関西空港で電動トラクターを遠隔操作、ピーチが実証実験
レスポンス / 2023年4月17日 6時45分
LCCのピーチ・アビエーション(以下ピーチ)は4月12日、関西空港において貨物コンテナなど航空地上支援機材(Ground Support Equipment:GSE) を遠隔操作する実証実験の模様を報道関係者に公開した。同様の実証実験が関西エリアで行われるのは初めてとなる。
◆地上作業員の人手不足解消が実証実験の目的
この実証実験は、課題となっている空港での地上作業員の人手不足を解消することなど目的に、ランプエリア内での遠隔操作による車両走行の実用性を証明するために実施された。同様の実証実験はすでに成田空港や佐賀空港において、トーイングトラクターをはじめとするGSE運用する実証実験として実施されており、ピーチとしても将来的には受託手荷物の運搬で乗客への返却するまでの待ち時間短縮にもつなげていきたいとしている。
今回の実証実験に参加したのは、ピーチのほか、パナソニックホールディングス(パナソニックHD)、長瀬産業、関西エアポートの4社。今回の実証実験に使われた遠隔管制システム「X-Area Remote(クロスエリアリモート)」は、パナソニックHDが開発したもので、これは同社が本社(大阪府門真市)敷地内などでライドシェアとして運用している技術を活用したものになる。
遠隔操作で走行する牽引車「TractEasy」はTLD社製の「JET-16」をベースに、自動運転のベンチャーであるEasyMile社が手掛けた自動運転システムを搭載した車両で、長瀬産業が所有する。ルーフにはベロダイン社製3D-LiDARを、左右には周辺監視用の3D-LiDARを搭載し、ほかにGPS-RTKアンテナ、アクチュエーターなどを搭載して自動運転に対応。さらに走行ルートを対象とした高精度マップを作成し、TractEasyはこれを元に自動走行を可能としている。正面の2D-LiDARは使用していないとのことだった。
ただ、今回の実証実験ではこの自動運転機能は二次的なものとして使い、運行のメインはX-Area Remoteでの遠隔操作によるものとなる。
◆1人のオペレーターで最大4~5台を同時に遠隔操作可能
そのためにTractEasyには計4つのパナソニック製カメラを追加装着。前方/左右に遠隔操作用として3つのカメラを使用し、残りの一つは車両ルーフに安全監視用としていた。その上でX-Area Remoteを搭載して遠隔操作に対応した。パナソニックHDでこの事業を推進するジョン・ステファンさんは「遠隔操作するオペレーターは映像を見ながら、X-Area Remote経由でハンドルやアクセル/ブレーキなどを操作して、その情報を車両へ送信することで遠隔コントロールできる」と説明。
遠隔操作にはLTE回線を用いているため、若干の遅延は発生するが、速度を最高7.2km/hに抑えたことで影響は最小限にとどめられているという。さらにネットワーク状況が悪化しても、同社の技術によってそれをリアルタイムで検知して映像を調整して確実に届けることを実現しているそうだ。また、今回のシステムでは1人のオペレーターで最大4~5台の車両を同時に遠隔操作できるとしており、これが実現すれば1/4~1/5の省力化が図れる計算になる。
実験ではエアロプラザ(関西国際空港)内のピーチオフィスに設置した遠隔管制システム・X-Area Remoteを用いて、TractEasyを自動運転レベル4相当で走行させる。運行ルートはGSE置き場から飛行機の側までの区間で、ここをTractEasyが非自走式のCOMBO(航空機に電力および空調の両方を同時に行う機材)を牽引して運搬した。
X-Area Remoteから見る風景はカメラを通すため、実際とはかなり異なるが、それでもスムーズに走行している様子が実感できた。とはいえ、遠隔操作によるミスで機体へ近づき過ぎることはないのだろうか。これについて、TractEasyを所有する長瀬産業の技術営業を担当する野田大智さんは、「万一、遠隔操作の誤りによって機体へ近づきそうになっても、車両に搭載した自動運転機能が一定の距離以上は近づかない設計になっている」そうだ。
◆「手応えは十分。すぐにでも導入したい」ピーチ・大橋氏
今回の実証実験に至ったきっかけについて、ピーチの空港センター グランドオペレーション部 グランドオペレーション業務課の大橋孝弘さんは、「もともとピーチでは2020年から環境に配慮するため、航空機のAPU(補助動力装置)を電動化で対応するCOMBOの導入を計画していた。しかし、コロナ禍による人手不足から思うように運用できなかったとの反省があった」と導入の背景について説明。「そんな中で、自動運転でこれに対応できるとの話を聞き、人手不足の解決につながるかもしれないと判断した」のがきっかけになったという。
自律式の自動運転ではなく遠隔操作によるコントロールを選んだことについては、「航空機への接近では細かなコントロールが欠かせず、万が一のことを考えると自律式自動運転での運用は難しいと考えた」と話す。しかし、「実証実験の期間は4月3日から13日の10日間だったが、最初の3日ほどで遠隔操作そのものは問題なく運用できることを確認できた。そのため、それ以降は主に悪天候時などの対応の確認などに時間を割くことができた。個人的にはすぐにでも導入したいほど」とし、実証実験の手応えは大きかった様子だった。
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