トヨタ、宿願のWRCラリージャパン凱旋勝利を1-2-3で果たす…勝田貴元は5位
レスポンス / 2023年11月20日 6時45分
世界ラリー選手権(WRC)最終戦「フォーラムエイト・ラリージャパン2023」が11月16~19日に愛知・岐阜で開催され、トヨタが宿願の凱旋勝利を1-2-3フィニッシュで飾った。優勝はエルフィン・エバンス。2年連続の母国表彰台が期待された勝田貴元は5位だった。
◆昨年の「忘れ物」を獲りにジャパンに臨んだトヨタ
昨年、日本でのWRC復活をついに実現した愛知・岐阜での“新生ラリージャパン”。2年目の今季は基点となる豊田スタジアムで2台併走の「スーパーSS」(SS=スペシャルステージ、タイムアタック区間)も新たに実施されるなど、イベントとしての充実度が各方面で一層増した印象となった(今年は主催者に豊田市が名を連ねるなどの変化もあった)。
トップカテゴリーマシンである「GRヤリス Rally 1 HYBRID」でWRCに参戦しているトヨタ(TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team=TGR-WRT)は、既にマニュファクチャラーズ、ドライバーズ、コ・ドライバーズの各タイトル獲得が決定済み。3年連続の“全冠制覇”達成だが、昨季は新生復活初回のラリージャパンで勝てず、豊田章男トヨタ会長も言うところの「忘れ物」が残ってしまっていた。
トヨタのお膝元ともいえる地域で開催されるWRC最終戦(第13戦)ラリージャパン。マニュファクチャラー・ノミネート外のエントリーとなる#18 勝田貴元を含む4台のGRヤリス Rally 1 HYBRIDで、トヨタは“今度こそ”、必勝を期して臨んだ。
◆金曜から形勢はトヨタ優位に傾き、母国凱旋勝利は1-2-3で成就
実質的な競技初日といえる17日(金曜)、天候が乱れた影響もあってか、波乱が多い一日となった。
その流れに、トヨタと同じトップカテゴリーのマシン(Rally 1 規定マシン)で戦うヒョンデ、Mスポーツ・フォードのメンバーが次々に襲われていく。そのなかには昨年のジャパン優勝者、#11 ティエリー・ヌービル(ヒョンデ i20 N Rally 1 HYBRID)の姿もあった(コースアウトしてデイリタイア、上位戦線から脱落。ラリー総合の最終順位13位)。
気がつけば、トヨタ(TGR-WRT)の3台が#33 エルフィン・エバンスを先頭に1-2-3体制を築いており、総合4~6位にはトップカテゴリーではないマシンが並ぶ状況に。金曜の段階でトヨタの母国凱旋勝利は実現濃厚になっていた。
戦況はそのまま推移し、トヨタは1-2-3フィニッシュでラリージャパン初優勝を達成。忘れ物をしっかりゲットして、「全冠制覇+日本凱旋勝利」を表彰台独占という最高のかたちで実現させたのである。表彰式では豊田会長が頼もしいクルーやチーム代表(往年のトップ選手、ヤリ-マティ・ラトバラ)と喜びを爆発させていた。
豊田氏は祝賀コメントを「トヨタ自動車の会長として」と「TGR-WRT会長として」の2本立てでプレスリリースに載せた。「トヨタの会長として」の方では大会関係者への、「TGR-WRT会長として」の方ではチーム関係者への感謝をそれぞれ主に述べている。
◆優勝のエバンス、勝因は「タフだった金曜」にあり
優勝は#33 エバンス(コ・ドライバーはスコット・マーティン)。前戦でドライバーズタイトル獲得の可能性が消滅したエバンスだったが、ラリージャパンを概ね順調な戦いぶりで制し、4戦ぶりの今季3勝目をマークした。ドライバーズランキング2位の座も確定している。
優勝したエルフィン・エバンスのコメント
「表彰台のトップに再び立てたことは本当に嬉しい。チームが1-2-3フィニッシュを達成したのだから、なおさらだよ。素晴らしい結果であり、トヨタのホームイベントでこれ以上の結果はないといえる」
