【三菱 デリカミニ 新型試乗】ターボに1週間乗ってわかった「3000rpmの攻防」…中村孝仁
レスポンス / 2023年11月3日 20時0分
デリカミニを1週間ほど借りて日常で使い倒してみた。試乗会の時は時間も限られあれやこれやという細かい部分には触れられていないので、改めてというところである。驚いたのは、やはりというべきか1時間程度の味見とはだいぶ違う部分を見せてくれたことだ。
◆痒い所どころか、痒くないところにも手が届く
一番強く感じたのは、試乗会では「ダンパーの特性を初期入力に対して柔らかく仕上げ、悪路に入っても快適さを保つようにしたという足回りのセッティング」に対し、それがきちんと機能して「全体的な乗り心地も路面からのあたりがソフトで快適であった。」と報告していた点が、1週間乗ってみるとほぼ真逆の結果であったことだ。
まずは10mm、されど10mmというところ。15インチタイヤを奢り僅か10mmだが車高を上げている点だが、日常的に使ってみると確かに乗降の際などはあれ?少し車高が高いかな?というところをいやというほど感じる。身長の低い女性など(私も同様だが)では乗降の際にそれを感じることだと思う。
今回は軽自動車はこう使われるであろうという、まさに日常のちょい乗りモードに終始して200kmほど走ってみた。よって高速での試乗はなし。長い距離でも精々30km程度を積み重ねた試乗である。
使い勝手などは、いわゆる兄弟車ともいえる日産『ルークス』や三菱『eKスペース』と何ら変わりはないが、ちょっとした大きな買い物をした時など、やはりその利便性はすこぶる高く、リアシートを倒すと実に広大な空間がそこに広がり、大きな荷物でも無造作に積見込むことができる。
しかもリアシートは大きく前後に動かせるので(しかも二つ別々に)、ちょっとしたものなどは敢えてシートを倒さずにシートを一番前まで移動させれば十分なスペースを確保することができる。それにいわゆる小物入れの充実はまあ、軽自動車なら普通なのかもしれないが、見事なほどに沢山用意されていて、痒い所どころか、痒くないところにも手が届くといった感じであった。
◆ターボで実感した「3000rpmの攻防」
試乗車の「Tプレミアム」はデリカミニの最上級グレード。ターボエンジンに4WDという仕様である。4WDに関しては前述したちょい乗りレベルを積み重ねたところで、その有難みを感じることは皆無である。従って使い方によっては不必要。グレード選びの参考にして欲しい。また、もし飛ばそうという気が無いのなら、ターボも正直なところ不要である。
何故かというと、ターボの扱いは意外とコツが必要だったからだ。「3000rpmの攻防」とでも言おうか、この3000rpmを境にクルマの性格もその挙動も大きく異なるし、それを前後にして第2段ロケットにように加速が一段階グイっと引き上げられる。だからそこから上を使って走ると、痛快極まりなく完全なお楽しみ領域に入るのだが、その領域をまたぐような使い方をすると今度はかなり乗りにくい。つまり、普通に走っているつもりでこの3000rpmを超えると突如として強烈に加速し始め慌ててアクセルを戻すと今度は猫を被ったとでも言おうか大人しい走りに戻ってしまい、その落差がとても大きいからである。
信号待ちでの静止からゆっくりと走り始めて、この3000rpm以下に回転を保って走れは非常にスムーズだし、ゆったりと走るのだが、スピード領域としては精々40km/h。最大トルクを発揮するのは2400rpmからで、通常の40km/h程度の領域は常に1500rpm程度でしかないから、トルクに乗った領域には入らない。
しかし、ちょっとした上り坂ではどうしてもアクセルを踏み込む必要があって、そうすると3000rpmをまたぐ結果となり、どうしてもギクシャクとした走りを免れることはできなかった。また、少し急いで発進したいようなケースではドンとアクセルを踏み込むとほぼ完全に無感状態のように反応しないところから、いきなりガツンと加速が始まる。いわゆる昔のドッカンターボのような性格を持っているのである。これが、乗り方によってはノンターボをお勧めする理由である。
◆まずはノンターボ・2WDの試乗をお勧めする
エンジン音は意外なほど室内に届く。3気筒独特のビートを伴い、煩いとは言えないものの気になる存在であることは確かだった。とはいえ軽自動車にとってはこの程度の音の侵入は普通と考えるべきなのかもしれない。
少し残念だったのは燃費である。確かに3000rpmの攻防でそれを上回ることも多々あったのだが、200kmの総平均は13.9km/リットル。これだと少しパワーに余裕のあるリッターカークラスには勝てない。というわけで、デリカミニを買おうという意思のある人は、まずはノンターボ、2WDの試乗をお勧めする。こちらは14インチタイヤを装着するから、ある意味ではお勧めグレードでもある可能性がある(乗っていないので何とも言えないが)かもしれない。
■5つ星評価
パッケージング ★★★★
インテリア居住性 ★★★★★
パワーソース ★★★★
フットワーク ★★★★
おすすめ度 ★★★★★
中村孝仁(なかむらたかひと)AJAJ会員・自動車技術会会員
1952年生まれ、4歳にしてモーターマガジンの誌面を飾るクルマ好き。その後スーパーカーショップのバイトに始まり、ノバエンジニアリングの丁稚メカを経験し、さらにドイツでクルマ修行。1977年にジャーナリズム業界に入り、以来46年間、フリージャーナリストとして活動を続けている。また、現在は企業やシニア向け運転講習の会社、ショーファデプト代表取締役も務める。最近はテレビ東京の「開運なんでも鑑定団」という番組で自動車関係出品の鑑定士としても活躍中。
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