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北海道新幹線の仮称・新小樽駅が着工…トンネルに挟まれた新幹線最北の駅 6月10日

レスポンス / 2023年6月12日 16時30分

独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)は6月10日、北海道新幹線の仮称・新小樽駅の起工式と安全祈願祭を行なった。


■東西に狭隘なスペースに建つ駅


同駅は、倶知安方の後志(しりべし)トンネルと札幌方の朝里トンネルに挟まれた小樽市天神地区に設けられる高架駅で、新函館北斗~札幌間では新八雲駅(北海道八雲町)と同様に新幹線単独駅となる。


新函館北斗~札幌間は全長211.9kmのうちほぼ8割がトンネルで、新小樽駅が位置する倶知安~札幌間に至っては9割近くになるが、そのなかにあって小樽市内では新小樽駅の200m区間と朝里トンネルを抜けた朝里川温泉地区の160m区間が、車窓に風景が広がる貴重な「明かり区間」となる。


この季節にはひぐらしの大合唱が聞こえるほどの山間に位置するが、北側にはいかにも場違いな北海道横断自動車道(後志自動車道)の高架橋が伸びており、そちらが新幹線の高架橋ではないかとついつい錯覚しそうになる。


駅舎は札幌方を流れている勝納川を跨ぐように建てられる。その点は創成川を跨ぐように建てられる札幌駅と似ているが、新幹線の保守基地が併設されることになっており、トンネルに挟まれた狭隘な地形に東西がぎりぎり収まるレイアウトになりそうだ。しかも周辺は住宅が点在していることから、高架下に当たる数軒は立ち退きを余儀なくされるという。


とはいえ、高架橋の高さが約14mあるため、鉄道・運輸機構では駅から小樽市街をじゅうぶん見渡せるとしており、南北に関してはかなり余裕を持ったレイアウトになりそうだ。


今回の着工は駅部の基礎となる高架橋建設に関してで、現場を統括する鉄道・運輸機構の川端一史小樽鉄道建設所長によると、その片鱗が現れるのは2024年の夏頃になるのではないかという話だったが、その頃には、小樽市にとって縁遠いと思われていた新幹線を急速に身近に感じるようになるのかもしれない。


なお、新小樽駅を挟むトンネルは6月1日時点で西側の後志(しりべし)トンネル(延長18.0km)が掘削率約74%、東側の朝里トンネル(延長4.3km)が掘削率82%となっているが、朝里トンネルの新小樽方坑口はまだ姿を現していなかった。


■小樽に新幹線の駅ができるのは「箕輪先生のおかげ!?」


記念式典と安全祈願祭は駅建設現場で開かれ、国土交通省や鉄道・運輸機構の幹部、迫(はざま)俊哉小樽市長、小樽市や北海道ゆかりの国会議員、綿貫泰之JR北海道社長らが挨拶に立ったが、北海道は副知事が出席し、鈴木直道知事は姿を見せなかった。


このうち迫市長は、この秋に鉄道・運輸機構から示される駅舎デザイン案に触れ、新小樽駅の利用像について市民や関係者の関心を高める取組を着実に進めていきたいと述べた。


また、国会議員では鈴木宗男参議院議員が北海道新幹線が小樽経由のルートに決まった経緯について触れ、1973年の整備計画決定時に当時の田中角栄総理大臣が、自民党田中派所属の衆議院議員で防衛政務次官だった故・箕輪登氏が小樽を地盤に持っていたことを考慮してツルの一声で決めたと、鈴木氏ならではの「宗男節」で披露。過去の偉大な政治家の存在を忘れないでほしいと述べた。


一方、北海道新幹線の運行を担うJR北海道の綿貫社長は、新小樽駅の開業を機に国内外へ向けて小樽や後志地区の魅力をしっかり発信したいと述べ、インバウンド需要の喚起を強調していた。


今後のスケジュールについては、2022年5月に小樽市が鉄道・運輸機構に要望していたデザインコンセプト「浪漫が薫る 温もりと心地よさを感じる駅~まちの記憶を未来へ~」に基づいた駅舎のデザイン3案を2023年秋に小樽市へ提示。2024年度第1四半期頃には小樽市が選定したデザインを鉄道・運輸機構へ回答することになっており、駅舎の工事は基本設計と実施設計を経て、2026年度以降に着手される予定だ。


高架橋工事は2026年度以降も続く予定で、川端所長は、後志トンネルの一部、朝里トンネル、札樽トンネルの一部を受け持つ小樽鉄道建設所管内は短い明かり区間2つがあり、2本の川や4本の道路と交わることから難易度が高い工区ゆえに、地域の理解や自治体の協力を得ながら工事を進めることが重要だと述べた。


