「MB自動運転にLiDARは必須」メルセデスベンツ 技術担当役員…CES 2023[インタビュー]
レスポンス / 2023年2月6日 7時15分
メルセデスベンツはCES 2023にて、「Tech to Desire」をテーマにブースを展開した。同日の発表内容について、一部メディアに対するその解説とインタビューに、メルセデスベンツ CTOのマーカス・シェーファー(Markus Schäfer)氏(Member of the Board of Management of Mercedes-Benz Group AG. Chief Technology Officer, Development & Procurement)が応じた。
◆世界で1万基を超えるMBブランドの高出力充電器網を構築
マーカス・シェーファー氏(以下敬称略):CES 2023のブースでは、メルセデスベンツユーザーの生活を豊かにする技術「Tech to Desire」を紹介しています。強調したい最大のトピックは自動車メーカーであるメルセデスベンツが世界規模の自社ブランド充電ネットワーク構築を発表したことです。
わたしたちはすでにBEVの提供を開始していますが、それに対応する充電ステーションの提供に関しては十分とは言えません。また既存の充電ステーションでは充電パワーが不足している場合もあります。その結果、ご存知のとおりわたしたちはグローバルカンパニーですが、世界中のメルセデスベンツユーザーにベストな顧客体験を提供できていません。
そのために北米、欧州、中国、その他の世界の主要市場に2000箇所以上の充電ステーションとそれに付随する1万基を超える高出力充電器を設置、2023年中には、米国とカナダで設置を開始する予定です。北米では2027年までに、2500を超える高出力充電器を備えた充電ステーションを、400か所以上設置していきます。地域や場所に応じて最大350kWの充電能力を備えたハイパワー充電器 (HPC) を提供します。この充電ネットワークによって、プレミアムで持続可能、かつ信頼性の高い充電体験を提供できるようになります。
これらのステーションは他のカーメーカーのBEVにも開放されます。メルセデスベンツユーザーに関して言えばカーナビが状況に応じた最適な充電ステーションをリコメンドし、そして簡単に予約ができるようになります。
◆アメリカでレベル3自動運転を始める
シェーファー:自動運転に関しては、まずはレベル2として自動車線変更 (ALC) を発表しました。今年北米市場に登場します。ALC を使用すると、車は自動的に車線変更を開始し、クルーズコントロールが作動している状態で低速の車両を追い越すことができます。
さらに米国カリフォルニア州とネバダ州ではレベル3自動運転が提供されます。このシステムを量産車の工場出荷時のオプションとしてドイツの顧客にも提供します。最初は法的に許可されている60km/hの速度までですが、制限速度の向上に向けて努力を継続しています。
◆統合された車内エンタメやEVの航続距離を伸ばす技術
シェーファー:オーディオやインターテインメントに関しては、Dolby Atmos(ドルビーアトモス)の採用やApple Music、Universal Music Groupとの連携によって究極の音楽体験が実現されます。ステレオからDolby Atmosへの変化は、モノラルからステレオになったときのような変化をもたらします。そして今回パートナーシップになったZYNCのUI技術によって操作が最適化され、メルセデスベンツHMIに統合されます。
最後に『VISION EQXX』についてもお話しました。こちらは地球上のいかなるクルマよりも“効率的”な電気自動車です。小さいバッテリーにも関わらず一回の充電で1200 km を超える走行が可能になります。HMIに関してはゲームエンジンを積んだ左右のピラーピラーをシームレスにつなぐ横長ディスプレイが搭載され、さらにさまざまなサステイナブルな素材、軽量の車体構造が採用されました。この開発で得られた技術は2025年以降、他の車種にも展開されていきます。
◆優先は北米、欧州、そして中国
---:今回のCES2023での「Tech to Desire」のコンセプトは全世界共通のメッセージでしょうか。それともアメリカの国民性に合わせたものでしょうか。
シェーファー:もちろん、エリアや国によって変えていきます。アジア人はテクノロジーが大好きです。体験が好きです。欧州はかなり保守的です。アメリカはひとことでは括れません。カリフォルニアが最大の市場でカスタマーが現代的、技術に非常に関心がありますし、一方イースト・コーストやウエスト・コーストは保守的です。首都エリアもまた違います。いま時点を見ても、全世界で単一の製品を出しているわけではありません。国民性に合わせてUIやHMIを変えています。例えばカーナビで言うと、地図に関する好みが国によって異なりますので、国やエリアに対応した複数のナビゲーションシステムを採用しています。中国に関しては他の国々とは別のエコシステムを組み込まなければなりません。
過去には単一のモデルを世界中で販売していた次期もありました。しかし、今は違います。メカと少々の電子機器で構成されていた過去のクルマから、現在はソフトウェアによってデジタル化されエンターテインメント化されたクルマに変わってきています。その結果、各国、各エリアのニーズに合わせた対応、すなわちカスタムメイドがなされるようになってきているのです。
---:ハイパワー充電ネットワークの北米以外のエリアへの導入はいつになりますか?
シェーファー:これは車両の導入計画によります。2023年から2024年にかけて北米に続き欧州、中国への導入していくことは決定していますが、中国以外のアジアを含む他のエリアはBEVの導入状況を見ながら優先順位を検討していきます。
◆70年間蓄積の哲学とブランドに応える安全を満たすレベル3へ
---:自動運転について、テスラはLiDARが不要だと言っています。これについてはどうお考えですか。
シェーファー:我々は LiDARについては必須と考えています。メルセデスは市場シェアとしてはそこまで大きくはありませんが、ブランドとしてはトップレベルです。安全性、品質面、また技術革新において最もブランド価値の高い会社です。信頼に応えなければなりません。
その中でもセーフティ、すなわち安全性には重きをおいています。この面においてメルセデスはかなり慎重で保守的です。テスラ車はレベル3に達していません。レベル3に至るにはかなりのタフなプロセスが必要です。長距離を走行しての信頼性試験も必要です。一歩一歩積み上げていく必要があります。
重要なのは二重化や冗長化です。カメラで見て、レーダーで見て、LiDARで見て、それらを比較し、どれかの値がおかしければ停止しなければなりません。とくにカメラは逆光などで対象を認識できなくなることがあります。しかしその場合、他のセンサーは認識ができます。安全性を確保するためには複数のセンサーから得られるデータを統合する必要があるのです。
---:自動運転時代の安全性について、技術トレンドはどのように変化していますか。
シェーファー:ワールドワイドに最も安全なクルマはどれかと尋ねると、多くの国はメルセデスベンツと答えてくれます。取り組みは1950年代にさかのぼります。メルセデスベンツは強固なキャビンと前後衝撃吸収ボディ構造を組み合わせた安全ボディを開発、実装を始めました。以来、安全性の向上に関する開発には70年の歴史があり、常にトッププライオリティに位置づけています。
安全性には事故が起こったときに衝撃を低減して被害を最小にするパッシブセーフティと事故を未然に防ぐアクティブセーフティがあります。現在の開発の主流は安全ボディのようなパッシブセーフティからアクティブセーフティに移ってきています。車内のドライバーだけでなく、路上の歩行者やバイクなども含めて事故から避けるシステムです。製品に搭載するまでに膨大なテスト、実験走行が必要です。メルセデスはこれらをトッププライオリティで実施しています。
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