【日産 セレナ 新型】どう変わる? 発電専用の新エンジンを搭載
レスポンス / 2022年12月5日 20時0分
日産自動車が11月28日に発表したミッドサイズミニバン、第6世代『セレナ』。パワーソースは2リットル直4直噴エンジン「MR20DD」+CVT、1.4リットル3気筒エンジン「HR14DDe」+2モーター式シリーズハイブリッド「e-POWER」の2種類。
◆超ロングストローク
後者のHR14DDeは末尾の“e”が示すように発電専用のHR系新エンジン。第5世代のe-POWER用「HR12DE」から排気量235ccアップ、燃料供給はポート噴射からシリンダー内直接噴射へと変わった。燃焼は高効率なミラーサイクルである。能力はHR12DEに対して最高出力が62kW(84ps)から72kW(98ps)、最大トルクは103Nm(10.5kgm)から123Nm(12.5kgm)へと増強されている。
この新エンジンの大きな特徴は超ロングストロークであること。シリンダー内径78mmはHR12DEから変わらず、排気量増はストローク(ピストンの上下動の幅)を83.6mmから100mmに拡大することのみで稼ぎ出している。ストローク100mmは1.4~1.6リットルクラスではトヨタが『ヤリス』などに搭載している「M15A」1.5リットル3気筒の97.6mmを超えてクラス最長である。内径に対するストロークの割合を示すボアストローク比は1.282。こちらもM15Aの1.212を超え、市販車用の量産エンジンでもっともロングストロークなホンダの軽自動車用エンジン「S07B」の1.293に迫る数値である。
エンジンは単純にストロークを長くすればいいというものではないが、ボアストローク比を大きくすればシリンダーに空気が勢いよく吸い込まれ、シリンダー内に強い渦を作ることができる。酸素を含まない排気ガスをシリンダー内に再循環させて希薄燃焼を行うEGRという技術の高度化がエンジンの効率向上の鍵を握ると言われているが、排気ガスをバランスよく混合させないとそもそも燃焼が安定しない。それを燃えやすくする解決法のひとつがシリンダー内の空気の渦を強くすることなのだ。日産は昨年、将来的にエンジンの熱効率を現在のハイブリッド用エンジンの標準的な数値である40%前後から50%に引き上げるという技術ロードマップを発表しており、HR14DDeはそれに向けた中間発表のようなもの。熱効率は現時点では公表されていないが、従来のHR12DEよりは確実に良くなっていることだろう。
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◆静粛性向上、燃費改善に期待
能力が拡大されたHR14DDeにエンジンが変わったことでセレナの走りはどう変わるかだが、日産が主張しているのはまずエンジン回転数の低下による静粛性向上。プレス資料によれば、車速30km/hまでは第5世代の2000rpmに対して1600rpm。その後は2000rpmに上昇するが、第5世代が50km/hで2400rpmに跳ね上がるのに対し、第6世代は70km/hを超える領域まで2000rpmでの発電が維持されるという。もちろん急勾配の登坂や急加速のさいはその限りではないが、少なくともバイパスクルーズくらいの速度域ではほぼ2000rpmで収まることになる。
もう一点は燃費。エンジン回転数とも関連性がある話だが、従来型のエンジン能力最大62kWというのは質量1.7トン超のセレナe-POWERには明らかに過少で、ちょっとオーバーロードになるとすぐにエンジンが熱効率の良い領域を外れて高回転運転に陥るという傾向があった。排気量に余裕が出たHR14DDeの場合、それより広い範囲で理想的なミラーサイクル運転が維持されることだろう。
WLTCモード燃費は同グレード「XV」で比較すると総合値18.0km/リットルに対して第6世代は19.3km/リットル。内訳としては加減速の多い市街地モードでの改善率が高く、同17.5km/リットルに対して19.7km/リットルと12.6%向上している。グレードではなくクルマの質量を揃えた場合、第5世代のXV(1780kg)に近似しているのは第6世代の「X」で、そのWLTC燃費の総合値は20.6km/リットル。エンジン換装の効果は十分に出ていると言えそうだ。
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