北海道初の国鉄電気機関車が解体へ…PCB汚染疑いのトランスに処分期限が迫る
レスポンス / 2023年6月8日 19時21分
北海道小樽市は6月6日、2023年度一般会計補正予算案を発表し、小樽市総合博物館のPCB廃棄物処理関係経費として3839万6000円を計上したことを明らかにした。
■北海道電化時の電気機関車2両にPCB疑い
鉄道では、交流または交直両用車両に交流2万ボルトの電圧を降圧する主変圧器(トランス)が搭載されている。トランスには絶縁のために油(絶縁油)が使われているが、1953年から1972年に国内で製造されたトランスには、絶縁性が高いとされているポリ塩化ビフェニル(PCB)と呼ばれる油が使われていたものがあるとされている。
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北海道にゆかりのある歴史的な鉄道車両を展示している小樽市総合博物館では、1968年8月の函館本線・小樽~滝川間の電化に備えて登場した交流電気機関車のED75形501号機(ED75 501)とEF76形509号機(ED76 509)の2機が相当し、このうちED75 501は1963年の常磐線の平(現在のいわき)電化を機に誕生したED75形電気機関車をベースに、北海道向けに耐寒耐雪仕様とした試作的な車両で、北海道初の国鉄電気機関車として1966年に登場。1986年に廃車後、準鉄道記念物に指定されている。
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ED76 509はED75 501の量産車的な位置づけで1968~1969年に登場したED76 501~522のうちの1両で、北海道三笠市の三笠鉄道村幌内ゾーンには僚機のED76 505が展示されている。
ED75は暖房に使用する蒸気発生装置(SG)を持たなかったため、電化後はおもに貨物列車で運用。旅客列車ではもっぱらSGを持つED76が運用され、JR移行後の1994年に引退している(ただし1989年に青函トンネル用にED76 514を改造したED76 551は2000年まで存続)。
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■問題視されたPCBの毒性
PCBは無色透明で微臭、水より重いことが特徴で、国内では1954年から製造されているが、1968年に発生したカネミ油症事件では工場の熱媒体として使用されていたPCBが製造していた食用油に混入し大規模な食中毒を起こしたことで社会問題化。1972年には当時の通商産業省が行政指導として、PCBの製造中止や回収などの措置を採り、1974年には製造、輸入、新規使用が原則禁止されている。
そのため、1975年から運行を開始した北海道初の電車特急『いしかり』では、非PCBのトランスを搭載した車両の製造が間に合わず(1979年に781系として登場)、やむなく485系特急型電車を耐寒耐雪構造とした1500番台を投入して凌いだという経緯がある。
PCB禁止後は焼却によるPCB機器の破棄が企図されたが、処理施設建設が難航。2001年には世界的な環境保全を目的としたストックホルム条約が採択され、2028年までのPCB廃棄物処分を行なうとされたことから、日本ではPCB廃棄物特別措置法(PCB特措法)が制定され、翌年に条約を締結し、化学処理による処理施設の整備に着手。2016年にはPCB特措法の改正により処分期間が前倒しされ、PCB廃棄物の処理が促進された。
以来、PCB使用疑いがある交流電気機関車の解体が急速に進み、最近では2022年1月に宮城県利府町の森郷児童遊園で保存されていた国鉄交流電気機関車の元祖的な存在であるED91形電気機関車11号機が解体されている。
■変圧器取り出し後の復元に難か
小樽市総合博物館のED75とED76は歴史的に価値がある電気機関車ではあるが、北海道内のPCB廃棄物処理施設である室蘭環境プラントサービスにおける最終処分期限が2024年3月31日に迫っていることもあり、小樽市では解体を決断した。
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解体とされたのは、トランスが中央部に内包されているため、取り出すには専門的な知識や手間を要し、取り出した後の復元も困難であることが要因のようだ。処分場までの陸送費用も莫大で、保存継続を前提に復元するにしても、さらにその費用が嵩むことになる。財源に乏しい小樽市としては「ない袖は振れぬ」というのが現状のようだ。
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すでに、ED75 501やED76 509の周囲にはバー付きのカラーコーンが置かれており、接近して見学できない状況となっている。報道によると解体時期は8月とされており、6~7月が見納めとなる模様だ。
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