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「Zらしさ」の神髄は“後ろ姿”にこそあり。新型『フェアレディZ』デザインの見所を解説

レスポンス / 2023年1月18日 20時0分

「Zらしさ」の神髄がようやく蘇った。焦点はルーフサイドのラインである。新型『フェアレディZ』はそれを平面視で絞り込んでいない。そう、左右のルーフサイドを平行に延ばすことこそ、実は初代S30からZ32まで長く受け継がれた「Zらしさ」だったのだ。


◆911とは違う個性を意図した初代


初代S30の商品企画の狙いは、「アメリカでポルシェ『911』に負けない性能のスポーツカーを半額で売る」ことにあった。松尾良彦氏(故人)をチーフとする少数精鋭のデザインチームは、FRらしいロングノーズ・クーペのシルエットを軸に、短期間にいくつも原寸大クレイモデルを開発。そんななか松尾氏はポルシェ911を観察・試乗する機会を得る。


まだ60年代のこと。欧米の技術を学ぶため自動車工業会が911を輸入し、自動車メーカーに順番で貸し与えた。それが日産に回ってきて、松尾氏はひとつのことに気付いた。「911はルーフサイドを後方に向けて絞り込んでおり、リヤウインドウは逆台形だ。同じことをやってはいけない」


真後ろから見て、絞り込まれたルーフサイドの外側に後輪が踏ん張る、というのは現代まで続くポルシェのアイデンティティだ。スポーツカーとして後輪の踏ん張り感を強調するのはひとつのセオリーでもあるが、松尾氏はあえて逆張りを選択。ルーフサイドを絞り込まず、リヤウインドウも台形ではなく長方形にして、ポルシェとは違う「Zらしさ」を表現したのである。


◆「復活のZ」の難しさ


歴代フェアレディZ。手前からZ32、Z33、Z34

歴代Zのなかで、S30と並んでデザインの名作と誰もが認めるのが4代目のZ32だろう。その生産が2000年に打ち切りとなり、02年に「復活のZ」となったのがZ33だ。デザインの狙いは「Zらしさと新しさの両立」。Zらしさを求めて振り返ったのは、やはりS30とZ32だった。


しかし難しかっただろうと、いま振り返っても思う。S30からヒントを得たひとつがロングノーズのプロポーションだが、Z33はV35スカイラインのプラットフォームをベースとする。V35に対してホイールベースを200mm縮めたとはいえ、前輪中心からペダルまでの距離は縮まらない。ロングノーズを表現するには、限界があった。


もうひとつZ33がS30に学んだのが、後ろ下がりのルーフラインだ。Aピラーの頂点付近から下がっていく「トライアングルルーフ」。これを「Zらしさ」として表現したのだが、S30に比べるとAピラーがかなり前寄りにあるのでキャビンが長い。それを活かして、キャビン後半部にはZ32の要素を持ち込んだ。


ベルトラインの延長上にテールゲート開口線を設けると共に、滑らかに下降したルーフが短いリヤデッキへとつながる。なるほどZ32のイメージではあるのだが、ではなぜZ32はキャビンが長かったのか?


◆Z32はミッドシップ発のデザインだった


S30からS130、Z31と進化するなかで、Zはだんだんグランドツーリングカーとしての性格を強めていった。排ガス規制で牙を抜かれたパフォーマンスを排気量アップで補い、太いトルクでゆったり走る。サスペンションは快適さを重視し、内装は質感を高めた。


そうした経緯から心機一転、「世界一のスポーツカー」を目指して企画されたのがZ32だった。FR、ミッドシップ、4WDそれぞれの可能性を探ることから開発が始まるなか、デザイナーたちはミッドシップにZの新たな世界を見出した。Z32のエクステリアは、実はミッドシップを前提に考えた初期案をFRにアレンジしたものだったのだ。


それまでのZとは逆に、Z32はAピラーを前進させたキャブフォワードのプロポーション。ベルトラインをテールゲート開口線につなげ、滑らかに下降したルーフラインの後ろに短いリヤデッキを設けたのは、キャビンから後ろを長く見せ、キャブフォワードを強調するためのものだった。


そんなZ32のキャビン要素を、一方ではロングノーズに見せたいZ33に取り入れたのだから、これをひとつにまとめるのは容易なことではない。しかし「復活のZ」がファンの共感を得るためには、S30とZ32という二つの名作をオマージュすることがどうしても必要だったし、Z33のデザイナーたちはそれをやり遂げた。


◆平行ガーニッシュと“コーダトロンカ”


2008年のZ34はホイールベースをさらに100mm切り詰めることで、ロングノーズ感を強調。テールゲートの開口線はルーフサイドのラインに沿うように改められ、キャビンがよりコンパクトに見えるようになった。そのプラットフォームとキャビン骨格を、新型Zも受け継ぐ。


新型Zも型式はZ34。見た目にはほとんどフルチェンジなのに型式が変わらないのは、レクサスの現行『IS』も同じだ。主要な構造部がキャリーオーバーなら、新たに型式を取得する必要はない。その範囲で新型Zが開発された。


Aピラーやウインドシールド、ルーフはキャリーオーバー。テールゲート開口部も、ボディ側の構造体は先代(旧Z34)と同じだから、リヤウインドウは逆台形だ。Z33でS30とZ32をオマージュした際、四角いリヤウインドウの「Zらしさ」が顧みられることはなく、それを先代も受け継いでいたのだ。


しかし新型はルーフサイドにシルバー色のガーニッシュを設置。「トライアングルルーフ」をより明快に訴求すると共に、これを左右で平行にすることで、S30からZ32まで続いた「Zらしさ」をついに復活させた。9色あるボディカラーのうち7色はルーフ~テールゲートをブラックにしたツートーンだから、逆台形のリヤウインドウは目立たない。巧い工夫だ。


“コーダトロンカ”も復活した。リヤエンドをスパッと断ち切ったカタチにするのがコーダトロンカ。60年代にイタリアで考案された空力デザインであり、それをZはS30からZ32まで採用し続けた。Z33や先代では「艶めかしい後ろ姿」を重視し、曲面を組み合わせてリヤエンドをデザインしていたが、ようやくそこから脱して、Z32以前の「らしさ」に立ち返ったのである。


大きな長方形のフロントグリルはZらしいのか? 先日のオートサロンで発表された「カストマイズド・エディション」のほうが、やっぱりS30のイメージだよね。…などと話題に絶えないのは、やはり多くのファンを持つZブランドならではのこと。


でも、忘れないでほしい。新型Zの「Zらしさ」の神髄は後ろ姿にこそあるのだよ。

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