【ヒョンデ コナ 新型試乗】基本性能はすべてが高レベル、だが好き嫌いはやむなしか…諸星陽一
レスポンス / 2023年11月17日 20時0分
新生ヒョンデの日本導入3機種目となったのは、バッテリーEV(BEV)の『コナ』である。「憧れのままに」というキャッチフレーズを使い、若者世代へのアピールも強めたコナに試乗した。
コンパクトなクロスオーバーSUVとされるコナだが、全長×全幅×全高は4335×1825×1590mmと十分に大きい。とくに全幅は1800mmを大きく超えている。今のクルマならこの大きさでも十分にコンパクト、という方も多いが道路はさほど広がっていないし、自転車や電動キックスケーターが増えた車道は、実質は以前より狭くなっているような状況である。
それはさておき、左前タイヤの位置がつかみにくい以外は、あまり大きさを感じさせないのも事実。試乗の地が御殿場周辺から箱根に掛けてだったこともあり、都内住宅地で感じるのとは異なる印象であろう。箱根方面に向かってクルマを走らせると、じつに軽快でしっかりした印象である。低速から十分なトルクを発生するEVは、発進から中低速の加速性能まで不満を感じることはない。
◆ワインディングでの走りはどうか
コナの走行モードは、エコ、ノーマル、スポーツ、スノーの4種類に切り替えが可能。基本的にトルクカーブの切り替えだけなので、インディビデュアルモードは存在しない。エコとノーマルについては、低速時のトルク発生を抑えているとのこと。以前、さまざまなクルマのオーナーに「所有車の気に入っているところはどこですか?」と聞くと「出足がいい」という答えが返ってくることが多かったのだが、最近のEVについては出足がよすぎるのも事実。発進加速を抑えるモードが基本となっているのはいいこと。そもそも、発進加速が急だと走りがぎくしゃくしがちでクルマ酔いの原因にもなる。
回生ブレーキはステアリングのパドルスイッチによって、最弱から最強まで4段階の調整が可能。最強にした場合は完全停止までをアクセルペダルのみで走れるワンペダルモードとなる。ワンペダルモードはかなり強く回生が効き、ワインディングでのワンペダル走行もスムーズ、高速道路でもしっかり回生が効く。コナの回生ブレーキには「スマート回生ブレーキ」というモードがあり、高速道路をACCで走っているときなどには、ナビゲーション情報を加味した回生ブレーキ調整も可能である。
ワインディングでの走りに話を戻そう。ステアリング操作に対するクルマの動きはじつに素直。ステアリングを切っていくと、ボディが遅れなく向きを変える。初期の動きは過敏でなく、スッと動き出してからしっかりとグリップしている感じが伝わってくる。もともとEVは重心が低いこともありコーナリング性能は高い傾向にあるが、コナに関してはそれ以上にしっかりとセッティングされている印象が伝わってくる。ステアリング切り始めの挙動からフルロールまで動きにムダがなく、すべての動きがスムーズにつながっている。
ワインディングでの加減速についても快適である。回生ブレーキの強度を調整しながら走れば、普通に走っている分に荷重移動を含めて十分にクルマの動きをコントロールできる。走行モードをスポーツに切り替えると、メーター内の表示が一瞬ハデな赤になりやる気を刺激する。スポーツモードではアクセルペダルに対するトルクの出方が強くなる。加えて回生ブレーキの強度を強くすれば、ワンペダルで操作できる範囲はグッと広くなる。ここにフットブレーキをプラスすればさらなるスポーティドライブが可能だ。
◆基本性能はすべてが高いレベルに達しているが
市街地を走っていて関心したのがARナビゲーション。通常の経路案内に加えて、車外のカメラで撮影した映像と経路案内を組み合わせたもので、基本的にはメルセデスが採用しているものと同様。ナビならスマホで十分という方も多いかもしれないが、知らない土地でしっかりと確実に案内してくれるのはうれしい限り。
また、ウインカーを操作すると、操作した側の側後方がメーター内に映し出される。つまり、ドアミラーとカメラ&モニターの両方で確認できるのだ。デジタルミラーはつねに車内に映像が映し出されるため、情報過多となり人間の処理能力が追いつかないことがあるが、必要なときだけ現れる、ミラーと合わせて確認(さらに各種センサーも働いている)できるのは歓迎である。細かい部分だが残念だったのは、パワーウインドウがフロント左右のみオートで、リヤはオートでないこと。運転席からの操作はすべてオートであってほしい。
高速道路では快適なクルージングを味わえた。100km/hでの走行はもちろん、120km/h巡航も快適である。条件がそろえば、ウインカー操作だけで車線変更する。ほかの多くのモデルが、ウインカーを軽く操作した際に自動車線変更するがコナはウインカーレバーのクリックを確認できるまで深く操作しても車線変更が可能。車線変更の動作に入っていても30~40%程度のところでウインカーレバーを戻すと車線変更を中止し元の車線に戻る。
それ以上に車線変更が進んでいる際には、レバーを戻してもウインカーは消えることなく、車線変更が終了してからウインカーがキャンセルされる。車線変更なんて自動である必要がないという方も多いだろうが、きちんとウインカー操作が行われずに車線変更されるよりも、一連の動作がきちんとしていたほうがよっぽど安全だ。
試乗車を渡された際の電費情報は走行距離が91.4kmで電費5.5km/kwhという状態。そこからワインディングと高速を合わせて42.1kmを走っても電費は5.5km/kwhであった。
クルマとしての基本性能はすべてが高いレベルに達しているのだが、デザインが好き嫌いが分かれる部分。これを考慮してオススメ度は★4つとした。
■5つ星評価
パッケージング:★★★★★
インテリア/居住性:★★★★★
パワーソース:★★★★★
フットワーク:★★★★★
オススメ度:★★★★
諸星陽一|モータージャーナリスト
自動車雑誌の編集部員を経て、23歳でフリーランスのジャーナリストとなる。20歳代後半からは、富士フレッシュマンレースなどに7年間参戦。サーキットでは写真撮影も行う、フォトジャーナリストとして活動中。趣味は料理。
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