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【スバル インプレッサ 新型試乗】“隠し味”を嗅ぎ分けられるユーザーには確実に響く…中村孝仁

レスポンス / 2023年5月24日 21時30分

◆隠し味の性能を嗅ぎ分けられるユーザーに確実に響く


まだ登録が済んでいないプロトタイプの試乗だったから、クローズドサーキットでのほんの味見程度の試乗ではあるが、最近のスバルは本当によくできていると思う。


『間違いだらけのクルマ選び』という有名な本が出版された1970年代には、クルマ選びがなかなか難しい側面があったのは事実。しかし今、滅多なことでクルマは壊れないし、性能だって救い難いクルマなど皆無。となると一体何をもってクルマ選びをしたら良いかは逆の意味で実に難しい側面がある。


端的に言ってしまうと、とにかく「経済的に走って家族が乗れれば良い。あとは安ければ…」というどちらかというと白物家電的なクルマ選びのユーザーはともかくとして、性能で差をつけるのは一筋縄ではいかない時代であるからだ。前にも記したことがあるが、隠し味的なフレーバーをきっちりと嗅ぎ分けられるようなユーザーだと、スバルというクルマは俄然高評価になるのではないかと思う。


前述した経済的に走って…云々という人にとってはスバルは対象外かもしれない。というのも決して褒められた燃費性能を示さないからである。先進性を求める人にも例えばEV化は遅れ気味で、今回投入されたのも純ICE車とeボクサーの名を持つハイブリッドの2種で、PHEVなどの設定はないなど、あまり響かないかもしれない。


しかし、隠し味の性能を嗅ぎ分けられるユーザーにはスバルは確実に響く。新しい『インプレッサ』も、基本プラットフォームが変わっておらず、スタイルもデザインコンセプトをそのまま引き継いでいるから正直先代と見た目は代わり映えしない。ところがいざ乗ってみるとその進化ぶりに目を見張らされる。何故かというと、細かい改良の積み重ねで確かな進化を遂げているからである。


◆電動パワステ、高減衰マスチック、シート形状&構造の恩恵


まず以前『レヴォーグ』に乗って感心させられたのが2ピニオン仕様の電動パワーステアリングである。今回はそれをインプレッサにも採用した。つまり上級モデルで使う贅沢な装備を採用したというわけである。電動パワーステアリングなんて、どれも基本は一緒でしょ?という質問に対しては「確かにその通り」。でもその切れのスムーズな点は例えて言うなら切れ味の良い包丁と、切れ味の悪い包丁で切った時のあの感覚の違い、と言えば解っていただけるだろうか。


高減衰マスチックという新たな接着材の採用も細かいながら確かな進歩だ。これは弾性接着剤と呼ばれるもので、通常の接着剤とは異なり硬化後でも柔らかいゴム状の状態を保つもの。これをルーフの接着に使用し共振を防止することで音の収束性を高め、静粛性に貢献。驚くことに乗り心地にも効果があるのだそうだ。


さらにはシートの形状や取り付け構造を見直し、体をしっかりと支えるようにしている。シートだって、とりあえず座れれば良いというわけではない。本当は疲れにくかったりサポート性能がしっかりとしたものが良いわけで、そんなことは言うまでもなく、さらにその上を目指したクルマというか乗り味の作り込みをしている。


◆最上級グレード「ST-H」にサーキットで試乗


今回試乗したのはこのうち最上級のeボクサーエンジン搭載の「ST-H」というグレード。兄弟車ともいえる『クロストレック』同様、FWDの設定も誕生し、従来からのAWD共々試すことができた。


さらに旧型の「アドバンス」グレードのAWDも比較試乗してみたのだが、如何せんサーキットではそれらしく走らせてみたところで、例えば一般道とは路面の質からして異なるし、必要なところにパイロンを設けてスピードを抑え込むなどしてみたところでやはりスピードは一般道よりもはるかに高くなってしまう。


そもそもeボクサーの良いところはサーキットでは味わえないが、高速性能の良さと2ピニオンの電動ステアリングにより確実でスムーズなステアフィール、そして新しいシートの形状と取り付け剛性の高さなどは体感することができた。


エンジンについてはすでにクロストレックで体験済み。パワーは必要十分だが2リットルエンジンとしてはまあ平均的パワーと言ったところで、先代まであった高性能版のSTIやSTIスポーツが現状ではラインナップされていないので、高性能は次の段階で登場するのかもしれない。いずれにしても公道で乗れるようになった時にじっくりとレポートしよう。


◆国産Cセグメントの割安感は非常に魅力的


クロストレックでもその価格のリーズナブルさは印象的だった。インプレッサも同様で、ガソリンエンジンのベースグレードは229万9000円から。そして最も高いST-HのAWDモデルが321万2000円である。


輸送費が高騰して輸入車の値段がどんどん高くなる現状では、国産Cセグメントの割安感が非常に魅力的になって来た。


■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★


中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。

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