鳥取砂丘は月面? 実証フィールドが完成、ブリヂストンの探査車などがデモ
レスポンス / 2023年7月8日 11時0分
鳥取県が鳥取砂丘エリアで整備していた「鳥取砂丘月面実証フィールド」および「建設技術実証フィールド」が完成し、7月7日にオープニングセレモニーを実施した。屋外での月面実証フィールドは日本初。セレモニーでは月面探査車試験車や開発中の惑星ローバーがデモ走行した。
■鳥取砂丘月面化プロジェクト
鳥取県は、国内外で宇宙産業が成長することを見込んで、県の産業の成長軸のひとつとして「鳥取県に宇宙産業を創出する」というチャレンジを進めている。そのために取り組む「鳥取砂丘月面化プロジェクト」の一環として、実証フィールドを整備した。施設の愛称は公募で「ルナテラス」に決定した。月面開発に取り組む国内外の企業・研究者が集まり、交流する拠点になることをめざす。
所在地は鳥取県鳥取市浜坂、鳥取大学乾燥地研究センターの敷地内、面積は約0.5ha。国立公園外ではあるが、鳥取砂丘の現地にある砂をそのまま活用しているのが特徴だ。フィールドは潜在ユーザーの声をもとに設計した。月面環境を想定した実証実験を行うための平面ゾーン、斜面ゾーン(5~20度ていど)、自由設計ゾーン(利用者が自由に掘削・造成可能)から構成される。アルテミス計画など月面探査に参画する国内外の企業・研究機関による実証実験の拠点化をめざす。
建設技術実証フィールドは鳥取砂丘月面実証フィールドに隣接しており、面積も同じ約0.5haだ。鳥取県の基幹産業である建設産業について、先進技術の導入による生産体制の革新と、それを担う人材育成、生産性の向上をめざす企業支援を行なうために、フィールドは整備された。3次元測量設計やICT建機操作など、県内企業の技術研修などを実施する予定だ。
■とっとり浜坂デジタルリサーチパーク構想
鳥取砂丘月面実証フィールド/建設技術実証フィールドの整備は2021年に動き出した。鳥取大学が浜坂キャンパスを大学・企業・自治体の連携拠点とする「とっとり浜坂デジタルリサーチパーク構想」を計画したことが始まりだという。鳥取砂丘西側エリアの敷地に技術検証のためのフィールドを整備する検討を開始した。
その後、宇宙産業創出に向けた鳥取県の「鳥取砂丘月面化プロジェクト」の活動拠点としても最適と考えられたことから、鳥取県と鳥取大学との合同プロジェクトとして2023年度から整備が本格的に始動した。2022年12月にフィールド整備に着手し、2023年6月末に完成した。
今後は、完成した鳥取砂丘月面実証フィールド/建設技術実証フィールドを拠点に、鳥取県から様々なイノベーションに関連した話題を全国に提供していく予定だ。

■月面を走る金属製タイヤ、学生は火星をめざす
7月7日にオープニングセレモニーでは、各フィールドを活用したデモンストレーションを実施した。
鳥取砂丘月面実証フィールドでは、ブリヂストンが月面探査車向けタイヤの走行試験を行なった。月面には大気がなく、温度が120度からマイナス170度まで変化する環境では、ゴムや樹脂が使えないため、スプリング構造を持つ金属製タイヤを試作し、実証試験をした。
ブリヂストンはこれまでにも、鳥取大学乾燥地研究センターの協力を得て、鳥取砂丘(同センターの圃場)でEV計測車両を用いた実証試験の実績がある。このほど鳥取県内企業との協業により、牽引式走行試験も新たに開始する計画だ。
鳥取砂丘月面実証フィールドでは、ARES(アレス)Projectが開発中の惑星ローバー(探査車)を走行させた。アレスは、火星探査機の学生世界大会「University Rover Challenge(URC)」に日本チームとして初の出場をめざすチームであり、東北大学、慶應義塾大学、東京大学,筑波大学の学生が所属している。
■自律飛行ドローンやICT建機がデモ
建設技術実証フィールドでは、WorldLink&Company(SkyLink Japan)がドローンの自律飛行を実演した。橋梁や高架のハイピア(高橋脚)など、近接目視が困難な場所の点検に活用されている自律飛行型ドローンで、障害物を自動回避することができる。
鳥取砂丘月面実証フィールドでは、テクノレンタルとコマツカスタマーサポートがICT建機による法面施工を実演した。事前作成した3次元施工データをICT建機(マシンガイダンス)に入力し、施工(ICT施工)の実演を行なった。
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