【ホンダ フリード 新型試乗】モデル末期でも商品力は抜群!軽快さとコスパが光る…中村孝仁
レスポンス / 2023年5月21日 8時0分
◆日本車特有の5ナンバーミニバン
「ちょうどいい」をキャッチフレーズにホンダ『フリード』が投入され、そのTVCMにショーン・レノンが起用されたのは今からもう15年も前のことだ。
フリードは一応出るたびに試乗をしている。やはりサイズ感が日本の交通状況にあっていて、且つ最大7人が無理なく乗れるという非常に良いパッケージを持っているからである。
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2列シート5人乗りのケースは輸入車のライバルとしてルノー『カングー』やシトロエン『ベルランゴ』とその兄弟車たちが存在するが、3列シートになったライバル車は大きく全長を伸ばした結果、サイズ感が異なる。それにライバルと言ってもやはり輸入車はどれも車幅が大きく、フリードのように5ナンバーサイズに収めることはできない。だから、このコンパクトさと3列シートの取り合わせは日本車特有のサイズ感と言っても過言ではない。
勿論直接のライバルはトヨタ『シエンタ』である。シエンタは昨年フルチェンジされたばかり。一方のフリードはマイナーチェンジこそあったものの、基本的には2016年に誕生したモデルだからもう7年が過ぎたことになるわけで、やはりその分の遅れというか、古さは否めないわけである。
◆行き場を失った一世代前のハイブリッド「i-DCD」
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その最たる部分はハイブリッドのシステムであろう。フリードに搭載されるそれは「i-DCD」と呼ばれるシステムで、7速のデュアルクラッチトランスミッションとシングルモーターで構成される。この構成の狙いはコンパクト且つDCDを使うことでダイレクト感を演出でき、要は走りの性能を引き上げることができるという点にある。ところが、モーターを二つ搭載し、発電用と走行用にモーターの役割を振り分け、トランスミッションにはCVTを用いた最新のハイブリッド「e:HEV」が登場したことで、i-DCDは言わば行き場を失った感じになった。
確かにファントゥドライブではあるものの、燃費は明らかに向こうが上。それに走りも十分にi-DCDの領域と言ってよいわけで、こうなるとi-DCDの出番はなくなる。つい先日試乗したe:HEVの『ZR-V』は、4WDで車重が今回試乗したFWDのフリードよりも200kg重いにもかかわらず、WLTCの燃費では21.7km/リットル対20.9km/リットルでフリードが負けている。これが4WD同士になればその差はさらに開くわけで、こうなるとi-DCDにオワコンイメージが漂ってしまうわけである。
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とはいえ、このシステム自体とてもスムーズに動くしデュアルクラッチの悪癖である渋滞時などのギクシャク感も希薄だから、本当は十分に良い点が付けられるのだが、ホンダは自社でCVTを改良して素晴らしいものを作り上げているから、その分のコンパクトさも含めて時代がe:HEVに突入したということだと思う。
◆運動性能を案外楽しめるミニバンに仕上がっている
もう一つ時代かなぁと感じさせたのは3列目シートの折り畳み方式である。まああちらはメカニカル4WDが存在しないから自由な構造を作れるのだと思うのだが、シエンタは2列目シート下に3列目シートをダイブダウンさせる方式。対してメカニカル4WDを考慮しなくてはならないフリードは左右に跳ね上げる方式を取っている。これも時代感が漂う。この点は同じホンダでも『ステップワゴン』とは大きくコンセプトが分かれる部分である。
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それでもフリードの軽快な動きはとかく、運転手になりがちなオトーサンにとってはハンドリングというか運動性能を案外楽しめるクルマに仕上がっていると感じるのでミニバンと言ってもチョイスはしやすいのではないかと思う。
今回試乗したモデルはマイナーチェンジして若干装備を充実させた点に加え、ホイールやサイドミラーを黒で統一した特別仕様の「ブラックスタイル」というモデル。輸入ライバルでは絶対に真似のできないパワースライドドアを標準装備しても、価格は一番高いモデルで291万9400円(4WD、6人乗り)。試乗したFWDは275万4400円で購入できるから、輸入ライバルとの差は100万円以上あることになる。まあトヨタ・シエンタとはいい勝負である。
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◆次期モデルは今夏登場?電動四駆はあるか
モデル末期となってもいまだに市場1位を争うモデルであるフリード。次期モデルが早ければ今年夏にも登場するといわれているが、e:HEV搭載はほぼ確定的。あとは4WDシステムを電動四駆にしてスペース効率を高めてくるか否か。売れ筋車なだけに興味が尽きない。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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