【メルセデスベンツ Bクラス 新型試乗】メルセデスらしくないメルセデスの真価とは…中村孝仁
レスポンス / 2023年10月14日 8時0分
メルセデスベンツに対する個人的な印象を記すと、高級車の老舗にして威厳と格式の高さで他を圧倒するが、最近は少し下界に降りてきた。そんな印象だ。
基本的にパッセンジャーカーラインナップのうち唯一の例外となるのが『Vクラス』で、これは元来商用車である『Vito』をベースに乗用車化したモデルだから、どうしても他とは違う。また、『Gクラス』も元々は軍用車として生を受けているのでこれも既存のラインナップとは少し違うが、格式と威厳は十分だ。まあ何を言いたいかというと、どれもこれも威厳の高いスタイルでおまけにスタイリッシュだということである。
でも例外はある。個人的にその例外と思っているのが今回試乗した『Bクラス』である。このクルマのスタイリングは格式とか威厳とか、正直微塵も感じられない。良くも悪くも実用性一点張りのモデルである。強いて言えばフロントの巨大スリーポインテッドスターがメルセデスを印象付けるが、あとはそれを隠してしまうとどこにでもいそうなファミリーMPVである。
◆Aクラスを凌駕する視認性とゆとり
![](https://response.jp/imgs/zoom1/1943286.jpg)
顔つきこそ『Aクラス』に似ているのだが、よくよく眺めてみるとだいぶ違う。それに何よりもグリーンハウス(ウエストラインから上の窓の部分)とそこから下との比率がまるで違う。まるで「とっちゃん坊や」。意味は本来大人なのに子供っぽい容姿ということだが、ここではメルセデスなのにまるでメルセデスらしくないという形容で使わせていただく。どこがどうメルセデスらしくないかというと、一つは前述した格式や威厳をほぼ感じられない点。全体の作りが実用一点張りなところもそう感じてしまう大きな要素かもしれない。
だからと言って、このクルマがクルマとしての評価が低いかというとまるでそんなことはなく、少なくとも使い勝手や視野の広さ、全体的な視認性に関しては少なくと確実にAクラスを凌駕している。室内も実に開放感にあふれ、何よりもどの席からも外を良く見渡すことができる。子連れのファミリーなどではこの「外の景色が見える」は比較的重要な要素(もっとも最近の子供たちは景色も見ずにひたすら画面を凝視するケースがほとんどみたいだが)である。
![](https://response.jp/imgs/zoom1/1938820.jpg)
実際ドライバーズシートに座る運転者(家庭ではほぼオトーサン)の目線で見た場合、意図的に着座位置を高くすれば視界は抜群である。よって運転がしやすい。特に今回お借りした「B200d」は2リットルのターボディーゼルを搭載し、僅か1400rpmから320Nmという高トルクを発揮するから本当にゆとりの走りができる。
◆正直に言うと不必要に速いレベル
トランスミッションは8速。同じDCTながらガソリン仕様の「A180」の7速よりも1速多い。ただ、正直なところ1速多いことはほとんど気付かない。つまりそんなに頻繁な変速を感じないほど出来が良くなっているということで、この傾向は発進でもガソリン車以上にスムーズな繋がり感があり(やはり高トルクのせいか)、はじめのうちはDCTだと気付かなかったほどである。
クルマの性格を考えるとこれで意図してワインディングを飛ばそうなどとは滅多なことでは思わないと思うのだが、いわゆるモード切替を(ダイナミックと書かれたプッシュスイッチ)スポーツにするとエンジン自体は俄然元気になる。正直に言うと不必要に速い(この種のクルマとしては)と感じるレベルだ。従って、エコモードでも十分活発に走る。
![](https://response.jp/imgs/zoom1/1938838.jpg)
このOM654qと呼ばれるエンジン、qが付かないものはメルセデスレンジで幅広く使われているディーゼルユニットで、qはドイツ語で横置きを示すquerの頭文字である。だから、このqの付くエンジンはAクラスもしくはBクラスにしか使われていないが、基本は同じ。やはり印象としては静粛性が向上した印象が強い。
因みにお値段であるが、素のB200dは573万円。試乗車はこれにオプションが122万4000円載って695万4000円。しかし、メンテナンスプログラムと保証プラスを載せると合計価格は721万2500円。昔ならこれで上級の『Eクラス』が買えた。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★
おすすめ度:★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
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