S耐の現場で浮き彫りになった、カーボンニュートラル燃料の課題と各社の戦略
レスポンス / 2023年7月15日 8時0分
7月8~9日、宮城県のスポーツランドSUGOで開催されたスーパー耐久シリーズ第3戦。そこではトヨタ(GAZOO Racing)とスバルが使用するカーボンニュートラル燃料(CNF)が改良されたことが明らかになった。CNFの課題、そして各社の戦略の違いとは。
◆市販のハイオクガソリン並みの性能へ
2022年からトヨタの#28 ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptと、スバルの#61Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptは同じCNFを使いレースを行っている。
化石燃料ではなく、バイオマス由来の合成燃料を使っているが、今回の第3戦SUGOより改良版のCNFになったという。GRパワトレ開発部の小川輝主査は「従来の燃料ではオイルダイリューションが起きていることでいろいろと問題があった。今回改良版になったことで改善されたところもある」という。
従来のCNFでは燃料がシリンダー内で燃え切らず、シリンダーとピストンの隙間を通りエンジン下部にあるオイルパンの中に入り、オイルが希釈されてしまう、いわゆるオイルダイリューションと言われる現象が起きる。
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これによってオイルが水っぽくなり、油膜が切れやすくなったり油圧が出にくくなってしまい、エンジンにとって良く無い現象が起きてしまう。オイルに燃料が混ざり油面が上昇することで、クランクやコンロッドがオイルを叩き、白煙なども出やすくなるという。さらに、「燃えにくい」ということは「燃費が悪くなる」ということで、改良が求められていたのだ。
そこでGAZOO Racingとスバルは研究や検証を重ねた。レースだけでなく、市販車でも将来CNFが使用できることが目標だ。レースの現場から市販車に向けた開発をおこなうという参戦意義の根底に繋がっていく。
CNFの製造元であるP1フューエルとも研究を行い、市販されているハイオクガソリンの特性に近い領域まで性能を引き上げることが可能になったという。
◆マツダも参画、ホンダは独自路線、CNF戦略の違い
#28 ORC ROOKIE GR86 CNF Conceptは1.4リットル直列3気筒エンジンを使用している。一方の#61Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptは2.4リットル水平対向エンジンを使用しており、ターボとNAの違い、さらに直列エンジンと水平対向エンジンという機構の違いによるオイルの垂れ方なども違うという。
#61Team SDA Engineering BRZ CNF Conceptの本井監督に聞くと、「今回の燃料はかなり良い結果が出ています。水平対向エンジンでも、燃料がオイルパンに落ちる現象はあり、オイルが希釈されてしまう部分に苦労はしています。しかし長年、水平対向エンジンでオイルに燃料が混ざることは相当研究されています。そこの蓄積が今に生きていて、オイル混ざりが少ないのではと思います」と言う。
GRパワトレの小川主査はこれに止まらず、「ターボの86、水平対向のBRZという他に、NAのエンジンでも研究を行いたい」と考えており、マツダがこの研究に参画する。
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マツダはST-Qクラスに#55MAZDA SPIRIT RACING MAZDA3 Bio conceptを走らせており、ユーグレナ製のバイオディーゼルでレースに参加している。マツダは今夏から『ロードスター』をST-Qクラスに参戦すると発表しており、このロードスターがGR86、BRZと共にCNFの未来に向けて走り出す。
GRパワトレの小川主査とスバルの本井監督は「今のインフラがそのまま使える、市場を出回っている車両にも使える燃料の開発という意味で、共挑S耐ワイガヤクラブ(S耐に参戦するカーメーカー5社による垣根を超えた取り組み)内でも各社さんと話し合って満場一致でやっていきましょう、という流れになっています。ライバルが増えると大変な部分もありますけど、いろいろなデータが出てくるという点では良いことだと思います」と話す。
ホンダも今シーズンからST-Qクラスにて#271 CIVIC TYPE R CNF-Rを走らせている。こちらはスーパーGTと同じハルターマンカーレス社製のCNFを使用しており、独自路線を行く。燃料という観点からレースを見るのも面白い。
![](https://response.jp/imgs/zoom1/1908281.jpg)
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