2025年に実用化へ、ヤマハが「モータープラットフォーム」で描く移動の形とは
レスポンス / 2023年3月17日 16時7分
ヤマハ発動機が、15日に開幕した「国際スマートグリッドEXPO 2023」に「ヤマハモータープラットフォームコンセプト」を出展した。これは、ホンダの携帯用バッテリーである「モバイルパワーパック e:」を使用した電動車両のプラットフォームだ。
◆ホンダの着脱式可搬バッテリーを使用
ホンダモバイルパワーパック e:は、2輪車などの脱二酸化炭素化を実現するため、脱着式とした携帯リチウムイオンバッテリーで、国内の2輪メーカー4社が共通して活用し、2輪車はもちろん様々な用途での電動化の一助にしようと合意している。
今回試作された4輪のプラットフォームは、たとえば大人1~2人乗りの低速モビリティなどとして活用を摸索するという。2輪車などの部品を最大限活用して製作されており、単に人が乗る低速モビリティとしてだけでなく、荷物の搬送などにも適応する低速EV(電気車両)への展開も想定している。
ヤマハは、過去にもクルマとの接点を求め続けてきた。1960年代にはトヨタ『2000GT』や、レース車両のトヨタ7などの開発に協力している。80年代には、独創の5バルブエンジンでF2やF1に参戦した。ほかにも、元F1設計者のゴードン・マーレーと小型の試作車を東京モーターショーへ出展したこともある。
◆他社からの架装案も受け入れ
今回のモータープラットフォームコンセプト開発に際し、ヤマハは自ら100近い用途案を想定し、仕様を設計したという。だが、その使い道をさらに広く想定しており、自社だけでなく、他社からのプラットフォーム活用の提案を求めている。過去、自社で車両概念をまとめ、一台のクルマとして製作を考えてきたヤマハだが、今回はプラットフォーム提供者としての取り組みでもあるという。
出展されたヤマハモータープラットフォームコンセプトは、幅を最大1100mmまで広げる調整ができ、さらに数台が隊列して走行する、いわゆるカルガモ走行的な使い道も想定した設計となっている。隊列走行での連結方法も、自動運転を視野に入れ、同じ方向へ進む際には隊列を成すが、それぞれの車両が個別に目的地を目指すこともできるようになるといったことも視野に入れている。
最高速度は20km/hで、最大積載重量は未公開だが、100kg以上は可能ではないか。というのも、大人2人が乗る低速モビリティを想定した場合、体重60kgの大人が二人乗ると仮定すれば120kgになる。人が乗る車両は、セニアカーやゴルフカート、あるいは過疎地域の移動手段なども想定できる。荷物の運搬では、宅配便などの運搬だけでなく、病院や倉庫での運用や、マリンジェットなどの運搬用として娯楽に活用する場面も想像できる。そうした多様な使い方に適応できるプラットフォームというわけだ。
馬車の時代のコーチビルダーのように、他社からの架装案も受け入れることで、このプラットフォームを土台に用途に応じた多彩な着想が生まれることをヤマハは期待している。
◆2025年の実用化を目指す
ところで公道を走行するには、ナンバープレートの取得が必要だ。国内では、これまで超小型モビリティの枠組みが明確でなく、トヨタの『C+pod(シーポッド)』がようやく発売にこぎつけたところだ。混合交通のなかで安全を考慮しなければならないのはもちろんだが、日本は公共交通の発達した大都市圏と、地方都市や郊外では交通形態がまったく異なる。それらを一つの車両規則だけで統一する難しさがある。
高齢化のみならず、障害者の社会進出も望まれる今日、地域の実情に合わせた交通を実現する法整備が求められる。それに際し、必ずしも国土交通省による全国的な統一見解にこだわらず、地域の自治体が地元の実情に合った移動手段へのナンバープレート発行という仕組みがあってもいいのではないか。すでにヤマハには、ヤマハモータープラットフォームコンセプトに対する自治体からの問い合わせが来ているようだ。
原動機付自転車という統一の車両規則はあるが、そのナンバーは自治体が発給している。その発想をより柔軟に拡張することで、こうした新しい電動の乗物が活躍し、暮らしを豊かに、かつ地域に根差した交通の拡充が進むことも期待される。その際、当面は地域の特区という形態で導入が検証されてもいいのではないか。
ヤマハモータープラットフォームコンセプトの実用化は2025年を目指しているという。量産するとなれば、あと1年ほどで完成車が出来上がる必要があるだろう。原価低減を含め、ヤマハは最終の詰めに入っているようだ。
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