【ポルシェ タイカン クロスツーリスモ 新型試乗】EVだろうが徹頭徹尾ポルシェそのもの…島崎七生人
レスポンス / 2023年3月22日 20時0分
Cd値0.26という『タイカン クロスツーリスモ』のボディは、全長4974mm×全幅1967mm×全高1212mmと実に堂々としたもの。『911』を4ドアにしたようなサルーンに対して、“フライライン”と呼ぶ後方にかけて傾斜したルーフラインが、まさに飛び立たんばかりのチカラを漲らせて見せる。
2018年ジュネーブショーのコンセプトスタディモデル『Mission E Cross Turismo(ミッションE クロスツーリスモ)』からほぼ変わらないデザインだが、資料をあたると、前後バンパーのコーナーとシルエンドのフラップは飛び石から保護する機能を持つそうで、デザインに機能の裏付けをキチンと持たせるとこころがさすがポルシェといったところ。グリルレスだからといって必ずしもEVとは限らないと思わせられるのはポルシェの役得(?)かも……ともハタと思った。
◆先進性の中にも「かつての911」を思わせるインテリア
インテリアも同様で、盤面をやや湾曲させたフリースタンディングメーターパネルの楕円の輪郭はかつての911を思わせる。その下のステアリングコラム右手が電源ボタン、左手が上下させてR/N/Dを切り替えるギヤセレクタースイッチで、その横にPボタンが備わる。助手席側に2枚のディスプレイが組み込まれているが、いかにもタブレットかPCのモニターを置きました風ではなく、できれば目立たせたくないくらいにスッキリと収めてある。同様に目に煩い加飾パネルや装飾目的の挿し色の類いが一切ないのも好ましい。
前後席ともに低めのシートに身を委ねて座る格好になる。4名乗車であり後席はセパレートシートとなっており、フロントシートのようなサポート性。クロスツーリスモの場合は、ルーフが後方まで伸ばされた形状のおかげで、頭上の空間にも余裕がある。テールゲートを開けると奥行きのあるラゲッジスペースが現れ、その容量は446~1212リットルとのこと。フロント側にも84リットルのモノが載せられる(入れられる)スペースがある。
「Hey Porsche」(ボイスコントロール)、センターコンソールのフィードバック機能付き8.4インチタッチパネルなどで各種機能の操作もスムースに行なえる。空調は今や機械的なルーバー操作ではなく、バーチャルエアフローコントロールで完全に自動制御される。
◆走りはもう、“徹頭徹尾ポルシェ”
800Vのシステム電圧で作動する仕組みの「タイカンターボ クロスツーリスモ」のパワートレーンは、フロント/リヤの計2モーター+2速トランスミッションによる4輪駆動。メーカーの資料を読むと真っ先に“電力消費量(複合)28.7kWh/100km、CO2排出量(複合)0g/km”とEUモデルのスペックが出てくるのが何とも今どきだが、最高出力460kW(625ps)、ローンチコントロールのオーバーブーストパワー500kW(680ps)、最大トルク850Nmと何とも逞しい数字が並ぶ。日本仕様のスペックでは交流電力量消費率228Wh/km、一充電走行距離462kmとなっている。
走りは、これはもう“徹頭徹尾ポルシェ”といえるもの。アダプティブエアサスペンションは車高が30mm上がるグラベルモードも備えるほか、レンジ/ノーマル/スポーツ/スポーツプラスの各モードが利用可能。今回の試乗は市街地を中心としたものながら、たとえばスポーツプラスモードであれば擬似エンジン音のボリュームを一段と高めながらの加速感が味わえたりと、あくまでも終始、クルマを走らせていることを楽しませてくれるところがポルシェらしい。
それとボディ剛性の高さ、ステアリングの切る/戻すに対する圧倒的に誤差のない舵の反応も、パワーソースが何であってもポルシェであることをいやというほど実感させてくれる。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
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