【メルセデスベンツ A180セダン 新型試乗】苦手だった小型車も、今やサイズ・価格ともに3代目Cクラス並み…中村孝仁
レスポンス / 2023年9月28日 21時0分
◆小型車作りは下手だったメルセデス
ドイツを旅したことのある人ならご存じだろうが、ドイツはその昔、タクシーと言えば圧倒的にメルセデスのディーゼルであった。
その理由はタウシュ・モーター(tausch motor)という、日本語に訳せば交換エンジンを意味する制度があり、タクシーのように距離を走る車両用に、ダメになったエンジンを交換するシステムが整っていた。そのため、ボディや足回りが大丈夫でエンジンが壊れた場合にそれを交換して乗り続けることができたから、長く使うにはメルセデスが良かったのである。そんなところからもメルセデスが丈夫で長持ちの神話が誕生したのではないかと思う。
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というように、長くメルセデスには色々な神話があった。そんなメルセデスだが、小型車作りは下手だった。何しろ作ったことがなかった。私は個人的に初代の『Aクラス』を所有していたが、これ、今だから話すが壊れまくった。もともと燃料電池車でも作るつもりだったと思うが、フロアが2重に出来ていて室内も狭く、乗降性も小型車のくせにあまりよくなく、まあ褒められたクルマではなかった(当時は褒めたように思うが)。それにメルセデス初のFWDだったということも話を厄介にしたかもしれない。
3代目以降は完全にCセグメントのモデルに成長し、ある意味ではライバルと同じようなハッチバックモデルとなった。この頃からルノーとの協業が始まり、4代目のモデルに搭載されている1.3リットルターボエンジンはルノーとのアライアンスから生まれたエンジンである。つまり『A180』に搭載されるエンジンはまさにこれである。
◆数字や見た目には表れない変化
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こうして小型車作りのノウハウを次々と積み上げたメルセデス、新しいAクラスは基本的には内外装のフェイスリフトにとどまっているが、数字や見た目には表れない変化が感じ取れる。その代表格は個人的に静粛性の向上である。
もともと現行Aグラスがデビューした時も『Cクラス』と同じ遮音コンセプトで静粛性が図られたという説明を受けたが、4年経てばその点はさらにブラッシュアップされた印象である。資料を読み込んでいくと、エンジン本体の静粛性向上のために触媒コンバーターに遮音シールを貼ったり、吸気ダクトにはヘルムホルツ共鳴器採用するなどの対策を取っていた。やはり間違いなく静粛性は向上しているはずである。
それ以上に今回のモデルはAMGパッケージが装着されて、一段と洗練された室内に仕上がっている。シート型の電動アジャスターや眼前いっぱいに広がるデジタルディスプレイなど、他のメルセデスから乗り換えても何ら疑いのないメルセデスワールドが広がっているのは、やはり「蛙の子は蛙」である。
ただ、他社から乗り換えると非常に扱いづらいコラムのシフトレバーも一緒についてくるが…。頑なにこのシステムを変えないメルセデスだが、右コラムのウィンカーに慣れた日本人だと、左ウインカーを出したつもりで実はギアがリバースに入っていた…何て言うことになりかねない。個人的にこのシステムだけは改めてもらいたいものだと思っている。
◆3代目Cクラスとほぼ同サイズ
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冒頭話したようにルノーとの協業で完成させたという1.3リットルターボユニットだが、同じエンジンはルノー『ルーテシア』にも採用されているもの。勿論チューンの違いがあって、あちらはパワーは5ps低いものの、トルクは40Nmも上。しかも車重は170kgも差があるからキビキビ感としては断然あちらなのだが、その分豪華な設えとそれなりのキビキビ感はやはりメルセデス。ここも蛙の子は蛙である。
サイズは3代目のCクラスとほぼ同じである。というわけで時代をほんの10年ほど巻き戻せば、Aクラスセダンは立派に当時のCクラス並みのサイズを誇っていることになるわけで、年々クルマのサイズが大型化するのには個人的には辟易。それに伴ってインフラも大型化してくれれば良いけれど、そうはいかないから物理的障害のあるユーザーはどうしてもダウンサイズというか下級移行せざるを得ない。
価格もそうだ。試乗車は車両本体価格505万円。これにナビパッケージやAMGパッケージが追加されて608万1500円となる。ため息が出る。
![](https://response.jp/imgs/zoom1/1937700.jpg)
■5つ星評価
パッケージング:★★★★
インテリア/居住性:★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
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