【レンジローバー 新型試乗】まさに「動くリゾートホテル」その高価さも納得…中村孝仁
レスポンス / 2023年1月29日 12時30分
◆標準ボディでも全長5m!「D300」で700km
自分のクルマに乗ると、何故かそこはかとない安心感に浸れる。そんな印象を持つユーザーは多いのではないだろうか。
ほとんどの自動車ユーザーは、自己保有車が1台で、我々のように日常的に自分のクルマとメーカーからお借りする試乗車の間を行ったり来たりということはない。だから、我々のような職業だと、自分のクルマに戻った時、もしかすると余計そうした安心感というか落ち着き感に浸れるのかもしれない。まさにそれは自宅なのである。
昨年、V8エンジンを搭載した『レンジローバー』に試乗した。その出来の良さに感嘆し、SUVの世界でも一頭地抜きんでた存在と評した。そのV8搭載車はレンジローバー始まって以来の3列シートを持つロングホイールベース版であった。
![](https://response.jp/imgs/zoom1/1847343.jpg)
今回お借りしたのは標準ホイールベースに3リットルのターボディーゼルとマイルドハイブリッドシステムを組み合わせた「D300」と呼ばれるモデルである。とはいえ、標準ホイールベースでも2995mmと限りなく3mに近く、全長は5mを超える。車幅は標準もロングも一緒なのでこれも2mを超える巨体である。足回りはこれもロングのV8搭載車と同じエアサスペンションを持つ。
折角だからこれで長距離を走ろうと、東京から名古屋を往復してみた。
◆「動くリゾートホテル」そのもの
![](https://response.jp/imgs/zoom1/1847349.jpg)
道中はほぼ高速道路である。例によってランドローバーの広報車窓口がある五反田近くのビルから路上に出ると、その時点ではサイズ感を感じるものの、恐る恐るの走りは精々10分か20分程度。サイズが大きいにもかかわらず、すぐに自分のクルマにようにそのサイズ感がつかみやすいのは一体何故なのかはわからないが、狭い駐車場でもほぼ狙い通りのスペースにクルマを止めることができるし、狭い道も苦にならない。やはり昔ながらのコマンドポジションによる抜群の視界の良さやカメラを含むデバイスの恩恵もそれをサポートしているのだろう。
乗り心地は相変わらず抜群である。ただし、ロングホイールベースが持っていた明らかな「揺れなさ」は少しだけ影を潜め、多少のバウンスを伴う上下動が感知されるのだが、それとてライバルを含む一般的SUVから比べたら雲泥の差で圧倒的に少ない。とにかく滑らかな走り、クルマ自体のスムーズな動き、揺れを極力排し静粛性を高く保った室内の快適さ、眼前に広がる豪華な設えのディスプレイやメーター類。そして疲れ知らずで居心地の良いシート等々。どれもこれも見事なほどリラックスさせてくれる。これはまさにリゾート感覚だから「動くリゾートホテル」そのものである。自宅の安心感や居心地のよさとは別な次元の解放感に富んだクルマである。
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◆これほどその高価さを納得させるクルマも珍しい
V8の豪快なパワフル感はないものの、直6故の非常にスムーズでバランスの良いターボディーゼルはアイドリング時にはそれなりのノイズを発するものの、MHEV効果で、ものの数分も走ればすぐにアイドリングストップをしてくれるので、止まれば静粛。そして動き出しもモーターで走りエンジンへのバトンタッチがとてもスムーズだからディーゼル特有のざらつき感を感じることはまずない。
そもそも燃焼効率の良いディーゼルの美点は燃費の良いことで、名古屋を往復したおよそ700kmでの燃費は12.8km/リットル。車両重量が2.7トンあることを考えればこの値は立派過ぎる。因みに試乗は2人乗車。新東名の巡航は120km/hにACCをセットして大半を走った結果である。
![](https://response.jp/imgs/zoom1/1847340.jpg)
こうした解放感やリラックス感はやはり車体の大きな車でないと味わうことのできないもので、タイトなコックピットのスポーツカーではそれは無理。勿論あちらには別な良さがあって比べるものではないことは重々承知しているが、一度味わってしまった自動車におけるリゾート感は求めようとしてもなかなか求められるものではない。その気になればマッサージシートでさらにリラックスできる。これでアロマテラピーでもあったら寝てしまう。
まあ、高いクルマにはそれなりのワケがあるのだが、これほどその高価さを納得させるクルマも珍しい。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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