【マセラティ グレカーレ 新型試乗】走り出して1時間、イタ車好きの虫がウズき出した…島崎七生人
レスポンス / 2023年10月7日 20時0分
こう見えて(どう見えて?)別ブランドだがかつてイタリア製のV6搭載車数台を乗り継いだ身として、初経験だったマセラティ『グレカーレ』に乗り、1時間の試乗時間内に体内のイタ車好きの虫がウズき出した。1発でササったといってもよかった。
◆ついにマセラティまでも……と思っていたが
グレカーレは、アルファロメオ『ステルビオ』と同じジョルジョプラットフォームならなるSUVだ。世界的に(というよりアメリカ市場で)SUVがもはや主流で、各社がこのセグメントに次々と新型車を投入しているのはご承知のとおり。ものすごく正直に書くと、個人的にはこの現状に「ブルータスよ、お前もか」的な感情を抱いていないと言えば嘘になる(とくに裏切られた訳ではないが……)。
したがってマセラティから『レヴァンテ』が登場した際も、ついにマセラティまでも……と思っていた。なので不勉強ながら、同業の方々がいったいどんな感想をレポートされているかも、ほとんど知らない。が、グレカーレの試乗の機会にようやく恵まれ、中間グレードの、その名も「モデナ」を試した。すると、よかった。
いちおうスペックをマセラティの資料から拾い出しておくと、搭載されるパワーユニットは1995ccの直列4気筒eBooster+48Vマイルドハイブリッド+モノスクロール・ターボチャージャーで、最高出力は330ps/5750rpm、最大トルクは450Nm/2250rpm。駆動方式は4WD(トルク配分は0:100~50:50)で、メーカーの諸元表には0-100km/h加速=5.3秒、最高速度240km/hともある。
上下のグレード(トロフェオとGT)との仕様、装備差はここでは省くが、ブレーキ・バイ・ワイヤや、このモデナでは電子制御ダンパーのアクティブサスペンションが標準装着される。全長×全幅×全高は4845×1980×1670mm、ホイールベースは2900mm。全幅がGTより30mm大きいのは、装着タイヤのサイズに合わせてリヤホイールアーチ部のエクステンションが幅広なためだ。
◆いかにも五感を刺激してくる走りが体感できる
で、冒頭でいきなり“ササった”と書いたのは、久々にマセラティ……というよりイタリア車らしい、いかにも五感を刺激してくる走りが体感できたから。名目上はeBooster付きのマイルドハイブリッドだが、このパワーユニットの実際のマナーに理屈っぽさ、不自然さはまったくなく、自然体で思いどおりかそれ以上のレスポンスで応えてくれる。パワートレインをより働かせた際のキレのいいサウンドもコチラの皮膚に小気味よく伝わる。
コーナーをひとつでも走ればわかるが、クルマの挙動も同様に自然なままで安定感を保つ。なので車両重量1950kg(サンルーフ付き)ながら、走れば走るほどクルマが軽快になっていき、クルマと人との一体感が高まっていく……そんな印象が大きい。一方でダンパーと走行モードは各々切り換えが可能だが、モードごとの差異は割合と小さい。試乗車は21インチタイヤだったが、総じて乗り心地への不満も感じなかった。
街中での取り回しも問題なし。シート高を調節すればボンネットが見渡せるポジションもとれる。
◆昔ながらのイタ車を思わせる要素も
インテリアの居心地のよさは、マセラティならでは。インパネ中央のディスプレイが眼前の主メーターに対し1段低く、今どきの多くのクルマのように主張しすぎないのは好ましく、その上の洒落たシルバーのベゼル付きのアナログ表示が可能な時計もマセラティらしい。強いていえば、中央の上下ディスプレイの間に並ぶシフトスイッチは、下側ディスプレイのさらに下端に移したほうが操作しやすいかも知れない。
意外にもステアリング(コラム)が“上向き”なのは昔ながらのイタ車を思わせる。後席は肩、背中、腰、足裏を自然に受け止めてくれる形状が快適で、スペースも十分に取られている。ラゲッジスペースは本格的なステーションワゴン並みの広さで、存分に使いこなせそうだ。
日常使いも問題なくこなせそう。マセラティ好きの期待は裏切りそうもないし、ADAS系の機能も備わるし、このクラスのSUVをショッピングリストに入れて検討できる(幸せな!)ユーザーのいい選択肢になりそうだ。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★★
島崎七生人|AJAJ会員/モータージャーナリスト
1958年・東京生まれ。大学卒業後、編集制作会社に9年余勤務。雑誌・単行本の編集/執筆/撮影を経験後、1991年よりフリーランスとして活動を開始。以来自動車専門誌ほか、ウェブなどで執筆活動を展開、現在に至る。便宜上ジャーナリストを名乗るも、一般ユーザーの視点でクルマと接し、レポートするスタンスをとっている。
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