1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ

【ホンダ N-BOX 新型試乗】「しっとり/シッカリ」の両立こそ新カスタムターボの大きな魅力…西村直人

レスポンス / 2023年10月23日 18時0分

3代目となった軽スーパーハイトワゴン『N-BOX』のトピックは、一新された内外装と、2代目の技術を熟成して得られた走行性能だ。ホンダによると初代N-BOXは30代のママさん世代に強く支持されたという。その評価を軸に、2代目からは20代の独身女性、50代の子離れ男性、60代のシニア男性など老若男女を問わずユーザー層が広がっていった。


◆名実ともにホンダを代表する軽自動車に


初代は2011年12月に登場し、5年後には累計販売台数100万台を達成。2017年9月に2代目となり、2019年2月に150万台、2021年5月には200万台をそれぞれ達成。N-BOXは名実ともにホンダを代表する軽自動車に成長した。


3代目となる新型の構成は、「標準」モデルと「CUSTOM(カスタム)」モデルの2タイプ。これに標準では一層のカラーコーディネイト化を図った「ファッションスタイル」、カスタムではメッキパーツなど専用アイテムを装備した「コーディネートスタイル」(モノトーンと2トーンあり)を設けた。


さらに標準/カスタムには、重い荷物の積載や車いすの乗降に便利な格納式スロープ「スーパーフレックススロープ」がついた「スロープ」を用意する。


2代目から熟成を重ねたエンジンはNA(58ps/65Nm)とターボの(64ps/104Nm)2種類あるが、ターボエンジンはカスタム専用に改められた。


「これまで設定があった標準のターボエンジン搭載車は販売比率が思ったほど伸びず10%以下でした。よって今回、ターボはカスタムに集約させ、標準は内外装を際立たせ個性を強くすることで差別化をはかりました」(本田技研工業 ICE完成車開発統括部 比嘉良寛さん)。


今回試乗したのは(1)「N-BOX カスタム ターボ」と(2)「N-BOXファッションスタイル」の2台。(1)はターボエンジンで15インチタイヤ+アルミホイールを装着。(2)はNAエンジンで14インチタイヤ+オフホワイトをアクセントにしたボディ同色のフルホイールキャップが付く。駆動方式はともにFF(前輪駆動)だ。トランスミッションはCVTのみで、ターボにはパドルシフターが付く。


◆スリーサイズはそのまま、中身と使い勝手が大進化!


2代目からボディのスリーサイズは変わっていないのに、見た目はずいぶん立派になった。いわゆる全高を高くとったスーパーハイトワゴンでは、ドアパネルの処理ひとつで大きく印象が変わる。


新型N-BOXでは、2代目と同じくヘッドライト上端とドアハンドル位置を結ぶ直線的なアクセントラインと、ボディ下部の折り返しで大きさを表現しつつ、パネルはわずかな膨らみをもたせた。一方2代目では、ボディ後端のサイドウインド上部に角度をつけていたが、新型では前方から一直線となる処理に変更した。これにより、ボディとウインド部分のコントラストがよりハッキリとして前後が長く感じられ、存在感が大きくなっている。


歴代N-BOXでは自転車が楽に積載できる点がチャームポイントだったが、新型ではラゲッジフロア形状の一部に凹みを設けて自転車の前輪を通しやすくしつつ、自転車のセンタースタンドが接地する部分に工夫を凝らし自立しやすくした。


テールゲートのドアハンドル位置は2代目から70mm下げられた。これによりゲート下端位置からは900mmの位置に狭められ、真後ろに立って開け閉めする際も後ずさりする量が少なくなった。地味だが、こうした利便性の向上はありがたい。


車内では空間の演出と、各部の使い勝手のバランスがものすごく高まった。ホンダが歴代大切にしている「M・M思想」(マンマキシマム・メカミニマム/人のスペースを大きく、機械のスペースを小さく)を基本としながら、視覚的な効果を狙って奥行きを感じさせるデザインに変更した。


使い勝手の上では歴代ユーザーから届いたレポートなどを参考に、大胆な変更を加えた。たとえばモノを置くスペースにしても、これまでの指標であった「大きく/広くする」だけでなく、モノに手が届きやすかったり、収納しやすかったりするところも大切にした。


