スバルとSTI、2022年のニュルブルクリンク24時間耐久レースを振り返る
レスポンス / 2022年12月4日 7時0分
STI(スバルテクニカインターナショナル)は3日、東京・三鷹市にあるSTIギャラリーにて、リタイアにて終わった2022年ニュルブルクリンク24時間レースの振り返り報告会を行い、「人材育成・車両開発の観点からニュルブルクリンクへのチャレンジをやめるわけにはいかない」と次に向けて行くことを語った。
2008年から始まったドイツ・ニュルブルクリンク24時間レースチャレンジ。2009年からSTIが独自プログラムとして車両開発やチーム運営を行い、『SUBARU WRX STI』を用いてチャレンジしている。2011年と2012年、2015年と2016年、2018年と2019年とSP3Tクラス(2リッター以下のターボ車)で連続クラス優勝を成し遂げるなど輝かしい成績を残している。
STIは2020年と2021年も参戦するために車両開発を行い、いつでもドイツに旅立てるように準備していた。しかしながらコロナウイルスの世界的流行により参戦を断念した。
2022年はコロナウイルスの流行が少し落ち着いたこともあり、STIは3年ぶりにニュルブルクリンク24時間レースに挑戦した。日本からドイツに渡り現地のチームに合流して参戦するドライバーは複数いたが、メーカー系チームとしてはSTIだけとなった。
2020年、2021年からアップデートしたSUBARU WRX STIを持ち込み、クラス優勝はもちろん総合順位でもトップ10を目指す意気込みでドイツに渡った。スーパーGTでスバルからレースに参戦している井口卓人・山内英輝が、ニュルブルクリンク24時間レースでもレギュラードライバーして参戦しているが、今年はスーパーGTとの日程が重なってしまったこともあり、両ドライバーの参戦は叶わず、佐々木孝太が2014年以来ステアリングを握ることとなった。
ティム・シュリック、カルロ・ヴァン・ダム、佐々木孝太、マセール・ラッセーというSTIのニュルブルクリンク24時間レースではおなじみのメンバーで参加した2022年。予選をクリアし決勝でも順調に周回をこなしている最中、現地時間の午前3時ごろに佐々木選手がドライブ中にアクシデントが発生し、コースサイドのガードレールにヒットしてしまう。修復は困難と判断してリタイアとなってしまった。
そのクラッシュした車両がこのたび日本にやっと帰国を果たした。STIとしてもファンにちゃんとした報告をしていなかったと言う気持ちがあったため、「STI Live STI NBR CHALLENGE 2022 Review」としてSTIギャラリーで少人数を招いて報告会を実施した。コロナ感染防止を懸念して少人数にしたため、多くの人にも見てもらいたいとしてYouTubeでの配信も行った。
ニュルブルクリンク24時間チャレンジの総監督を努める辰己英治、監督の沢田拓也、ドライバーの佐々木孝太が登場した。佐々木は「トラブル当時250km近い速度が出ている最中で、瞬間的に回避行動をとったがあえなくガードレールに接触してしまった」と当時を振り返った。辰己総監督も「トラブルが発生するとは思っていなかった。現場は全開走行で速度がでる場所だったため、佐々木選手の体も心配したが、何もなくて良かった」と振り返る。
辰己総監督は「車両がピットに戻ってきてからデータを見ると、その現場はアクセル全開で走る抜ける場所だが、佐々木選手は何か瞬間的に異常を感じたのか、わずか1秒ほどアクセルを緩めている。その1秒アクセルを緩めたことで、この程度で済んだのかもしれない。そのままアクセルを踏み続けていればもっと大きくクラッシュしていてもおかしくなかった。ドライバーの本能的な何かが働いたのかもしれない」と推測した。
元から持っているボディ剛性の良さと車両の作り込みが良かったのか、ガードレールにあたった右前方は大きく損傷しているが、右ドアは普通に開閉できるという。フロント部分は少し損傷しているものの、左側から見れば綺麗な車体を維持しているのが分かる。車両の損傷具合だけ見れば大きなクラッシュをしたとはとても思えないほどだ。
全国のディーラーから選抜されたメカニックに対してクラッシュしてしまった佐々木選手は、「ゴールまでマシンを持って来れなくてゴメンな」と声をかけたと言う。ディーラーメカニックも3年越しで参戦できたとあり悔しさを滲ませていたが、佐々木選手の声かけにより苦労も報われたのではないかと辰己総監督は思いを馳せる。
ニュルブルクリンク24時間レースは人材育成と車両開発を目的に行っており、今回クラッシュしたからといって参戦を取りやめることはなく、このクラッシュで得たことを次の車両に活かし、その先には量産車へのフィードバックとして返ってくると言う。来シーズンに関しては何も語ることはなかったが、もちろん来シーズンに向けて準備をしていると想像される。
ファンとこの悔しさを共有して来シーズンに向けていきたいという思いもあり、STIギャラリーではこのクラッシュしたマシンを12月いっぱい展示して公開するという。ファンはもちろん、モータースポーツの貴重な証拠として見る価値のある展示となっている。
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