【ヤマハ MT-10 SP 試乗】今後これほどコストのかかったハイパワーネイキッドが登場するだろうか?…小川勤
レスポンス / 2023年4月5日 12時0分
「The king of MT」。ヤマハMTシリーズの頂点にいる『MT-10 SP』は、ヤマハのトップスーパースポーツである『YZF-R1』がベース。2022年にマイナーチェンジを受け、規制に対応しつつ6psのパワーアップを果たし、166psを発揮。さらに細部を見直し熟成している。
◆速さを追求するための電子制御で快適さを追求
![](https://response.jp/imgs/zoom1/1872171.jpg)
モードを確認せずに、ちょっと油断して走り出したら、物凄いレスポンスのエンジンと物凄い硬いサスペンションに面食らった。メーターを見るとAモードになっており、路面がウエットだったので尚更である。スロットルを開けるとまるで猛獣のようで、ずっと唸っているし、吠えているような感覚なのだ。ちょっとのスロットル開度で車体が敏感に反応し、手の付けようがないほど元気だ。
MT-10 SPの威圧感やボリューム感は凄まじい。しかし雨天時用のDモードにすると、先ほどまで吠えていた猛獣が途端におとなしくなる。スロットル操作に対する反応は穏やかで、サスペンションも柔らかくなり、乗りやすいバイクに変身するのだ。それは雨の憂鬱さがすぐに吹き飛ぶほどに楽しいバイクで、MT-10 SPはとても軽快に市街地を駆け抜けていく。
アップライトなポジションだけでなく、YZF-R1Mと比較すると25mm低いシートのおかげで身長165cmの僕でも馴染みやすく、AからDモードにするとサスペンションも柔らかくなるため、さらに足着き性も良くなるイメージだ。
![](https://response.jp/imgs/zoom1/1872188.jpg)
この電子制御式サスペンションは上質で、さすがオーリンズという乗り味。YZF-R1に近いレーシーな車体ディメンションにも関わらず、市街地での速度域でも安定感と軽快感を両立。これは、サスペンションのベース性能の高さとヤマハがMT-10 SP専用に与えたセッティングのおかげだろう。
電子制御というと難しさを感じたり、自分にはわからないと思う方も多いが、MT-10 SPのモードは直感的に触れるわかりやすさがあり、すぐに慣れることができると思う。また、モード変更によるバイクの変化の幅も大きい(もちろん細かく設定することも可能)から自分の好みを探しやすい。レースで速さを追求するために生まれた最新技術が、こうして快適性や安全性に結びついているのはとても良いことである。
◆並列4気筒唯一のクロスプレーンエンジンを堪能しよう
![](https://response.jp/imgs/zoom1/1872239.jpg)
世界最高峰のロードレースであるMotoGPから生まれ、スーパーバイクでも活躍するヤマハのクロスプレーン4気筒エンジンの爆発感覚は、不等間隔。一般的な並列4気筒の爆発間隔は等間隔だが、ヤマハだけはまるで異なるエンジンを搭載。それはエンジンを始動した瞬間に音や鼓動から感じられる。
そんなレーシーな技術で構築されたエンジンだが、走行中に常に感じられるのは、速さでなく快適さと豊かなパルス感だ。スロットルを開けると後輪のグリップを作り出せるようなフィーリングがあり、ここに他の並列4気筒との決定的な差がある。またエンジンを回しても振動がなく、スロットルを戻した際のエンジンブレーキも少なめ。だから速度域が上がってもハンドリングの軽さをキープできるのだ。
また、Aモードにして高速道路に乗ってみると、とてつもない加速が可能。回りたがるエンジンを少しだけ引っ張ってみる。独特のパルス感とともに軽やかに伸びていくクロスプレーンエンジンは、躍動感に溢れ、エンジンの欲望のままスロットルを開けていくと、とんでもない速度に到達してしまう。また、のんびりと走りたい時にはクルーズコントロールも有効。まさにどんな要望にもすぐにフィットしてくれるのが良い。
![](https://response.jp/imgs/zoom1/1872176.jpg)
◆26万4000円の価格差ならSPをオススメしたい
ハンドリングは軽く、ブレーキのタッチもレース譲りのコントロール性の高さを約束。ブレーキレバーを引き込んだ時のフィーリングだけでなくリリース感も良く、とにかくすべての操作に上質感がある。この上質さの積み重ねが良いバイクに乗っている実感を高めてくれる。また、どこに行っても高い存在感を発揮し、「The king of MT」の貫禄はさすがだ。
ちなみにMT-10は今回紹介したMT-10 SPとスタンダードモデルのMT-10の2機種を用意。スタンダードモデルは機械式のサスペンションを搭載し、スイングアームなどの処理が異なるのだが、価格差26万4000円なのであれば、僕はMT-10 SPをオススメしたい。電子制御のモードに合わせて、パワーやトラクションコントロールだけでなくサスペンションのフィーリングが変われば、より自分に合わせたバイクに仕上げやすいからだ。
走るほどに、今後これほどコストのかかったハイパワーネイキッドが登場するだろうか? と思う。ここにヤマハのハイパーネイキッドの究極を感じずにいられない。それほどMT-10 SPは完成度が高く、上質だ。
![](https://response.jp/imgs/zoom1/1872192.jpg)
■5つ星評価
パワーソース:★★★★
ハンドリング:★★★★
扱いやすさ:★★★
快適性:★★★
オススメ度:★★★★
小川勤|モーターサイクルジャーナリスト
1974年東京生まれ。1996年にエイ出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在は『webミリオーレ』のディレクターを担当しつつ、フリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またレースも好きで、鈴鹿4耐、菅生6耐、もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導を務める。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
【ヤマハ XSR900GP 試乗】こんな“遊び”のある提案を、多くのライダーは待っていた…鈴木大五郎
レスポンス / 2024年7月3日 12時0分
-
「バイクはやっぱり4気筒」というのは過去の話!? 2気筒エンジンのバイクが人気の理由
&GP / 2024年6月30日 7時0分
-
ヤマハ新型「MT-09 SP」が発売! 上級モデルになり足回りも強化 +約18万で手に入れられる新機能とは?
乗りものニュース / 2024年6月19日 18時12分
-
ヤマハ『MT-09 SP』新型発表、ブレンボ製キャリパーにスマートキーも 24年モデルは走りと質感アップ
レスポンス / 2024年6月17日 10時30分
-
ヤマハ「MT-09SP」 スタイル一新した新型の上級グレード発売
バイクのニュース / 2024年6月14日 15時10分
ランキング
-
1医師が考案「脳梗塞の時限爆弾」を解除するスープ 中性脂肪と悪玉コレステロールをためこまない
東洋経済オンライン / 2024年7月7日 18時0分
-
2貧乏体質に共通する「夜の悪い習慣」って?
オールアバウト / 2024年7月7日 21時20分
-
3訪日観光客がSNSには決して出さない「日本」への本音 「日本で暮らすことは不可能」「便利に見えて役立たない」と感じた理由
NEWSポストセブン / 2024年7月1日 16時15分
-
4ダイソーでかなう、税込110円の「生ごみ臭」対策! 入れるだけ・かけるだけで、もう臭わない
オールアバウト / 2024年7月7日 17時15分
-
5裏金自民に衝撃!東京都議補選「2勝6敗」の大惨敗…ステルス支援の都知事選勝利ふっ飛ぶ
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年7月8日 10時52分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)