【スバル クロストレック 新型試乗】28年にわたる進化が結実!「2クラス上」の静粛性に感動…西村直人
レスポンス / 2023年4月18日 12時0分
SUVが世界市場で認知され早20年。その間、SUBARU(スバル)は独自の切り口で攻め続ける。その最新モデルである『クロストレック』は「スバル XV」の後継モデルだ。
◆28年の永きに渡る進化が結実した新型『クロストレック』
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スバルにこの手のSUVを作らせたら抜群に上手い。ハッチバックボディ、もしくはステーションワゴンボディをベースにサスペンションストロークを伸ばし、最低地上高を上げ、悪条件での走行性能と日常領域での使い勝手を高い次元で両立させた。いわゆる「クロスオーバー」ジャンルのひとつである。
1980年に北米市場で誕生したAMC「イーグル・ワゴン」が、ステーションワゴン×SUV的な位置付けで販売を伸ばしたが、じつは1940年代には軍用車をベースにしたこの手が存在していた。いつの時代も合理的な考え方はわかりやすく、受け入れられやすい。
日本市場では1995年夏に導入された『レガシィ・グランドワゴン』を皮切りに、クロスオーバー思想は一クラス下の『インプレッサ』にも波及する。1995年秋に導入された『インプレッサ・グラベルEX』がそれだ。
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当時、クローズドコースでの試乗機会を得ていたが、長い足の滑らかさと素直な走行性能、炸裂型EJ20型ターボの組み合わせは魅惑的だった。このセットアップは1997年の初代『フォレスター』に受け継がれ、いくらかマイルドになったものの「楽しい!」と多くのユーザーを魅了する。筆者もその一人で、今でもBR型レガシィ・アウトバックユーザーだ。
原点の誕生から28年の永きに渡り、スバルは日本/北米市場を中心にこのジャンルでも販売台数を伸ばしてきたわけだが、クロストレックは従来型であるXVの良いところをグンと伸ばした。数字が踊るハイパワーエンジンが搭載されたわけでもなければ、ボディサイズだってほぼ同じ。だが、中身は劇変した。
◆公道で光る滑らかな乗り心地と「2クラス上」の静粛性能
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公道試乗でなにより光ったのは、ものすごく滑らかになった乗り心地と、2クラス上の静粛性能だ。足の長いクロストレックではスバル独自の「フルインナーフレーム構造」が公道での乗り味向上に効いている。
滑らかな乗り心地には良く動くサスペンションが必要で、大きな振動発生源であるエンジンにしてもシャーシ(クルマの土台)と結合するマウント(金属とゴム素材)できれいに吸収することが不可欠だ。
フルインナーフレーム構造ではを骨格連続性を高める(≒柔軟な応力対応と残留応力への最適化を図る)ため、シャーシとボディ両側のサイドフレームをがっちり接合した後に、我々がいわゆるボディと呼ぶアウターパネルを溶接する。例えるなら、体幹がしっかりしていて、内臓&皮下脂肪が少ないスポーツ選手のような構造だ。
今回は大人2名+撮影機材という車両負荷で試乗に臨んだ。バンプラバー(ヘルパー)に当たるほどの大きな段差を通過した際には、当然ながらガツンと縦(鉛直)方向の強い衝撃が身体に伝わるものの、揺れは一度で収束。ステアリングにも影響を及ぼさない。これもフルインナーフレーム構造の効果だ。
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リヤドア下部にはクロストレックでもキャッチャー(是非、実車で確認を!)を採用しているが、強固なサイドフレームとの相乗効果で、前後や横方向の大きな入力に対する「たわみ」をグッと抑えてくれる。リヤドアのキャッチャーは2代目のBG型レガシィから採用されているが、クロストレックではキャッチャーサイズが従来型のXVよりも一回り大きい。
また、微小な変形を抑える「構造用接着剤」の塗布長(塗った長さ)を従来型XVの約3.4倍に延ばし、制振目的の「塗布型サイレンサー」では配置を最適化してロードノイズを低下させつつ、軽量化も行なった。
◆上質さを支える進化型「e-BOXER」
静かさに貢献する技術のひとつが、ルーフに採用した高減衰マスチックだ。これによりルーフの共振抑制や音圧低減が可能になった。スバルでは経年変化に強い弾性接着剤を採用したことで、長期間、乗り続けていても効果が落ちにくい。ユーザー目線の素材選びに感心した。
スバルによると、人はその空間が静かであればあるほど、より上質であると認識するとのこと。後席でも試乗したが、この静かさは変わらず。ちなみに、クロストレックはロードノイズ面では不利になる17インチ/18インチともオールシーズンタイヤ(欲を言えばスノーフレークマーク付きが欲しかった!)を履く。
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上質な空間を根幹で支えるのは進化型e-BOXERだ。エンジン&電動モーターのスペックは従来型と同一ながら、制御を行なうソフトウェアを全域にわたり見直した。結果、発進時のギクシャク感(エンジン出力と電動モーター出力のシンクロ率悪化)がほぼ解消され超絶快適に。次にCVTのレシオ変化に同調し力強く駆動力をアシストするよう電動モーターの特性を変更したことで、発進から40km/hあたりまでの力強さが15%増しになった。なかでも15~30km/hあたりの気持ち良さ(滑らかな力強さ)は筆者の体感値では2倍に増えた。
とはいえ最高出力145ps/最大トルク188Nm(19.2kgf・m)のエンジンに13.6ps/65Nm(6.6kgf・m)の電動モーターなので劇的な速さは望めない。でも今回、大人2人+荷物の状態で、一般道路/山道/高速道路を100km程度走らせた限りでいえば、個人的には十分な性能だと改めて実感できた。
『レヴォーグ』から搭載されている電動ブレーキブースター(BOSCH製)は、e-BOXERと初組み合わせだ。高い分解能を誇るペダルフィールはそのままに、変動が大きく制御の難しい回生ブレーキとの連動はじつに見事で、停止直前のペダル踏力緩めにもちゃんと対応してくれるからカックンブレーキにならない。実験部隊によると「相当な距離をいろんなシーンで走り込んだ」という。次は雪道や滑りやすい路面でもテストしたい。
個人的には乗り味が前席/後席でスッキリしている18インチタイヤ仕様がおすすめです。
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■5つ星評価
パッケージング:★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★
フットワーク:★★★★
オススメ度:★★★★
西村直人|交通コメンテーター
クルマとバイク、ふたつの社会の架け橋となることを目指す。専門分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためにWRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席したほか、東京都交通局のバスモニター役も務めた。大型第二種免許/けん引免許/大型二輪免許、2級小型船舶免許所有。日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J)理事。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会・東京二輪車安全運転推進委員会指導員。日本イラストレーション協会(JILLA)監事。
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