「この週末は長く、難しく、特に金曜は非常にタフなコンディションだったが、かなりのマージンをもって走り抜けることができた。それ以降は全開でプッシュするのではなく、タイム差をマネージメントするという、違った意味でのチャレンジになったわけだけれど、最後まで(リードを守って)走り切ることができたので良かった」
「信じられないような(成功に満ちた)シーズンを戦い抜いたチームに、心からおめでとうと言いたい。クルマも素晴らしかったし、みんなと働けたことを誇りに、そして嬉しく思っている」
豊田氏は「TGR-WRT会長として」のコメントのなかで、優勝クルーに向けて「エルフィン(エバンス)とスコット(マーティン)。優勝おめでとう! 昨年の忘れ物をしっかり回収してくれました! 今年、2回も私をポディウムに連れていってくれてありがとう!」と述べている(フィンランド戦でエバンス組が優勝した際も豊田氏が表彰台に登壇した)。
ラリージャパンの総合2位は通算8冠を誇る#17 セバスチャン・オジェ。3位には2年連続チャンピオン決定済みの#69 カッレ・ロバンペラが続いてトヨタ1-2-3フィニッシュとなった。最終的には、やはりラリー総合の6位までをトップカテゴリーのマシンが占めており、ヒョンデ i20 N Rally 1 HYBRIDの#4 エサペッカ・ラッピが4位、続く5位については後述するとして、Mスポーツ・フォード プーマ Rally 1 HYBRIDの#8 オット・タナクが6位となっている。
そして5位に入ったのが、日本の#18 勝田貴元(トヨタ GRヤリス Rally 1 HYBRID)である。
◆勝田貴元は5位。金曜に遅れをとるも、SSトップタイム量産
日本で現在唯一のWRCトップカテゴリーにおけるレギュラー参戦ドライバー、#18 勝田貴元。昨年3位に入っていた母国戦だけに、2年連続表彰台の期待がファンに広がったのは自然な流れであった。しかし荒天の金曜にアクシデントがあり、この段階で大きく後退。ラリー総合順位は金曜終了時点で9位、トップとは5分以上、3位とも2分以上の差となってしまった。
ただ、#18 勝田は金曜、遅れをとった後に3連続でSSトップタイムをマークしてみせた。少しでも(ラリー総合順位で)上へ、という思いでチャージし続けていたのだろう、勝田は土曜以降もSSトップを獲りまくって追い上げる。総合上位の順位関係が落ち着き気味だったことなど、勝田にとってSSトップを獲るのには追い風な状況もあったとは考えられるが、それがあったとしても、見事なSSトップ量産ぶりだった。
ラリー総合の順位は土曜終了時点で6位。そして日曜には5位へと上がって、勝田はラリーフィニッシュを迎える。トヨタ1-2-3-4の実現には20秒足りなかったが、速さと意地を見せつけた2年目のラリージャパンだった。
今季の勝田はシリーズ7位。昨季の5位からは後退してしまったが、パートタイム参戦のオジェが不在のラリーではトヨタ(TGR-WRT)のマニュファクチャラー・ノミネートドライバーという大任も新たに務めるなどしてきた。フィンランド戦では3位に入り、自身通算4度目となるWRC(の総合)での表彰台登壇、欧州ラウンドでは初めてのそれを実現したシーズンでもあった(キャリア通算4回の表彰台の内訳は2位1回、3位3回)。
WRCのシーズンオフは短い。2024年も1月にモンテカルロでシーズンが開幕する予定だ。そして来季もラリージャパンは最終戦としてカレンダーに組み込まれている。2024年のラリージャパンは11月21~24日に開催される予定となっている。
*上記の結果、内容は2023年のラリージャパン最終日(11月19日)21時の段階の情報等に基づく。
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