停電時に家族と愛犬の命を守るには?…クルマでの避難が選択肢の一つに【青山尚暉のわんダフルカーライフ】
レスポンス / 2023年8月31日 12時30分
今年の夏、各地で台風や豪雨による停電被害が頻発している。合わせて、災害の有無にかかわらず、家の中で熱中症になり、命を落とす悲惨なニュースも飛び込んでくる。
猛暑の中、家のエアコンが使えなければ灼熱地獄となり、1年中毛皮を着ていてその多くは暑さに弱い愛犬の、死に至ることもある熱中症もまた心配だ。
そんな緊急事態に“愛犬ファースト”として大活躍してくれるキャンピングカーは理想的だが、誰もが気軽に所有できるわけではない。
◆ハイブリッド、PHEV、BEVはクルマが発電所に
しかし、一般的なクルマでもエアコンが付いているから、一時的な家族と愛犬の避難場所になりうるのはもちろんだ。3列シートのミニバンならシートをフルフラット化して車内をお座敷化、ベッドルーム化するアレンジも可能だし、ワゴン、SUV、軽自動車でも車中泊が可能で、緊急時の一時避難場所として活用できる車種は少なくない。車内ではラジオ、TVで情報収集ができるし、スマホの充電も可能となる。
ハイブリッド、PHEV、BEV(電気自動車)であれば、クルマが発電所となり、車種によっては家に給電することも可能で、停電時でも家の中の照明や扇風機などを稼働させることもできるだろう。そのためにも、日ごろから愛車の燃料満タン、電動車であれば満充電を心がけておくと安心だ。
とくにPHEVはバッテリーに余裕がありエンジンも搭載されているため、停電時には助かる。例えば悪路にも強いSUVの三菱『アウトランダーPHEV』の場合、満充電の状態でエンジンでの発電も組み合わせれば、ガソリン満タンで一般家庭の最大約12日分の電力量が供給可能だ。※ただし、高価なV2H機器の導入が必要
V2Hによる給電とはいかなくても、クルマにAC100V/1500Wコンセントが付いていれば、車内外で扇風機や湯沸かしポットなどを使うことができるから心強い(ハイブリッド、PHEV、EVに設定あり)。
◆いざという時に便利な冷感グッズ
一時的に愛犬とともにクルマの車内に避難する場合、自宅の駐車場、またはクルマを安全に駐車できる、できれば“日陰”の場所に停めたいが、日中の車内温度の上昇を極力抑えるため、夏に多くの人が使っているはずのフロントウィンドウのサンシェード、サイドウィンドウに簡単に取りつけられるカーテンなども不可欠。日差しを遮り、プライバシーを守ることができ、より快適に車内で涼しく過ごせることになる。
筆者が使っているフロントウィンドウ用のサンシェードは折り畳み傘タイプかつ、遮光生地を用い、UV遮蔽率99.9%以上、遮光率99.99%以上、遮熱効果58%(S55相当)という、ハイスペックなものだ。
さらに、わが家の愛犬たちの特等席となる後席のリヤサイドウィンドウ用に、マグネットによって簡単にワンタッチで取り付けられるカーテンを常備している。
カーテンの前部約70%の部分が、プライバシーを守りつつ安全視界を妨げないメッシュ生地、後部約30%が直射日光の影響を受けにくい遮光生地になっているハイブリッド構造のアイテムである。
今はジャックラッセルのララとキャバリアのアーモンドと暮らすわが家では、夏のお散歩用に重宝している保冷剤が入れられるクールバンダナや、ペットカートの底に敷く、これまた大きめの保冷剤が敷き詰められるペットカート用クールマットなどを日ごろからスタンバイ(大量の保冷剤は冷凍庫に保存)。
お散歩だけでなく、万一の停電時のクールダウン用としていつでも使えるようにしている。
愛犬の要冷凍、要冷蔵のフード類は、強力な氷点下パック(保冷剤)をセットした保冷能力の高いハイパー氷点下クーラーに入れて持ち出すといいだろう(アイスクリームを約11時間保存可能なものも)。
愛犬に接触冷感生地などを用いたクール素材のドッグウエアを用意しておくのはもちろんで、中には防虫加工されたものもある。
◆非常時の愛犬ファーストな移動とは?
実はこの夏、連日30度をゆうに越す猛暑地域に住む愛犬家の知り合いが数日間の停電に見舞われた。もちろん、クルマ(ガソリン車)を所有しているのだが、一般的なクルマの自宅駐車場車内避難は、エアコンが効くとはいえ、やはり限界があったそうだ。で、どうしたかと言えば、クルマでの移動避難を敢行。
親戚、友人が停電していない地域にいれば、そこに身を寄せることも可能だし、そう遠くない停電していない地域の愛犬同伴可能な宿(なじみの宿ならなお可)に避難滞在する手もある……、と考えた。
彼は迷わずなじみの愛犬同伴専門の宿泊施設を予約し、移動。自宅の停電が解消されるまでの数日間、愛犬にも暑い思いをさせずに済んだという。愛犬ファーストで移動の安全を含めた状況が許せば、そうした決断も必要ではないだろうか。
が、そこで重要なのが、停電をもたらした原因が、大雨などの災害による場合の道路交通状況だ。冠水し通行止めになっている道もあるわけで、その情報収集が不可欠。避難できる場所が見つかっても、安全にそこにたどり着けないと意味がない。クルマの移動によって、かえって災害に直面することもありうる。
そんな緊急時に役立つのが、災害発生時の安全な走行のためにトヨタが用意している「通れた道マップ」(https://www.toyota.co.jp/jpn/auto/passable_route/map/、トヨタ車以外のユーザーでも利用可)や、災害時の交通規制に対応したYahoo!カーナビの「道路通行実績情報」などで、ユーザーのプローブ情報から得たデータを元に、通れる道、通れない道の判別が可能になる。
情報収集せずに、無鉄砲に出発、移動するのは絶対にやめてほしい。雨によって運転視界が遮られ、クルマが冠水するような状況下でのクルマ移動、避難はもちろんNGだ。
また、停電時やむなく家から離れる場合は、ブレーカーを落とすことも忘れずに。不在中に停電が復旧した際に、回路がショートし漏電することもある。すると電化製品が通電し火災が発生することも考えられ、大変危険だからだ。
いずれにしても、暑い時期の停電時に家族と愛犬の命を守る手段の一つが、車内避難、クルマでの移動避難ということになる。災害大国の日本だからこそ、とくに愛犬と暮らしているのであれば、車種選びや普段からの準備に気を遣うべきではないか。
真冬の停電でエアコンを含む暖房器具が使えなくなっても、厚着をすればしのぐことはできる。電気を使わずに暖がとれるアイテムもあるだろう。が、台風シーズンでもある9月いっぱいまで続く夏の暑さの中の停電は堪える。暑さや湿気から逃れようもない。万一のときに備えて、愛犬のためにも今一度、停電時の準備、対応、対策を考えておきたい。
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