交換より板金修理、ポリバンスのプラスチック溶接…IAAE 2023
レスポンス / 2023年3月9日 10時45分
高度化、モジュール化が進む自動車において、修理ということばはほぼ「部品交換」を意味することになる。とくにバンパーなど樹脂部品はほぼ例外なく交換になる。壁にこすったくらいでも、きれいに治すには交換が手っ取り早い。ましてや割れたりしたら補修不可能とされてしまう。
しかし、はんだごてでポリバケツや塩ビパイプを補修する動画をYoutubeやInstagarmで見たことはないだろうか。割れた樹脂製品を熱で溶かしてくっつけるという方法だ。タッカーやステープルの針を熱して、割れた部品つなぎとめる補強材として使う技などもあるようだ。
ティークラフトが国際オートアフターマーケットEXPO 2023(IAAE 2023)で、展示・デモを行っていた「ポリバンス」がそれを可能にする。PPやPEなどの熱可塑性素材の割れ、欠損等に同じ素材のロッドを溶かしながら溶接、補修していく。溶接機は電気ごて式のセラミックコアのこて、ヒートガン式のものと、高熱の窒素ガスを利用する大型のものまである。ロッドの素材や色は複数あり、素材ごとに使い分ける。
割れたバンパーをもとどおりにくっつけたり、折れてしまったブラケットのボルトステーを再生したりができる。簡単な補修なら接着剤で済む場合もあるが、部品を固定するステーやボルト穴が破損した場合、接着剤では強度がだせないことが多い。プラスチック溶接なら、同じ素材で溶着、一体化するので、接合部分が弱い、はがれるといったトラブルはまずなくなる(正しく施工できていれば)。
ツメで勘合する丸穴、角穴を補修・再生する治具もある。ボルトステーなどで、補強のための凹凸があったり立体的なアングルがある部品をつなげるときは、義歯の型をとるようなモールディングパテを使う。元の部品の形状の型をとり、接合部のオリジナル形状を維持した溶接も可能だ。バンパーなど外装部品の場合は、溶接したあと、サンドペーパーなどで面だしを行えばよい。下処理、塗装などは通常の板金・塗装処理となる。
このような樹脂製品の補修は、じつはニーズが高まっている。ひとつはサーキュラーエコノミーやリサイクルといった社会的なニーズがある。カーボンフットプリントを削減するためにも、プラスチック部品、製品の再生利用が注目されている。
CASE車両において、バンパーは各種センサーを内蔵する部品でもある。昔のようにボディ本体を守る、デザインや空力パーツという機能だけではなくなっている。そのため、バンパー自体の部品代がどんどん上がっている。センサー位置が変わったりすると車検に通らない(エーミングできない)問題もあり、ちょっとした傷や破損でもセンサー含むバンパー一式交換になる場合、従来のバンパー交換の値段では済まなくなる。ユーザーとしては補修、再利用できれば既存の部品を使ってほしいはずだ。
ボディショップでは、ポリバンスのような補修キット、再生、あるいは板金補修の技術が見直されるのではないだろうか。
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