料に含まれて、逆に良いのかもしれない。そう思ってWebサイトをじっと読む、じっと読む…そこで見つけたのが小さな文字で書かれたひと言であった。


※ご利用にあたっては下記の禁止事項がございます。
喫煙/ペットの乗車/車両の改造/競技走行


「ペットの乗車」…いや、これ、カーシェアを卒業した理由の1つですから。ここで萎えてしまった。スバルのソルテラは販売するようだが、とにかく萎えてしまった。


アリアも最初に予約したユーザーには届いたようだが、その後の納車はまだ先のようだ。現時点でWebサイトには「納車開始予定日:今冬以降」とある。“今冬”とはいつなのか? 冬はいつまでを冬というのか、非常に哲学的な難問を突きつけられているような気もする。しかも“以降”なので、結局、春なのか夏なのかも確定していない。


強みはネットワークとアップデート


結局テスラへの思いは募るのみとなってしまったわけだが、調べれば調べるほど魅力的に見えてきた。そのポイントは「ネットワーク」と「アップデート」である。


まず「ネットワーク」だが、すべてのテスラ車はVINによってテスラ社にその情報が伝えられ、中央のサーバーで管理されている。ここでは個々人ごとのテスラ車の運転状況やバッテリーの状況、その他さまざまな情報が蓄積され、分析されていると言う。なんのための分析か。それは走行性能や充電性能、使い勝手など、クルマをより良いものとすべく利用者の情報を集積し、その情報をもとにクルマに搭載されている数々のコントロール機器を「アップデート」するためなのである。このアップデートはモデル3の場合、テスラ情報サイト「テスカス」によると昨年1年間で13回アップデートされている。その度に使い勝手が良くなっていると言う。まるでスマートフォンのようだと言われる所以である。


「ユーザーをモルモットにするのか」という批判があるのは確かだ。かたや中国では国内に張り巡らされたカメラによって国民を撮影し、AIの機械学習をさせることによって飛躍的にAI技術が伸びているとも言う。民主主義国家として、そこが批判の的になるのも理解できる。テスラも明確な個人情報を取得しようと思えばできるだろう。国産メーカーではとてもできないことではある。しかし一方で、それらのデータがあることで、クルマの改良につながるデータが取得でき、進化していくわけだ。その喜びを享受するかしないかは利用者に委ねられる。


ネットワークはクルマだけではない。テスラ独自の充電施設スーパーチャージャー(SC)への期待は第3回「8年前の「電欠恐怖」の記憶を払拭できるのか」に書いた。その存在もさることながら、テスラの充電網もネットワーキングされている。だから行きたいSCがいま空いているかどうか、アプリでリアルタイムにわかる。充電はプラグを差すだけで開始され、VINによりクルマが特定され、料金も紐付けられたクレジットカードで引き落とされる。その他の手続きはなにもない。


充電器は万一故障したとしてもそれはすぐにセンターで把握できるので、リモートで修理できればするし、リアルに行くことが必要ならスタッフが行って修理する。故障が放置されることはない。


言ってみれば、それもこれもテスラのCEOイーロン・マスクのなせる技なのである。ワンマン企業かどうかまではわからないが、外から見る限り彼トップの判断ですべてが進んでいるようだ。しかも日常的にTwitterをやっているので、不満や不具合をツイートすれば、運が良ければ次のアップデートで反映されて改善される。


どうだろうか? この素早さ、ほかのメーカーに真似できるだろうか? つまり良くも悪くもイーロン・マスク次第なのがテスラなのだ。最悪、彼の行いによってテスラが倒産すれば、それまで。彼がユーザーのことを考え、地球のことを考え続けてくれれば、テスラのユーザーは満足このゆえない。ちなみにSCで供給される電気は100%再生エネルギーだとのこと。


イーロン・マスク次第のテスラに乗るユーザー(物好き?)が、ある意味“テスラ信者”と言われる所以でもある…。個人的に“信者”になるつもりはないが、やっていることに限っては十分に賛同できるのだ。


田代真人
福岡県出身。九州大学工学部卒業後、朝日新聞社入社。その後、学習研究社にてファッション女性誌編集者、ダイヤモンド社にて初代Webマスター、雑誌編集長、書籍編集などを経て独立。出版&電子出版、Webプロデューサー、PRコンサルタントとして活動後、現在は、駒沢女子大学教授、桜美林大学非常勤講師を務める。専門は「編集論」。

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