【現地取材】EV普及で急速に伸びるサスペンション需要、TEINが睨む中国市場の可能性と強み
レスポンス / 2023年8月2日 8時0分
日本においては車高調整式サスペンションの大手メーカーとして知られているTEIN(テイン)は、純正形状サスペンション「EnduraPro」シリーズの開発・販売により、中国・東アジアで売上を伸ばしている。
そのグローバル展開の中核となる工場は2015年7月、中国の宿遷市に開設した「天御減振器制造(江蘇)有限公司」で、広がる市場に対応すべく数多くの施策を行っていた。
官民一体となった補助金政策・インフラ整備により、中国におけるEVシェアは年々上昇しており、2022年の販売台数は約620万台で2026年にはガソリン車を追い抜くと予想されている。実際に取材を行った宿遷市、上海市の街中では新エネルギー車(EV/HV)の証である緑色のナンバープレートを取り付けた自動車をたびたび確認し、中国におけるEVの普及を体験することができた。
しかし、加速力や充電性能、ビジュアルでユーザーを魅了する新興メーカーの手がけるEVが人々の心をつかみ、社会に浸透しつつある一方で、ガタガタ感や突き上げ感の強さといった乗り心地の改善を求めるユーザーの声が多いそうだ。特に中国ではお金、家族とともに他者への「面子」を重要視する価値観があり、要人や取引先の重役を後部座席に搭乗させた際に新興EVメーカーの居心地の悪さを指摘する声が多く、EVにおける乗り心地改善のニーズを背景にTEINのEnduraProシリーズが必要とされている。
EVの推移予測、EnduraProシリーズの売上グラフを見比べると、EVの販売台数の増加に伴って、EnduraProも着実に売上を伸ばしており、特に2021年から2022年における相関は顕著である。新興EVメーカーを含むEV販売台数が中国国内で増えるほどEnduraProが売れるという仕組みができている要因には、アフター専業であるTEINの強みがあった。
通常OE供給をしている他社アフターメーカーでは、供給メーカー以外の設定に対して苦戦を強いられることが多く、市場のニーズに対して開発が遅れてしまうという難点があるが、TEINは過去に4000車種以上のサスペンション開発に伴い醸成されたノウハウとアフター専業であることの生産スピードで、“今”人気の車の純正形状サスペンションを最短3か月で設計・製造し自動車販売市場における流行に的確な“レスポンス”を出し続けているのである。アフター専業のTEINならではのビジネスモデルであり、新興EVメーカーの乗り心地が改善されていかない限り、EnduraProシリーズは市場に求められ売上を伸ばし続けることが想定される。
中国で着実に販売実績を伸ばしているTEINは、今後のグローバル戦略において人口が減り続ける日本市場ではなく、東アジアや欧州を土俵にした展開を考えており、特にインドやASEAN地域といった自動車産業の発展が著しい地域での販売を目指し、ASEAN工場、インド工場、欧州工場といった拠点を増設計画があるという。
特に中国EVメーカーの参入が著しい東南アジアでは路面の悪い地域も多く、乗り心地を改善出来る純正形状サスペンションのニーズはあるだろう。拠点の増設に伴い、現在650車種のEnduraProシリーズを2030年までに3000種に増やすことを目標に掲げ、“地産地消”をテーマに市場のニーズに合わせてスピード感を持った販売戦略を行うことで2030年までに売上100億円を目指すそうだ。
<取材協力:TEIN>
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