【BMW i7 新型試乗】やり過ぎ感はあれど、まさに「オール電化カー」だ…中村孝仁
レスポンス / 2023年3月11日 9時0分
◆最初の印象は「これ、ロールスじゃん!」
このクルマを始めてみたのは2022年の初夏。BMWがスポンサードするゴルフのトーナメントのこと。ホスピタリティーブースに展示されていたのを見た時だ。果たしてそれが通常の『7シリーズ』だったか『i7』だったかは覚えていないが、カラーリングは今回乗ったのと同じツートーン。そしてその最初の印象は「これ、ロールスじゃん!」というものだった。
BMWがロールスロイスを傘下に収めて今年で20年になる。そしてようやく、ロールスにも似たBMWが完成した。まさに深慮遠謀なるBMWの計画が明らかになったともいえるモデルのような気がした。
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以前からキドニーグリルを大型化して、しかもバーチカルなデザインに持って行ったのも、ここに帰結するのだろうか。とにかくこのクルマのアピアランスはとてつもなくインパクトがある。そして乗るためには確実にコックピットドリルが必要だ。否、それはすでに乗る前から必要でもある。
ドアを開けるためにはもちろん通常通り、ドアノブに手をかけて手前に引けばよいわけだが、このクルマの場合そのドアノブの表面に付いた黒い丸いスイッチをプッシュする。すると、ドアは自動的に適度な開閉角度をもって開く。どうやらミラーに付いたカメラもしくはセンサーによって開く角度を調整しているようだ。だから隣のクルマとの間隔が狭い場合でも、隣のクルマにドアをぶつける心配はないという(試していないので)。中からドアを開ける際も同様である。
◆後席にてんこ盛りされた豪華装備と快適装備の数々
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ロールス的であることは前述したが、サイズ感はほぼロールスロイス『ゴースト』のそれに近い。i7だけでなく通常の7シリーズも、今回からホイールベースは3215mmの長さのみとなり、先代のロングホイールベースをも上回る堂々たるボディ1種に統一された。結果3サイズは全長5390×全幅1950×全高1545mmとなり、まあ普通の洗車機には入らない。この種のクルマは手洗いが常識だよと言われてしまいそうだが、庶民はそういう心配もするのである。
ロールスロイス・ゴーストは、オーナードライバーがドライブを楽しむためのクルマでもあるとはよく言われること。ではi7は?と言われると、確かにドライブを楽しむことも可能だろう。しかしそれ以上にリアにいたくなるクルマなのである。オプションではあるものの、リアにてんこ盛りされた豪華装備と快適装備の数々は、後ろに人を乗せてドライブするのが阿保らしくなるほど。残念ながら体験できなかったが、代わりに体験させた我女房は、「こんな快適なクルマは初めて」と宣っていた。
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そりゃそうだろう。水平とは言わないが限りなくリラックスした角度までシートが倒れ、オットマンがせり上がり、これでもかと思わせるサイズの大型ディスプレイを出せば、ちょっとした動くホームシアターである。おまけにシアターモードというのをチョイスすると、リア及びサイドのブラインドが閉まり(自動的に)室内を暗くして、ディスプレイを見やすくしてくれる。もっともその時ドライバーの後方視界は完全に閉ざされ、しかもこのリラックスした後席はフロント助手席も折り畳んで一番前までもっていくから、サイドミラーも見えなくなる。
このほか、リアはドアに付くスマホサイズのディスプレイにこれまたスマホ同様各種アプリのアイコンがあって、それを押すことで色々な装備を動かすことができる。手を使うのはまさに指先だけ。オール電化である。
◆驚くほどの静寂感と快適さ、もはや高級車はこれでよい
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とまあ、止まった状態はこんな感じだが、走り出してもこいつは凄い。脚色されたBEV特有の音を発しながらの加速感。静寂にすればよいのに…と思ったらそれもできる。音を消すことも可能なのである。こうすると驚くほどの静寂感と、驚くほどの快適さに支配される。もはや高級車はこれでよいと思う。
電気は充電が面倒だから長距離には向かないと思っていたが、実質的に500km以上の足の長さを持てば、東京―大阪間でも途中一度止めれば完走できるし、往復2~300kmの行程なら電欠の心配ゼロで行ける。しかも高速に乗って巡航すると、このクルマは効率が良いのか驚くほど持つ。東京~千葉程度の移動なら、充電せずに楽に2往復が可能だ。
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走行モードの切り替えは最近BMW各車に使われているMy Modeというボタンをプッシュして行う。i7にはパーソナル、スポーツ、エフィシェント、エクスプレッシブ、リラックス、それにシアターと言ったモードがあるが、それぞれ走り方が変わるだけでなく、表示されるディスプレイも大胆に変わる。
特にスポーツモードを選ぶと、シートのサイドサポートがいきなりタイトになって戦闘モードに入り、従来踏んでいたアクセルの踏み込み量と同じに踏むと、蹴とばされたような加速感で2690kgもある車体を強烈に加速させる。同時に疑似音もその加速を演出する。他のモードでは室内に情景を想起させる疑似音が流れて、リラックスムードを演出する。勿論演出だけでなく顕著に走行イメージも変わり、基本的にはスポーツ以外は絶妙な快適感でクルマを走らせることができる。
◆電気自動車の見本市的クルマである
まあ少しやり過ぎ感はあるが、電気自動車はこんなことも出来ますよという見本市的クルマである。まさにオール電化Carであった。因みにお値段、素の「i7 xDrive60」なら本体価格1670万円(案外リーズナブル)だが、オプションてんこ盛りの試乗車は2240万7000円と、実に570万円以上のオプションが追加されていて、このうち一番高価なオプションは2トーンの塗装代で164万3000円也の代金がかかる。フルレザーメリノとカシミヤウールのコンビシートは132万1000円。オプションだけでミドルクラスのクルマが買えるお値段である。
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■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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