手信号を判別する「パントマイム」やスマートシティの実現に役立つ「スマートポール」、ヴァレオが初公開…CES 2023
レスポンス / 2023年1月17日 17時15分
ヴァレオは、米国ラスベガスで開催された世界最大級のIT家電見本市「CES 2023」に出展し、同社の電動化技術やADASのほか、より安全で持続可能なモビリティ社会に向けた新たなイノベーションを披露した。
◆手信号を独自のアルゴリズムで認知・判別する「パントマイム」
その中で注目の技術としてまず紹介されたのが、CES 2023で世界初公開となった「パントマイム」だ。これ自体は身振りや表情だけで表現する演劇として知られるが、ヴァレオもこの動きによって得られた結果を自動運転車の認知や判断に役立てる。特に自動運転で一般道を走行するにあたっては、歩行者や自転車など脆弱な道路利用者を認知・判別することが重要となるが、ヴァレオではここに独自のアルゴリズムを活用して実現した。
デモ会場では、警官や工事現場の作業員に扮した人が交通整理をしている状況を捉え、その合図によって指示の内容を判別する様子が再現された。また、自転車が右左折するのに腕を出したり、曲げたりする様子も判別。これらを認知・判別することで、工事や事故が発生して信号機が使えず、人による指示に切り替わった場合でも自動運転走行に対応できるようにする。
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ヴァレオによれば、エレクトロニクス、ソフトウェア、人工知能(AI)は、運転支援と自動車の自律性に不可欠であり、これらのテクノロジーは、現在、自動車の価値の10%を占め、2030年には30%に達する見込みだという。
◆歩行者への利便性やEV用充電器としても活用できる「スマートポール」
次に紹介されたのが「スマートポール(Smart Pole)」という一風変わった提案だ。その形状はまるでガウディがデザインしたかのようなユニークなデザインで、ここにはスマートシティの実現に役立つ機能が凝縮されていた。まず、ポールの下部には超音波センサー(ソナー)が埋め込まれ、歩行者の位置を把握しながらトップにある6つのLED照明が必要な位置を照らす。これは無駄がない照明となって、省エネ効果にもつながる。
さらに人の背の高さぐらいの位置には、ヴァレオ製カメラやサーマルカメラ、レーザースキャナ「SCALA LiDAR」が埋め込まれている。これがスマートポール付近にいる歩行者の位置を正確に測距し、信号を切り替えるタイミングの最適化を図ったり、状況によっては道路へ飛び出さないような警告を促すことも可能になるという。
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このスマートポールにはEVへの充電器も備える。ただ、充電ケーブルは伸びているものの、充電状況を知らせる表示部は一切見つけられない。どこにあるのか訊ねてわかったのが、路面へ投射するライティング技術でその役割を果たすのだという。昼間だとちょっとハッキリとは見えないが、夜なら鮮明にそれがわかるそうだ。ヴァレオによれば、これらはすべて既存の技術を転用できるため、たとえば中古部品を転用すれば低コストで整備できることになる。スマートシティにはそういった発想も重要であることに気付かされた。
◆48Vシステムを活用したモビリティの活用を紹介
ヴァレオが得意とする48Vシステムを活用したモビリティのデモも行われた。このシステムは費用対効果の高い方法で車両に電力を供給できる特徴を持ち、特に都市などで利用する小型モビリティでの活用が見込まれる技術になるという。ヴァレオが最初に48Vシステムを搭載したのはPHEVとEV用で乗用車向けだったが、今はeトラックやeスクーターといった分野にまでその守備範囲を広げている。
この日は、小型2輪EVプロトタイプであるフル電動の48Vモーターサイクルや、電動アシスト自転車の体験もできた。いずれも汎用性の高いヴァレオ製48Vパワートレインを活用しており、電動車ならではの力強いトルクで俊敏な動きを体感できたのが印象的。ただ、48Vモーターサイクルは回生機構が装備されておらず、思ったよりもブレーキ操作が必要となっていたのが残念ではあった。とはいえ、このデモは48Vシステムの展開を体感するためのものであり、その意味では48Vシステムの活用範囲の可能性を実感した次第だ。
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その他、サーマルシステムの技術をデータセンターへ転用する例も紹介された。今やデータセンターでは、より強力なマイクロプロセッサが使用されるようになり、より効率的な冷却のためにサーマルシステムが必要とされている。ヴァレオは自動車のバッテリーセルを冷却するための高性能なサーマルシステムに関して高い専門知識を持っており、その技術を活用してサーバーの熱最適化に着手したのがこのシステムだ。
簡単に言えば、その方法は、いわば冷蔵庫やエアコンなどにも使われている熱交換の原理であって、それを液冷のサーバー冷却ソリューションとしたのだ。ヴァレオによれば、空冷と比較すると故障率が大幅に下がる上に、エネルギー消費も5分の1で済むという。高負荷がかかるデータセンターでの活用だけに、将来へ向けてこの技術には期待が寄せられるだろう。
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