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EV・FCV普及の可能性を販売データと試乗から読み解く…Tech-T 代表 高原忠良氏[インタビュー]

レスポンス / 2023年4月20日 7時45分

来たる5月11日、オンラインセミナー「EV・FCVのグローバル&日本の動向分析と新たなビジネス」が開催される。


セミナーに登壇する株式会社Tech-T 代表取締役 博士(工学)の高原忠良氏は、トヨタ自動車において樹脂部品生産&材料・加工技術・CAE開発に従事。その後、サムスンSDI エンジニアリングプラスチック研究所、大手自動車メーカー研究所にて次世代車要素技術開発に取り組んだのち、2020年に独立。


現在、株式会社Tech-Tにて今後の車載プラスチック動向の調査分析と情報発信に取り組んでいる。特に近年は各種EV/FCEVに試乗の上でのコメントを発信する。プラスチック成形加工学会、自動車技術会会員。埼玉工業大学 先端科学研究所 客員教授も兼任中。


登壇する高原氏に、セミナーの見どころを聞いた。


セミナーの詳細はこちらから


◆中国のEVのうち15%が100万円以下


高原氏はまず、世界の地域別にEVの普及がどの程度進んでいるかを説明する。


「グローバルな視点で見ると、販売されている車のうち9.3%がBEVになっています。地域別に見てくと、中国市場では昨年537万台のBEVが販売されました。」


「中国では、新エネルギー車の大部分がBEVであり、PHEVの割合が非常に低いことが特徴です。また、100万円以下で購入できるBEVが結構多く、BEVの15%がこの価格帯の車であることが、中国市場の特徴です。


メーカーでは、テスラは上海で生産し、輸出も行っていますが、今後はBYDが台数を大幅に増やす見通しです。これが中国市場の概要です。」


「次にEU市場を見ると、112万台のBEVが生産されており、全体の構成比は12.1%です。メーカー別の構成を見ると、フォルクスワーゲングループがトップで、続いてテスラが来ています。また、4位にはヒョンデグループが入っており、昨年だけで約30万台を販売しています。これがEU市場の特徴です。」


「アメリカ市場では、圧倒的にガソリン車が多いものの、BEVのシェアはすでに5.7%です。BEVではテスラが圧倒的なシェアで、4車種がすべて売れ行き好調です。そしてピックアップ系の2.5トン程度のBEVが増え始めていることが、アメリカ市場の特徴です。」


「一方、日本市場では、BEVがわずか5.8万台で全体の1.4%にとどまり、他国に比べて大幅に遅れています。」


◆FCEVで日本勢に先行するヒョンデ


また高原氏は、注目株としてヒョンデグループを挙げた。


「韓国のヒョンデについて言及しておきたいと思います。実はヒョンデは、電気自動車の歴史があり、すでに数年前から取り組んでいます。急に始めたわけではなく、まずはICEベースのBEVを開発し、その後BEV専用車を投入する戦略を採っています。評価も高く、販売台数も伸びているのがヒョンデの特徴ですね。


燃料電池車(FCEV)においても、ヒョンデ・ネッソとトヨタ・ミライが主要な車種になりますが、昨年1年間ではネッソがミライの3倍売れており、韓国では2年間で2万台が販売されました。一方で日本では、2年間でわずか3300台しか販売されておらず、韓国の水素社会の実現には遅れをとっています。


FCEVの中で最も売れている車は韓国製で、普及率も韓国が最も高いです。日本はこの意味で、大きく遅れている状況です。」


「実際にFCEVに乗った経験から、水素充填ステーションの普及が韓国では進んでいるものの、日本はまだ遅れており、充填ステーションが見つけられないことが課題です。また、既に改善されているかもしれませんが、調査の時点では日本のステーション営業時間が平日のみ9時から17時であることから、日本の取り組みが不十分だと感じられます。」


「大型車に関しては、日本は東京オリンピックに合わせてトヨタがSORAを出していますが、ヒョンデも2020年のスイスを皮切りに、ドイツやアメリカでもFCEVの大型トラックを販売しています。」


また高原氏は、BEVのように床下に水素タンクを置くパッケージが有望だと言及する。


「パッケージデザインにおいて、水素タンクを積む必要があるため、トヨタは毎回デザインを見直しています。しかし、これは非効率であり、BEVのように共通の下回りを利用しないと開発に時間がかかってしまいます。」


ステランティスは、すでに床下にタンク3本をフラットレイアウトした商用バンFCEVを発売しています。同時にタンクの部分にバッテリーを搭載したBEVも発売しています。FCEVとBEVのプラットフォームの共用化です。


この3月の東京での展示会では、フランスのタンクメーカ2社から、水素タンクのフラットレイアウトを狙った提案展示がありました。タンクのレギュレーションであるUN-R134の改定を見据えた新構造提案と読み取りました。戦略的に規則改訂を先取りしています。フランスがFCV開発で先行している状況が見えています。」


◆部品共通化でラインナップを広げるBYD


昨年のBYDの躍進とその背景について高原氏はこう説明する。


「BYDは、プラットフォームを共有しながら、王朝シリーズと海洋シリーズという2つのシリーズを出しており、非常に上手に取り組んでいます。日本では今後3車種を発売する予定であり、実際に横浜で3車種の比較を行ったところ、部品共通化とアッセンブリー方法の共通化が進んでいることが確認できました。


これにより、同じような製品を効率よく生産することが可能で、戦略的に進められています。上手に取り組めば収益率も上がる可能性があります。」


「BYDは、日本だけでなく欧州市場にも進出を始めています。現在、BEV市場で2位の地位にありますが、テスラが価格を下げたため、今後の順位は不確定です。ただし、値下げ前の状況から見ると、今年中に1位に逆転する可能性がありました。BYDが今後どのように市場で競争し、順位が変わるかは注目されるところです。」


◆トヨタの水素エネルギー戦略に注目


トヨタの動向について、高原氏は以下のように分析する。


「トヨタは車両だけでなく、エネルギービジネスにも力を入れています。例えば、BMWにフューエルセルを供給するほか、燃料電池を逆に使って水分解で水素を作る技術を開発しています。」


「さらに、車載、あるいは船舶への搭載や貯蔵用途の水素タンクのラインナップを用意しており、他社にも供給しているとのことです。今のところ台数は少ないですが、これも水素エネルギーの一環として展開しているようです。」


「トヨタがウーブンシティで水素エネルギーを活用する計画もあり、その近くでエネオスが水素ステーションを作成して供給することが予定されています。これらの動きから、トヨタは今後もエネルギービジネスに注力していくでしょう。」


高原氏が登壇するオンラインセミナー「EV・FCVのグローバル&日本の動向分析と新たなビジネス」は5月9日申込締切。セミナーの詳細はこちらから

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