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カーオーディオのあり方を変えたカロッツェリアX[カーオーディオ名機の系譜]

レスポンス / 2022年11月25日 6時30分

カーオーディオの世界には、国産・輸入を問わず“名機”と呼ばれる製品がさまざまある。当シリーズではそれらを1つ1つ取り上げ、各機が“名機”たり得ている理由とそれらの魅力を紐解いている。今回は、まさしく歴史的な銘品、パイオニア『カロッツェリアX』に焦点を当てる。


◆新たなコンセプトを携えて、『カロッツェリアX』は1993年に誕生!


『カロッツェリアX』の初代モデルが世に出たのは、1993年だ。なおこれには、それまでのカーオーディオ機器とは決定的に異なる唯一無二の特長が備えられていた。それは主には2つあった。1つは「音楽信号を光デジタル伝送すること」で、もう1つは「デジタルチューニングを行うこと」だ。


このような特長が与えられていた理由は以下のとおりだ。車内では、音楽信号が伝送中にノイズの影響を受けやすい。しかし光デジタル伝送ならばその影響を受けずにすむ。なので『カロッツェリアX』では、メインユニットからプロセッサー、そしてパワーアンプに至るまでの音楽信号の伝送を「光デジタル」にて行う仕組みが盛り込まれていた。


そして当時はまだスピーカーがリアトレイに置かれることも多かったのだが、そうであると音像が目の前に現れにくい。なのでスピーカーは徐々に前方に設置されるようになっていく。で、カロッツェリアは特にサウンドステージが目前にて展開されることにこだわった。ゆえに同社はそのことを「前方定位」と呼び、「デジタルチューニング」にてそれをより理想的な形で成り立たせようとしたのだ。


◆「タイムアライメント」機能は、『カロッツェリアX』により広まった!


その「デジタルチューニング」の中でもっとも象徴的なものはズバリ、「タイムアライメント」だ。現在では普通に使われている当機能は、『カロッツェリアX』の登場以前にはカーオーディオではほとんど使われてはいなかった。


なお当機能は、スピーカーの発音タイミングをコントロールする機能だ。クルマの中ではスピーカーがばらばらの場所に取り付けられるので、各スピーカーの音の到達タイミングが微妙にズレる。このことがステレオイメージの再現性を落とす要因の1つとなる。しかし「タイムアライメント」を用いると、近くのスピーカーの発音タイミングを遅らせられる。結果、すべてのスピーカーから発せられる音が同時にリスナーの耳に届き、すべてのスピーカーから等距離の位置に身を置いているかのような状況を作り出せるのだ。


ただ、『カロッツェリアX』の理念は、当時としては新しすぎた。ゆえにすぐには浸透しなかった。しかしその後に通常のアナログパワーアンプとの互換性が確保されシステムに組み込みやすくなり、さらには1997年よりスタートした『パイオニア カーサウンドコンテスト』が年々白熱し、一気に支持率を上げていく。結果、2000年代に入るころには、マニア垂涎のハイエンドシリーズとして確かな人気を得るに至る。


◆現行モデルの2つのパワーアンプは、今も多くのマニアが愛用!


なお『カロッツェリアX』シリーズの製品は現在、2アイテムが販売されるにとどまっている。1つが4chパワーアンプの『RS-A99X』(税抜価格:20万円)で、もう1つが2chパワーアンプの『RS-A09X』(税抜価格:30万円)だ。ちなみに前者の登場年は2010年で、後者の登場年は2013年だ。で、これらは現在も、多くの愛好家に使われている。音にこだわる強者が集う各地のカーオーディオコンテストの会場でも、これらを搭載した車両を多く見かける。『カロッツェリアX』は今も、ハイエンドパワーアンプの名機として厚い支持を得続けている。


ちなみにいうと『カロッツェリアX』のデジタルチューニング技術は、同社のさままな現行モデルに受け継がれている。その最たる例が『サイバーナビ』だ。同シリーズには『カロッツェリアX』に積まれていたものに準じた(ある部分ではそれをも上回る)チューニング機能が搭載されている。


その他のメインユニットにも、「ネットワークモード」が搭載されている機器では、フロント2ウェイ+サブウーファーのスピーカーシステムに対して『カロッツェリアX』と同一のやり方で「タイムアライメント」を運用できる。


カーオーディオのあり方を変えた歴史的な逸品である『カロッツェリアX』のエッセンスは、今もさまざまなカロッツェリア製品で息づいている。メインユニットの買い替えを検討する際にはカロッツェリアの各機にも、要注目。

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