【フェラーリ 296GTS 海外試乗】フェラーリの真骨頂はオープンエアかもしれない…九島辰也
レスポンス / 2022年11月2日 12時10分
初のSUVとして発表された『プロサングエ』に話題が集まりがちなフェラーリだが、『296GTS』を忘れてはならない。V6ターボ+モーターというプラグインハイブリッドモデルとしてリリースされた『296GTB』のスパイダー版である。10月イタリアで行われたメディア向け国際試乗会でその実力を試してきた。
風を感じたくてサイドウィンドウを下げるほど快適
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注目はエアロダイナミクスを徹底的に研究した屋根周辺の構造とエンジン音。少数台数メーカーのフェラーリは屋根開きモデルをクーペの派生と考えずに、ひとつの独立したクルマとして設計・生産する。そのため、「ここまでやる!」というほど手が加えられているようだ。
具体的には乗員後頭部後ろの造形とリアアクティベイトスポイラーが高いエアロダイナミクスを実現する。フロントからの風を見事に整えながら後方へ流し、ダウンフォースをしっかり稼いでいる。また、実際に走らせると感じるが、キャビンへの風の巻き込みは最小限に抑えられる。そのため髪の毛が逆立つことはなく、快適なオープンエアモータリングを楽しめるのだ。
アウトストラーダの制限速度は130km/hだが、その領域においてまったく問題ない。逆に風を感じたくてサイドウィンドウを下げたほどだ。
シングルセンターエキゾーストシステムから見直した音
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そしてその時耳に入ってくるのが独特のエンジン音。そもそも名高いフェラーリサウンドを作る人たちがさらにこだわったというのだから興味が募る。
目指したのは自然吸気12気筒エンジンのサウンドだそうだ。V6ターボエンジンを“The Little V12”と位置付け、開発を進めた。要するに『812GTS』に近づけるということだろう。クーペよりも身近にエンジン音が聞こえるため、シングルセンターエキゾーストシステムから見直した。プレエンテーションによるとかなりの時間を音作りのために費やしたようである。
よって、聞こえてくるサウンドは低回転域で野太く、そこから回転計に沿うようにリニアに甲高い音が広がっていく。V6だから迫力がないといった予想を裏切るフェラーリサウンドだ。自然吸気にはないターボの過給器音は聞こえるが、それはV8ターボモデルにもあることなので気にはならない。
812GTSを超える尋常じゃない“速さ”
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そんなGTSならではのポイントは別として、総体的に感じるのは尋常じゃない“速さ”。812GTSを超える830cv(830ps)は数値だけでなく、体感的にも驚異的で、初速から目の前の景色がものすごいスピードで流れていく。不意な踏み込みは危険かもしれない。そのため、ブレーキシステムは『SF90ストラダーレ』と共有するとか。確かに見るからに大きなローターとキャリパーを装着する。考えようによっては1000cv(1000ps)用の標準ブレーキなのだからオーバースペックとも言えそうだ。
というのが296GTSのファーストインプレッションだが、あらためて現在のフェラーリラインアップを見てみると、オープントップモデルが多いことがわかる。プロサングエまで含めても10台中5台は屋根が開く。つまり、それだけ大切にしているし、そのノウハウを持っているということだ。考えてみるとF1マシンに屋根はないからね。彼らの真骨頂はオープンエアモータリングかもしれない。
![](https://response.jp/imgs/zoom1/1814865.jpg)
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
九島辰也|モータージャーナリスト
外資系広告会社から転身、自動車雑誌業界へ。「Car EX(世界文化社 刊)」副編集長、「アメリカンSUV(エイ出版社 刊)」編集長などを経験しフリーランスへ。その後メンズ誌「LEON(主婦と生活社 刊)」副編集長なども経験する。現在はモータージャーナリスト活動を中心に、ファッション、旅、サーフィンといった分野のコラムなどを執筆。また、クリエイティブプロデューサーとしても様々な商品にも関わっている。趣味はサーフィンとゴルフの“サーフ&ターフ”。東京・自由が丘出身。
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