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なぜスリットローターを選ぶのか? 溝と穴の秘密を解明~カスタムHOW TO~

レスポンス / 2023年10月17日 6時30分

ブレーキローターの表面に斜めに溝が彫り込んであるスリットローター。このスリットにはどんな意味があるのか。どう活用すればいいのかを解説していく。


高性能なブレーキローターや、レーシングカーのブレーキローターに溝が掘られているもののことをスリットローターという。これにはいくつかの意味がある。


◆スリットローターの意味1:ガスの排出


ブレーキはパッドとローターが摩擦することで減速する。そのときに熱が発生してパッドもローターも高温になる。ときにはこのパッドとローターの温度が700度や800度にまで上がることがある。


ブレーキパッドはそもそも様々な成分を混ぜて、圧縮しながら熱を掛けて焼き固めてある。この成分がサーキット専用パッドほど鉄などの金属成分が多い。耐久レース用パッドになると「焼結パッド」とも呼ばれるもので、ほぼ金属成分でそれを焼き固めてある。


逆にストリートパッドほど金属成分は減り、繊維などが増えてくる。そして、それらを焼き固めるために樹脂も含まれる。この樹脂成分が高温になると焼けて煙になってしまう。煙が発生することで樹脂が気化して一気に体積が増える。このガスが表面から発生することでブレーキパッドの方面がローターからわずかに浮いてしまう、ブレーキが効かなくなる現象がフェードと呼ばれるもの。


フェードするとブレーキは一瞬まったく効かなくなってしまう。峠の下りでブレーキが加熱して効かなくなる原因はこれが多い。サーキットで発生するとほぼ効きはゼロになってしまい、クラッシュやコースアウトしてしまうことが多い。


そこでガスが発生しにくい金属成分が多いパッドを使えばフェードはしにくいが、その分、ブレーキダストは増えるのでホイールは汚れる。減速時にブレーキがキーキー鳴くことも増える。適正温度になるまできちんと効かないし、適正温度外で使うとパッドやローターが異常摩耗してしまうこともある。そういった原因から、街乗りからサーキットまで兼用するクルマでは、現実的にはフェードしにくいパッドを選ぶのは難しい。そこでスリットローターである。


スリットローターはこの溝でパッドの表面に発生するガスを受け止め、外に排出してくれる効果を持つ。フェードしにくくなるのである。同じような狙いでドリルドローターもある。こちらは細かい穴が多数開けられているもので、この穴でガスを受け止めようという狙いなのだ。


◆スリットローターの意味2:パッドのクリーニング効果


もうひとつの効果がパッドの表面を綺麗にする効果。パッドの上を溝が通ることでそのエッジでパッドが削られていく。それによってパッドの表面が常にフレッシュになるので、効きが良くなる効果がある。ローター温度が上がってパッドの表面が炭化しても、スリットが削っていってくれるのでパッドはいつもフレッシュなのだ。


そのためスリットローターにするとブレーキのバイト感が上がる傾向にある。バイトとは「咥える」という意味で、ブレーキの効きの高まりのこと。スリットなしに比べて、踏み込むごとに効きがアップしていく感じが出やすい。


そのためサーキットでもう少しブレーキの効きをアップさせたいが、パッドの摩材を変えると大きく効きが変わってしまいそう、というときにプレーンローターからスリットローターにすると絶妙に効きがアップして扱いやすくなったりするのだ。


しかし、デメリットもある。それはパッドの摩耗が早くなること。このクリーニング効果によってパッドが削られていくので摩耗が早くなる。車種やパッドの種類にもよるがイメージとしてはプレーンローターに比べてパッドは1.5~2.0倍くらいの速さで減っていく。


またこのスリットの向きによっても減り方が変わると言われている。進行方向に対して前傾した線が回る方向のほうが減りやすい。後傾した線が回転する方向のほうが減りにくいと言われている。ブレーキメーカーによってはどちらの向きでも使用できる場合があり、そのときはパッドフレッシュ効果を狙うのか、寿命を狙うのかで使う回転方向を決めたい。


スリットについては各社ともに工夫があり、エンドレスのような特殊な形状のスリットを採用しているメーカーもある。ストレートスリットのメーカーもあるし、その本数も異なる。ドリルホールを使うメーカーもある。それぞれその狙いと特徴があるので、それらを理解した上で使用用途に合ったモデルを選んでもらいたい。

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