運転席からの視界も大きく変わった。『ステップワゴン』や『シビック』などと同じホンダが推奨する「水平基調のインテリア設計」へと思想が変更され、その効果により一見しただけで視界が大きくひらけたことがわかる。具体的には、運転席からの前方死角が2代目に対して1.5m手前になった。つまり、メーターフードの廃止や水平基調のダッシュボード形状によって、前方視界が1.5mぶん下方向へとグッと広がったのだ。短い前後オーバーハングと相まって、狭い場所での取り回しがさらに良くなった。


操作系も新しい。アナログ2連式を主体したメーターから、現行『フィット』などでお馴染みの書体が使われているTFT液晶メーター方式に改めた(N-BOXでは7インチ)。ステアリングは3本から2本スポーク式に変更し、同時にステアリングスイッチも直感的操作ができる最新世代へと置き換わった。エンジンスタート/ストップスイッチが右側の押しやすい位置に移設されたのも朗報だ。


◆ダンパー特性が違うカスタムターボの“しっとり/シッカリ”な走り


2代目から継承されたターボ/NAエンジンだが、ターボエンジンは相変わらず低回転域から実用的なトルクが大きい。一般道路では2000回転から十分な加速力が得られ、連動するCVT制御によりエンジン回転に頼らない1.0リットルクラスのコンパクトカーのようなゆとりある走行性能が味わえる。


最大トルク値104Nmは2600回転で発揮するが、2代目同様に電動ウエストゲートバルブによる排気圧コントロールによって、じんわり深く踏み込んだ際や、一度戻したアクセルペダルの再踏み込み時の加速特性に遅れがない。高速道路でもその印象は変わらずで、60→80km/hあたりまでの加速にしても大人2名乗車では、最大トルク発生付近の2500回転あたりを保ったまま素早く速度を上げる。


静粛性も大きく高められた。車体下部のフロアカーペットには前席からラゲッジルームに至るまで遮音フィルムを追加した。さらにカスタムでは車体上部のルーフライニング(天井の部材)に吸音シートを追加している。高速道路では80km/h付近で前席と後席で会話してみたが、遮音と吸音の効果は抜群に高く、会話明瞭度(会話しやすさ)は2代目から格段に上がっていることが確認できた。


乗り味も格を上げてきた。ターボモデルでは前後のダンパー特性(減衰力)を変更している。


「2代目のカスタムターボと比較して、低速域ではしっとり感を強く(≒よく動くように)して、反対に高速域ではシッカリ感が出る(≒グッとこらえる)ように減衰力を変更しました」(前出の比嘉さん)という。


このしっとり/シッカリの両立こそカスタムターボの大きな魅力だ。新型のカスタムでは外観もやや大人びた印象でヤンチャ感が少し落とされたことも、こうしたゆとりある走りにマッチしていると感じられた。


このほかターボ/NAエンジンに共通した変更点として、前後サスペンションの取り付け力(締結力)を強めつつ、前サスペンションはアライメントを適正化しカーブや直線路での安定性を高め、さらに電動パワーステアリングの舵角速度にフィードバック制御を採り入れた。


個人的な高評価ポイントは、追加された電動パワーステアリングの制御だ。ステアリングを切る/戻す際のアシスト量が外乱(≒道路などの凹みによる影響など)を受けても常に一定なので、軽自動車特有のスローなステアリングギヤ比でも、スムースなステアリング操作が行いやすくなった。ここは同乗者にとっても有益で、カーブ走行時の車両挙動が終始安定しているからクルマ酔いしにくいと感じられるだろう。


◆CVTのきめ細やかな制御が、非力なNAの走りに効果てきめん


続いてNAエンジンの標準モデルに乗り換える。ファッションスタイルというグレード名や専用の「オータムイエロー・パール」(新色で筆者の一押し!)の相乗効果なのか、勝手に“大人しい走行性能”をイメージしていた。が、そこは吸気バルブの制御を行う「VTEC」&「VTC」搭載エンジンだ。実際はしっかり実用モデルで不足ない走行性能が確認できた。


エンジンの常用回転域はターボの約2500回転に対して4000回転あたりと高まる。よって音量は当然上がるものの音色が良いため騒がしいという印象はない。オン/オフ的な大きなアクセル操作をしない限り、エンジン回転が先行するラバーバンド的な制御にはならないからだ。


