走行性能を最大限引き出す! サスペンションアームの秘密に迫る~カスタムHOW TO~
レスポンス / 2023年4月4日 6時30分
サスペンションのアームを交換すると、走りも変わるし、アライメントも自由度が増える。車検が面倒になるが、申請不要のサスペンションアーム交換もある!!
◆タイヤやホイールを支えているサスペンションアーム
クルマはタイヤとホイールが回転していて、ナックルやアップライトと呼ばれる部分にホイールが取り付けられている。そのナックルを支えているのがサスペンションアームだ。どんな風にアームが支持しているかでサスペンションの形式が異なる。ロアアームがナックルを支え、アッパーアームがないストラット式はシンプルで部品点数が少ない。ナックルを上下のアームで支えるマルチリンクやダブルウィッシュボーン式はストロークしていくときのアライメント変化が理想的なものにできたりするメリットがある。
コンパクトカーのリアサスに使われることが多いトーションビーム式は、左右が一体になった大きなトーションビームがピボットとか取り付けられていて、大きな1つのアームのようになっている。そしてそれらのアームの動く部分にはブッシュが使われている。このゴム製のブッシュが振動や音を吸収する仕組み。ゴム製だけに徐々に劣化していく特徴がある。ブッシュが痩せてくるとアライメント変化が無駄に大きくなってしまったり、音が出始めたりする。
そもそもサスペンションアームのブッシュは場所によってその大きさと硬さを細かく変えて設計されている。それによってストロークして沈んでいったときに、わざと特定のブッシュが潰れるようにして、スピンを防ぐ方向にアライメントが変わったりするようになっている。そこまで自動車メーカーでは計算して設計されているのだ。なのでテキトーにパーツ交換すると予想だにしない挙動が起きることがある。しっかりとプロと相談した上でチューニングを施したい部分である。しかし、それでもやった満足度が高いオススメのチューニングでもある。
◆強化ブッシュにしてダイレクト感をアップ
各ブッシュを硬度の高められた強化ブッシュに交換するのが王道チューン。各社からウレタン製ブッシュやゴム硬度が高いブッシュが出ているのでそれらに交換する。
交換時はノーマルのアームのブッシュをプレス機で外し、新しくブッシュを圧入していく。国内でも使われることの多いパワーフレックスという海外製品では、硬度の異なるブッシュがあり、3種類から選ぶことができたりする。硬いものほどダイレクト感はアップするが、その分だけ振動が増えたりすることもあるので、そこはトレードオフで考えるべきパーツ。しかし、ブッシュ強化は乗り心地が悪くなるというよりもシャキッとするので、高速道路の乗り心地も悪化するわけではない。人の感じ方にもよるが乗り心地がよくなったという人も多い。
強化ブッシュの上にはピロボールがある。金属製のボールが支持するピロボールはブッシュのように潰れる部分がまったくない。荷重が大きく掛かってもブッシュの潰れによるアライメント変化はないので、常に安定したハンドリングが得られる。デメリットとしては金属同士が支えているので徐々に摩耗していくこと。減っていくとガタが出てきてしまい、ピロボールを交換することになる。とくに砂やゴミなどを噛み込むと、それが研磨材になって一気に摩耗してしまう。レーシングカーではピロボールが多用されているので、圧縮空気でこまめに清掃し、定期的に交換している。ストリートカーに使うなら数万kmごとに交換する覚悟は必要になる。
◆調整式アームならアライメントも自由自在
ブッシュだけでなくアームを調整式にする手もある。ターンバックルがありアームの長さを調整できるものにすると、ノーマルでは調整できなかったキャンバー角を変えられたり、純正アームではできない範囲までアライメントを変えられたりする。たとえばR35『GT-R』ではフロントのアッパーアームを調整式にして、短くすることで大きくキャンバー角をつけることができる。そういったチューニングが多い。
気になる点としては申請が必要になること。アーム交換はあらかじめパーツメーカーの強度検討書を元に、記載変更の申請書を作成し、それを提出。内容を確認してOKが出たら車検を通すことができる。1度申請すれば良いが、装着時には結構手がかかるのでちょっと面倒である。個人で申請書を作る難度はかなり高いので、プロショップにお願いすることになり、そのコストも掛かってくるのだ。
ポイントとしてはアーム交換は申請が必要になるが、純正アームのブッシュ打ち替えは不問。なので、純正アームに強化ブッシュやピロボールを入れるのは心配ない。TRDやSTIでは、純正アームにピロボールを打ち込んだアームを販売している。そうなるとブッシュ打ち替えの工賃も不要で比較的リーズナブルに装着することができるのだ。
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