発電・駆動を同時に行うモーターやカニ走りプラットフォーム…シェフラーのCASE技術
レスポンス / 2022年12月15日 10時15分
シェフラーは自動車サプライヤーの中でもメカトロニクスに強いイメージがある。産業機器ではロボティクスなども手がけている。だが純粋にメカ屋かというとそうでもない。エレキ、電動化パワートレイン、自動運転プラットフォームなどCASE技術にも力を入れている。
11月30日、12月1日の2日間、シェフラージャパンは本社がある横浜で「シェフラーシンポジウムジャパン2022」を開催した。このシンポジウムは同社の最新技術を国内OEMやサプライヤーに発表・展示を行うものだ。社長以下、CTOらの挨拶、戦略説明のプレゼンテーションの後、各種技術展示を取材した。このうち、特徴的だったものを3つ紹介したい。
◆発電と駆動を1つにしたモーター
「2 in 1ステータ」は、1つのモーターハウジングに動力モーターと発電機(ジェネレータ)を組み込むための技術だ。モーターと発電機の原理は、同じ機構の入力と出力の方向を変えたものだというのは誰もが知っている。多くのEVは動力モーターを減速時に発電機として利用して回生ブレーキ(充電)を実現している。同じモーターで動力(回転力)を得ながら、発電機も回すのは効率が悪いように思える。
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シェフラーの2 in 1ステータモーターは、コイルのあるステータを円筒状の2重構造とし、外側にモーター出力用、内側を発電用に使うようになっている。外側は永久磁石を内蔵したシリンダ状のローターが保持される。内側のコイル(ステータ)の中に小さいサイズのローターが組み込まれ、外側ローターは中空ギアに接続され内側のローターを回す。このしくみによって、1つのモーターで動力を発生させながら発電も行うことができる。
2つのモーターの出力は、動力用の外側モーターが125kW、発電用の内側モーターが70kWだという。ハイブリッドエンジンのアクスルでは、パラレル方式、シリーズ方式、シリーズパラレル方式でも駆動用と発電用の2つのモーターを搭載するものが多い。これを1つにまとめることができれば、ハイブリッドエンジンの小型化、軽量化が期待できる。
◆金属バイポーラプレートによる水素燃料スタックの小型効率化
世界中で走っている車の96%が乗用車と小型商用車(トラック・バスは4%)だが、CO2排出量に占める割合は6:4(乗用車・小型商用車:トラック・バス)だ。大型商用車のCO2削減はカーボンニュートラルへの貢献度が高い。シェフラーでは、走行距離、稼働率、排気量でCO2排出力の大きいトラックやバスのゼロエミッション化を重要視しており、大型車向けの燃料電池関連の開発投資も続けている。
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現在はフランスのベンチャーと合弁企業を立ち上げ、燃料スタックに用いる金属製バイポーラプレートの開発を進めている。バイポーラプレートにはカーボン製と金属製の2種類がある。金属製のほうがスタックサイズの小型化が可能だが、腐食の問題がある(カーボン製にはない)。バイポーラプレートは、厚さが1mmほど。これを300枚ほど積層すると出力120kWの水素燃料スタックを構成できる。
さらにシェフラーでは、プレートのレーザ溶接、特殊コーティング、シールのモールドをワンストップで生産できる工場ラインを作ろうとしている。パイロットラインを本社に設置し、2024年に製品出荷を目指す。
◆高機動を実現するローリングシャシー
最後は自動運転車両用の次世代プラットフォームだ。「ローリングシャシー」と呼ばれるプラットフォームは、いわゆるスケートボード式の平台にバッテリーとフレームを合体させたもの。パワートレインはインホイールモーターを4つ使うので、台車部分は限りなくフラットだ。さらにサスペンションとステアリング機構が特殊で、一般的な自動車のタイヤが組付けられているが、舵角が90度とれる。4輪は独立制御が可能なので、真横移動や斜め移動、超進地旋回など自由自在だ。
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ここまで書くと、一般的な自動車ではなく工場や倉庫のAGVやAIT(無人搬送車両)を思い浮かべるかもしれない。シェフラーは、ローリングシャシーを使って、モービルアイ協力のもと、汎用自動運転車両の実験を行っている。AI等による自動運転の場合、方向転換や旋回軌道をとるより、任意方向に移動できるほうが基本制御がシンプルになり、障害物回避や進路探索の信頼性を高めることができる。無人搬送車やロボット台車にメカナムホイールが利用されるのはそのためだ。
ローリングシャシーにはもう1つ特徴がある。同社が開発中の「マトリックスチャージングシステム」が搭載されているのだ。充電の自動化技術の1つだが、充電をプラグの挿抜ではなく、フラットな給電面に車体から接点が延びてくる。給電面には円形のコンタクト(接触面)がグリッド状に並ぶ。給電側のコンタクト数は車体から伸びてくる受電コンタクトより多く、給電面の全部と接触させる必要はない。ワイヤレス充電の要領で自走していくことが可能だ。
なお、接続前にはエアでコンタクトのごみやほこりを飛ばすようになっている。接続した後も通電試験を自動で行い、安全が確認されてから充電が始まる。
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