【ブリヂストン ブリザック VRX3 試乗】SUVサイズを拡充、凍結路面で確かな接地感…橋本洋平
レスポンス / 2022年11月5日 19時0分
2021年に発売されたブリヂストンのスタッドレスタイヤ、「BLIZZAK(ブリザック)VRX3」に対しSUV専用サイズがラインアップされた。実は中型向けのVRX3は昨年より発売されているが、追加されるのは全10サイズであり、それは中小型SUV向けとなるものが多い。
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実はここで悩ましい選択肢が出てくる。というのも、SUVへ向けた「DM-V3」という商品と12サイズがバッティングするのだ。下は225/60R17~上は235/55R20まで。ほんの一部だが車種で言えば日産『エクストレイル』、『ムラーノ』、トヨタ『ハリアー』、『RAV4』、マツダ『CX-5』、『CX-8』、ホンダ『CR-V』、アウディ『Q5』、ボルボ『XC60』、『XC90』などである。一体どのようにタイヤを選ぶべきなのか?
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既存の商品であるDM-V3は溝面積が深く、平たく言ってしまえばゴツいイメージのタイヤである。主眼とするのは雪深い山岳地であり、スキーをはじめとするレジャーへと出かける機会が多いユーザーにはコチラをオススメしたいというのがブリヂストンの見解だ。すなわち、スノー性能に特化した製品であり、雪に噛み込みながら走破して行くのが得意ということだろう。対して摩耗に弱かったり、接地面積が少なくなるため、氷の路面はやや苦手。ドライを走ればやや音が大きい傾向がある。氷の表面に浮き上がる氷を吸水し、ゴムをできるだけ乾いた氷に張り付かせたい場面ではマッチしないということのようだ。
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そこで登場してきたのがVRX3のSUV向けサイズである。いまはSUV市場がまだまだ拡大傾向。まるでかつてのセダンの様にスタンダードな存在になりつつある。結果として都市部を走り回るだけのSUVも多く、4輪駆動でないモデルも多く走っている。つまり、そもそも現代のSUVユーザーは、山岳部に行こうというユーザーが全体から見れば少ないのかもしれない。だからこそ、街乗りに向いたSUV用のスタッドレスタイヤが必要なのだ。冬路面の街中は、発進や停止が頻繁に行われる交差点付近があらゆるクルマに磨かれてブラックアイスバーンになりがち。そこに食い付かせることが重要になる。
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VRX3はブリヂストンが得意とする発泡ゴムをさらに進化させたことが特長だ。VRX2に搭載していた「アクティブ発泡ゴム」は、円形の断面形状をした小さな穴に吸水していたが、VRX3ではそれを円形ではなく楕円形とすることで、より多くの水をゴムに蓄えられるようになった「フレキシブル発泡ゴム」を採用。これにより氷に食いつく性能がさらに高まっている。さらに、トレッドパターンについても改められ、一見するとかなりシンプルに。溝が少なくゴムの面積が多くなったイメージだ。特徴的なのはサイプの形状で、一部はサイプの溝を貫通させず、橋を止めているところがポイント。サイプ内への水の逆流を抑える効果があるとのこと。また、ブロックの形状や向きに応じてサイプの角度を変更することで剛性をコントロール。接地圧を均一化する努力を行っている。
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そんなSUV向けのVRX3をスケートリンクの特設コースで走らせてみると、背が高く重たいSUVを見事に受け止めるグリップを発揮していた。フル制動では4輪がきちんと路面を捉えて安定して止まることを可能にする。その一方で、VRX2では苦手としていた旋回ブレーキや旋回加速時でも、タイヤが倒れ込んでアウトにはらむようなことがなく、狙ったラインを見事にトレースして行く。重たく重心が高いSUVではさらに難しくなるはずなのに、そんなことを一切感じさせないグリップは見どころだ。また、ステアリングにもしっかりとした反力が得られ、路面の感触を掴みやすいところもメリットに感じた。
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後にドライ路面を走ってみたが、溝が少なくゴムが多い傾向にあるVRX3はヨレ感も少なくスタッドレスタイヤを履いていることをあまり意識させない仕上がりをしていると感じることができた。スラロームをしても応答遅れが少ないことがメリットだ。乗り心地についても柔らかすぎずダンピングもまずまず。ノイズも高周波がややあるがうるさく感じるレベルではなかった。もちろん、夏タイヤのようにスッキリと収束するわけではないが、これなら十分に満足することができる。
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かつてのようにドライではヨレヨレで頼りないなんてことはない。これなら冬の間ずっと履いていてもストレスにはならないだろう。豪雪地主体で使うならDM-V3一択だろうが、都市部在住で年に数回の冬レジャー使用というユーザーであれば、VRX3はかなりマッチしたスタッドレスタイヤではないだろうか。
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