「じつに細かな部分ですが、エアコンのオン状態とオフ状態で減速感が異なる違和感を軽減する為に、CVTできめ細やかな制御をおこなっています」(本田技研工業パワーユニット開発統括部 安田隼士さん)。


加えて、Dレンジでのアイドリングストップ時に、Pレンジへシフトしてもアイドリングストップを保つ(エンジン停止したままの)制御がターボ/NAの両方に追加され、よりスマートな駐車がサポートされる。


気になる点もあった。14インチのタイヤでセッティングした足回りは、一般道路での快適性向上が重点項目なのか、筆者にはややソフト(やわらかく)に感じられた。前後方向のピッチングは抑えられているものの3人以上の多人数乗車ではロール速度も速めだ。ブレーキ性能にしてもタッチがやわらかく、初期の制動力はもう少し強く立ち上がっても良いように思えた。ボディのしっかり感が高いことから、ソフトな部分の動きが気になってしまったのかもしれない。


◆F1技術者が担当した踏み間違い制御も


先進安全技術群である「Honda SENSING」では、高度運転支援領域の制御が向上した。「ACC」(車間設定は4段階)では前走車との追従が滑らかになり、加速度/減速度ともに唐突感が大きく減っている。自車前方に割り込まれた際の制御もスマートになった。


「LKAS」(車線中央維持機能)も信頼感がアップした。センサーである光学式カメラの画角が2代目の約2倍にあたる100度と広くなったことで、直線路/カーブともにライントレース性が向上している。ここには自動化レベル3技術を有する「Honda SENSING Elite」で培われた制御アルゴリズムが活かされた。またソフトウェアの変更で、ACCとLKASを一緒に起動させることが可能になった。また、自車周囲360度を映し出す「マルチビューカメラシステム」がホンダの軽自動車初の装備として採用された。


さらにホンダで実装が進む、アクセルとブレーキのペダル踏み間違いで発生する事故を抑制する「急アクセル抑制機能」もオプション装備として選べるようになった。この急アクセル抑制機能は、ホンダでF1エンジン開発を行っていた技術者が担当している。注目は外界センサーに頼らず、アクセルペダルの踏み込み量と踏み込み速度を細かくモニタリングして踏み間違いを判定する点。じつにロバスト性に優れた高度運転支援技術だ。


◆あと数cm全長が大きければ軽の安全性は飛躍的に向上する


ところで新型N-BOXでは、軽自動車として初めてJ-NCAPによる側面衝突試験をクリアしている。衝突時の衝撃をコントロールするHonda独自の安全技術「G-CON」をさらに進化させることで得られたという。


「従来のセンサーで衝突を検知するだけでは間に合わないことがわかりました。そのため、新型N-BOXでは衝突時に発生するドアのわずかなタワミを検知してエアバッグの適正な作動をアシストしています」(前出の比嘉さん)。


「あと数cm、車幅と全長を大きくすることができれば、軽自動車の衝突安全性能を飛躍的に高められます」。これは会場で会話した別のホンダ技術者の言葉だ。じつはこの話、2代目が登場した際にも交わしている。


ホンダは「2050年に、全世界でHondaの二輪・四輪が関与する交通事故死者ゼロを目指す」(原文まま)として具体的な技術を実装し取り組んでいるわけだが、日本においては新車販売の約4割となる軽自動車の規格についても、一歩踏み込んだボディ拡大の議論がなされる事に期待したい。


西村直人|交通コメンテーター
クルマとバイク、ふたつの社会の架け橋となることを目指す。専門分野はパーソナルモビリティだが、広い視野をもつためにWRカーやF1、さらには2輪界のF1と言われるMotoGPマシンでのサーキット走行をこなしつつ、4&2輪の草レースにも精力的に参戦中。また、大型トラックやバス、トレーラーの公道試乗も積極的に行うほか、ハイブリッド路線バスやハイブリッド電車など、物流や環境に関する取材を多数担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席したほか、東京都交通局のバスモニター役も務めた。大型第二種免許/けん引免許/大型二輪免許、2級小型船舶免許所有。日本自動車ジャーナリスト協会(A.J.A.J)理事。2023-2024日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。(財)全日本交通安全協会・東京二輪車安全運転推進委員会指導員。日本イラストレーション協会(JILLA)監事。

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください