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『リーフ』でサイドターンを決めろ! 立教大自動車部員がEVでジムカーナ大会に挑んだ秘密

レスポンス / 2023年3月23日 19時30分

ホンダ『インテグラ』やトヨタ『スターレット』。そんなスポーツカーが多く集まるジムカーナ大会に、何故かEVの日産『リーフ』が登場した。“ネタ枠”とも取られかねない1台だが、走行中にサイドターンを敢行、成功させ、会場の視線を釘付けにした。


3月11日に開催された、「関東自動車部ジムカーナ新人戦2023(新人戦)」。バラエティ豊かな車両がエントリーする中で、一際異彩を放っていたこのリーフ。電気自動車でジムカーナ大会に参加した理由、そしてサイドターンを成功させた秘密について、選手に直撃インタビューした。


◆会場を沸かせた、ありえないはずのサイドターン


ジムカーナ競技とは、広場にパイロンと呼ばれる三角コーンが設置され、それらを縫うように設定されたコースを1台ずつ走行し、タイムを競うというもの。トヨタ『ヴィッツ』のようなコンパクトカーでも参加できる敷居の低い競技で、学生の間ではホンダ『シビック』や三菱『ミラージュアスティ』のようなスポーツカーが人気だ。


そんな中で、立教大学自動車部の新2年生、福田真忠選手は、あえて日産リーフで大会にエントリーした。リーフといえばご存知の通り電気自動車だが、一般的に車重の重さから競技には不向きとされている。また、ジムカーナにおいては、サイドブレーキを用いて車体の方向をクイックに曲げる技、通称「サイドターン」が車体の構造上難しく、実戦投入には壁があるとされてきた。


しかし、今大会におけるリーフは違った。コースの最後のセクションで、あろうことか180度のサイドターンを決め、会場を驚かせた。柔和なリーフのフロントフェイスからは想像もつかないほどのアクロバティックな動きに、福田選手とリーフは運営委員会が独断と偏見で贈る「ベストパフォーマンス賞」に選ばれるなど、大会に大きな話題を提供したのである。


◆電気自動車の「下克上」、実現のための秘策


では、福田選手はなぜリーフで大会に挑もうと思ったのか。その理由を訊いてみると、意外な答えが返ってきた。実は当初は別の車両でエントリーするつもりだったという。


「元々自分のクルマであるDC5(4代目のホンダ・インテグラ)でエントリーするつもりでした。ですが、大会直前でミッションブロー(トランスミッションの故障)してしまって。修復が間に合えばと思っていましたが、間に合わなかったので親のリーフで出場することにしました」と福田選手。


しかし、福田選手は「せっかく出るならリーフのポテンシャルを示したいと思っていました」とも語る。先述の通り、その車重から競技において電気自動車は敬遠されがちだ。一方で、モーターならではの鋭い加速はEVの強みでもある。その強みを活かせれば、他の車両に一矢報いることができるかもしれない、というわけだ。


電気自動車による「下克上」のため、もう1つ乗り越えなければならない壁があった。それがサイドターンを苦手とすることだ。福田選手のリーフは初代後期型であったため、足踏み式のサイドブレーキが搭載されている。構造上、ターンが不可能になる電動パーキングブレーキではないものの、手引きのサイドブレーキに比べれば、やはり繊細なコントロールには不向きだ。


そこで、福田選手はある秘策を用意した。それがエコタイヤ「エナセーブ」の装着だ。競技で用いられるハイグリップラジアルタイヤなどと比較して、限界時のグリップに劣る一方で、逆にリアの粘りが無くなることはサイドターンがしやすいということでもある。会場で披露した180度のターンは、秘策がピタリとはまった格好だ。


しかし、福田選手は自身の走りに納得がいかない様子。「足踏み式とはいえ、リーフのサイドブレーキは非常によくききます。本当は、360度ターンも一発で決められるくらい。できなかったのは自分の練習不足だった」と悔しげだ。


◆敵はジムカーナ場の「外」にあり?EVモータースポーツの意外な苦悩


そんな福田選手だが、実は意外な敵に苦しめられていた。それが「航続距離」だ。都心部から会場である富士スピードウェイまでは、おおむね150km程度の距離がある。福田選手曰く、ジムカーナ場に充電設備がない以上、十分な充電量を準備して会場入りする必要があったという。


「満充電で家を出た段階で、モニター上では航続可能距離150kmと表示されますが、高速域では電費が悪くなります。東名の中井PAのあたりで空になったので1回、また余裕をもつため鮎沢PAでもう1回充電を挟みました。満タンにする必要がないとはいえ、充電1回に30分近くかかるので、会場入りもギリギリになってしまいました」と福田選手。


電気自動車ならではの苦労とも言えるが、逆に恩恵も感じられたという。福田選手によれば「ジムカーナでは自身が走行しない待ち時間が長いですが、エンジン車でいうところのアイドリングの状態で置いておくことができます。快適な車内で順番待ちをすることができる」のだとか。他の選手を観察したいドライバーはさておき、ご家族連れでモータースポーツに参加したい人々からすれば、これは敷居を下げてくれる要素になりうるのではないだろうか。


気になる消費電力だが、「1日エアコン付きで待機させた時と、ジムカーナ1本走行させた時が同じ程度」だという。どちらもモニター上の航続距離に10km程度の減少が見られたそうだ。また、実際に走行してみると、加速・減速といった「縦方向」には強いものの、車高が高いことから生まれるロールの大きさが気になり、「横方向」の弱さは気になったという。福田選手の順位は39名中17位と中間程度に終わったが、まだまだ伸び代はありそうだ。


◆風変わりな挑戦は、立教大の文化が影響?


そんな福田選手とリーフだが、本人によると「一発ネタ」であり、来年度は自分自身のインテグラで参加するつもりだという。しかし、電気自動車のポテンシャルを他の人々にも知ってもらいたいと語っており、チャンスがあれば、再びリーフのサイドターンを目撃できる可能性もゼロでは無さそうだ。


ところで、福田選手が所属している立教大学自動車部は、リーフに限らず、大会エントリーの車種選択センスに定評がある。今大会ではプジョー『307CC』やアルファロメオ『159』でエントリーした部員がいたり、過去には「ハコスカ」こと『スカイライン』が登場したこともあった。部で保有するジムカーナ車両もフォルクスワーゲン『ポロ』と、自動車部界隈では異色の存在だ。


福田選手は立教大学自動車部について、「確かに個性的な部活だと思います。思い思いの車を選ぶ文化がある」と説明。現在は主に2年生として整備の手伝いを行うことが多いものの、将来的には部の広報役となり、部の持つ個性や文化について、広く発信していきたいと語ってくれた。


「立教のリーフ」が見せたサイドターンは、会場に集まった若者たちの視線を釘付けにしてみせた。福田選手が言うところの「電気自動車のポテンシャルを示す」という目標は、十分に達成されたと言って良いだろう。今後の活動からも目が離せない。


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