【プジョー 408 新型試乗】「クラウンの先見性」を実感せざるを得ない、新たなスタンダード…中村孝仁
レスポンス / 2023年7月8日 12時0分
◆ハッチバックとSUVのクロスオーバー
プジョー『408』がデビューした。プジョーにおける伝統的な車名のつけ方からすると、このクルマはこれまでと少し違う。
そもそも3桁の数字で真ん中に0をつける車名こそ、プジョーが戦前から使っている伝統的な呼称。ところがその伝統に変化が生じたのが2004年の『1007』からである。数字が4桁になって間のゼロが一つ増えた。プジョー的な説明ではSUVやMPVのようなモデルにこの名を使うとしていた。
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そして既存のセダンやハッチバックについては従来通りの3桁の車名を使うということだったのだが、最新の408はどう見てもセダンにもハッチバックにも見えない。これまたプジョー的な説明ではこれまでのクロスオーバーとは異なり、ハッチバックとSUVのクロスオーバーなのだそうだ。余計な突込みを入れるなら、ならば4桁の車名でも良かったのでは?となるわけだが、まあ素直に額面通り受け止めることにする。
それにしても世の中とにかくSUV全盛である。上方向に延びたことで大した床面積でなくてもゆとりある室内空間が作れて、利便性が高く、何よりも目線の高い着座位置が運転のし易さ、視界の良さを生む。
サイズ的に見ても同じプジョーの『3008』と社内競合してしまうのではないかという危惧に対し、プジョージャポンの説明では夫婦でディーラーに訪れて旦那さんはそのスタイルの良さから408を欲しても、目線の高さで奥様は3008というケースがあるから、それなりに棲み分けができているらしい。まあ、夫婦は喧嘩になるかも…だが。
◆クラウンの先見性を感じさせるスタイル
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それにしてもこのスタイル。個人的には実にトヨタ『クラウン』のクロスオーバーによく似ていると思うのだがどう感じるだろうか。ここでは何も似ている似ていないの論議をしたいわけではなく、ひょっとするとこれがデザインの最新トレンドになるかもしれないのではないかという話をしたいのだ。
SUVは便利だけれど、スタイリッシュではない。というわけでドイツのメーカーを中心に無理矢理猫背にしたクーペ風SUVが矢継ぎ早に出た。だが、それに食いついたかというと広がりはない。そこで、多少目線は低くなってもよりスタイリッシュなデザインができないものかという試行錯誤から、このクーペ風ながらバランスの良いデザインに行き着いたのではないかと思うわけである。その意味でクラウンの先見性は高いと思う。
実は車高は408が全高1500mmであるのに対し、3008は同1630mmと130mmも高い。最低地上高は3008の175mmに対し170mmと大差がないから、実は408の目線はかなり低い。実際に乗ってみてもほぼほぼセダンに近い印象である。一方でホイールベースは408の方が115mm長く、実はこれによって後席のレッグルームが3008と比べるとかなり長いそうで、リアに人を乗せるケースでは明らかにこちらが上である。
◆既存や伝統にとらわれない新たなスタンダード
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今回試乗したモデルは1.2リットル3気筒ターボを搭載する「GT」というグレード。純然たるICEエンジン搭載車である。因みに408にはディーゼルの設定は本国にもなく、今後も追加の予定はないそうだ。
比較的大柄なボディなので、性能的な物足りなさを懸念したが、一般道を流れに乗って走る限りは不満はない。しかし、加速については所定のスピードに引き上げるのに少し時間がいる。とりわけこのところ120km/h区間が多くなった高速では、この100km/hから120km/hまで引き上げるのに少し物足りなさを感じるかもしれない。因みに車重は意外と軽い1430kgである。
インテリアはiコックピットをさらに進化させているが、基本デザインは『308』と同じである。メーター内の視認性やデザインのセンスなどは独特で、個人的にはとても好感が持てるデザインである。そして静粛性やどっしり落ち着いた走行感覚はやはり見習う点が多く、特にフランス車の運動性能と乗り心地の絶妙な落としどころは非常に優れていて、どちらにも不満がない。
まあ、車名に関する伝統はそろそろ無理が生じているので既存や伝統にとらわれない新しいものを模索する方が良いと思うが、そのスタイリングと空間演出は既に伝統を打破し、新たなスタンダードを作りつつある気がする。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★
フットワーク:★★★★★
おすすめ度:★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来45年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。
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