■区間列車が停車本数確保の鍵に


北海道新幹線の札幌延伸開業は、予定どおりであればあと8年足らずだが、新小樽駅は小樽市にとって新たなまちづくりのキーとなるだけに、停車本数が気になるところだ。


在来線と接続しない新幹線単独駅であることや、小樽運河や小樽港などが集まる小樽市中心部からバスで15分程度を要することがネックで、在来線の小樽駅と比べると利便性の点で不利であることは否めず、小樽市は当初、乗降客数を1日あたり約1600人、片道1日あたりの停車本数を13本と推計していた。


これは1時間あたりにして1本停車するかしないかという計算だが、これでは利用者が少ない悪循環を招き開業効果が限定的であるとして、2023年3月には乗降客数を約2500人、停車本数を22本とする戦略的な目標を策定している。


乗降客数については、他の新幹線単独駅の乗降客数と運行本数の相関に当てはめた結果としており、停車本数は札幌駅に発着する上下各25本のうち88%が停車するというかなり強気な目標となっている。


この目標を達成するには、東北新幹線への直通列車のほかに、東北新幹線内のダイヤの影響を受けにくい新青森~札幌間の区間列車の設定が欠かせないと見ており、小樽市では3月、国土交通省が2012年2月に公表している「投資効果及び収支採算性に関する詳細資料」をベースにして独自にダイヤを想定。列車種別を最速達、緩行、区間の3つに分け、緩行列車と区間列車で停車本数を稼ぎ、緩行列車は新函館北斗駅で最速達列車と接続するダイヤとしている。


区間列車については北海道新幹線が対本州のみならず、函館や青森との結びつきを強くする効果もあるとしており、北陸新幹線・富山~金沢間で運行されている『つるぎ』を想定している。


とくに函館は、北海道観光になくてはならない存在であり、現在も特急『北斗』が11往復運行されていることを考えると、区間列車の設定はあながち夢物語とも思えない。


ただ、函館をターゲットとすると、現行では新函館北斗駅での在来線接続がネックになることは否めない。仮に西九州新幹線武雄温泉駅(佐賀県武雄市)のような対面乗換えが可能になったとしても、大きな荷物を抱えたインバウンド客に訴求できるかどうかは不透明だ。


函館市の大泉潤市長は、北海道新幹線の並行在来線となる新函館北斗~函館間にも新幹線を走らせることを選挙公約に掲げ、調査費を計上する構えを見せているが、この動き次第で区間列車の想定もかなり影響されることになるだろう。


それだけに、函館への新幹線延伸は大きな意味を持つ。函館市では地元財界で延伸に反対する意見が根強いと聞くことから、北海道新幹線沿線自治体共通の利害という観点では、何らかの形で後押しをすることが必要ではないかと思われる。それには広域自治体である北海道のイニシアティブが不可欠であるが、そのような積極姿勢は現在のところ見られていない。


■駐車場を目玉にパーク&ライドで誘客


小樽市が想定する片道22本を確保するためには利用者数がある程度担保されなければならないが、新小樽駅が中心部から離れていることがネックとなり、このままでは本州方面への直通といった限定的な使われ方になるだろう。そこで小樽市では、パーク&ライドで誘客する構想も示している。


札幌駅周辺は駐車料金が高額で満車になる確率も高い。そこで、札幌や小樽へほぼ等距離である札幌市手稲区や石狩市あたりから、駐車料金が安く整備も行き届いている新小樽を利用してもらおうというわけで、新小樽駅周辺に300台収容可能な駐車場を整備する構想が挙がっている。


また、反対側のニセコ方面への観光でも、近年、外国人の定住で地価が高騰している倶知安町やニセコ町周辺に泊まるより、比較的安価な小樽をベースに新幹線で移動してもらおうという考えもあるようだ。


なお、新小樽駅は改札口前の床面積の少なさが想定されることから、小樽市では駅舎内に一定規模の付帯設備用スペースの確保を鉄道・運輸機構に要望するとしている。


付帯設備については、観光案内所や二次交通に関する施設、コインロッカーなどのスペースが想定されており、物販施設については当初、低い利用者数の想定では業者の利用を担保できないとして外されていたが、3月に示された最新の案ではコンビニエンスストアの設置が盛り込まれており、新幹線駅で飲食物などが手に入らないという事態は回避されそうな模様だ。


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