【ルノー カングー 新型試乗】サイズも価格も大きくなったカングーに隔世の感…中村孝仁
レスポンス / 2023年3月2日 21時0分
◆初代から離れられない理由も納得できる
今回の『カングー』はニッサンとの共同開発によるCMF-CDと呼ばれるプラットフォームが使われている。カングーはいわゆるヨーロッパにおけるLCV(ライト・コマーシャル・ヴィークル)として主に使用されているモデル。しかしこれが日本に来るとMPVとして扱われるのだが、そもそもの開発はLCVで、その耐久試験は乗用車のそれとは比較にならないほど苛酷にやるのだそうである。だからこと耐久力に関しては文句なしなのだとか。
私の友人には今も初代カングーに乗っている人が二人いる。どちらも初代から離れられないそうで、そのうち一人に新しいカングーについて話をしたら、どうやら益々離れられなくなったそうだ。理由の一つはサイズ。やはり初代の5ナンバーサイズは流石に魅力的らしい。そして2番目と3番目は値段とスタイルだそうだ。どっちも個人的にとてもよく理解できた。
とはいえ話はそんな昔を懐かしんでも仕方がないので、先代から16年ほどの歳月を経て新装なったカングーの出来である。
◆隔世の感があることは想像に難くない
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まあ正直な話、隔世の感があることは誰もが想像に難くないと思う。先代はADASが何もついていないクルマだったのが、必要と思われるADAS装備はすべて付いたし、キーを捻ってスタートさせたエンジンも今風のプッシュボタン式である。勿論ナビを装備する大型のディスプレイだってある。
ルノージャポンのクルマはナビを基本的にスマホをミラーリングさせて使うようになっていて(勿論先代ではディーラーオプションとしてあった)、多くのユーザーはそうしているのだろうが、つい最近iPhoneからアンドロイドに代えた私のスマホからはミラーリングしても後から入れたヤフーカーナビが使えなかった。iPhoneなら使えることは確認済みであるが…。
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クルマとして大きく変わったのはそんなところだろうか。そういえばサイズもさらに大きくなって全長、全幅ともに拡大している。だから当然と言えば当然なわけだが室内のゆとりやラゲッジの容量も増えている。
甚だ個人的な話だが、我が家のファーストカーはシトロエン『ベルランゴ』である。言ってみればカングーはガチのライバルである。ルノーのスタッフも今回のカングーはベルランゴを遥かに凌ぐ荷室容量を確保したと自慢げに話をしてくれたが、果たしてそれほどの荷室容量がファミリーユースだったりの個人ユースで必要かと言われると、サイズの違いは正直どっちもどっちかな?という印象である。
◆『ベルランゴ』より優れている点は
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確実にカングーがベルランゴより優れている点は、エンジンがガソリン、ディーゼルとチョイスできることだ。今回はそのいずれもをそれぞれ1時間ほど試乗して味見をした。ガソリン仕様は1.3リットルターボ。アライアンス及びメルセデスとの共同開発で誕生したもので、現在多くのルノー車でこのエンジンが使われている。一方のディーゼルは先代末期に限定で販売されたモデルに使われていたもので、こちらは1.5リットル。116ps、270Nmはベルランゴの130ps、300Nmよりは少し落ちる。と言ってもそれによって特段アンダーパワーを感じることは1時間の試乗ではまずなかった。ちゃんと検証するために改めて乗ってみようと思う。
ガソリンエンジンは、131ps、240Nmとガソリンエンジンとしてはそこそこのトルクを持っているうえ、フロントの軸重がディーゼルに比べると圧倒的に軽いから、軽快な取り回し感は顕著に優れる。ただ、その軽さゆえなのか走りは確かに軽快なのだが、空荷状態だと、如何にも商用車的な室内騒音に支配されて、この点は車重にして90kg重いディーゼルの方がぐっと落ち着き感と室内で感じる音振でも勝っていた。
◆乗り出し400万円のカングー
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余談ながら、ディーゼルはガソリン仕様よりも24万円高い。一番売れ筋になるであろう無塗装のバンパーを備えた「クレアティフ」というグレードで395万円と419万円。実は塗装したバンパーを装備する「インテンス」でもお値段は同じである。まあ16年の歳月がそうさせたともいえるが、先代のカングーは高くても300万円以下で収まっていたのだから、乗り出しが確実に400万円を超える今回のカングーは価格の面でもやはり隔世の感がある。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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