1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. 経済

【イタリアのデザイン・ラボラトリー】イコナ デザイン グループ :東京に開いた「本場への窓」

レスポンス / 2023年11月23日 20時0分

イタリアを発祥とし、自動車デザイン開発に携わる企業や人物を紹介する本企画。第8回は「イコナ・デザイン・グループICONA Design Group」である。


同社はトリノを創業地として世界各地に拠点を拡大。自動車以外のモビリティも果敢に提案してきた。その軌跡を紹介するとともに、このほどイコナデザイングループジャパンのゼネラルマネジャーに就任した仲西昭徳氏にも話を聞いた。


***


近年、欧州で話題の街乗り用EVに『ミクロリーノ』がある。スイス「マイクロモビリティ・システムズ」の製品で、2022年からイタリア・トリノで生産されている。


デザインは1950年代初頭にイタリアに誕生したマイクロカーにインスピレーションを受けながらも、新たな解釈を存分に反映させている。通常の乗用車と比較して3分の1の駐車面積、直角に止めて歩道に直接アクセスできるフロントドアが特徴だ。欧州の軽便車規格に準拠しているため、例としてイタリアでは16歳から公道運転が可能だ。


標準的な自動車と比較して、部品点数を最大50%抑制することにも成功している。このミクロリーノのデザインを手がけたのが、「イコナ・デザイン・グループICONA Design Group(以下イコナ)」である。ユーモラスな佇まいはセレブリティの間でも話題を呼んだ。例として、自社でも二酸化炭素排出量の削減を目指すファッション・ブランド「グッチ」のマルコ・ビッザッリCEOがいち早く購入した。


■創立当初から中国に注目


イコナは2010年、プロトタイプのエンジニアリングで長い実績をもつイタリア・トリノの「チェコンプ(CECOMP)」社によって2010年に設立された。実はミクロリーノの生産を受託しているのも、このチェコンプだ。


ファウンダー兼CEOを務めているのは、テレジオ・ジジ・ガウディオである。彼はミラノ・ボッコーニ大学で経営学修士号を取得後、2輪メーカー「アプリリア」、電装品サプライヤー「フィアム」などを経て、2007年から2009年には「スティーレ・ベルトーネ」でCEOの職にあった。


副社長兼グローバル・デザインダイレクターは、スティーレ・ベルトーネ時代にガウディオのもとでチーフ・デザイナーだったサミュエル・シュファートが務めている。


イコナ設立の趣旨は、「イタリアにおける高水準の自動車デザイン、および工業デザインを世界にもたらす」ことだった。自動車分野では、デザインプロセスからエンジニアリング、試作から少量生産までを設立当初から提供。続いて、近未来モビリティやプロダクトデザイン提案へと領域を拡大していった。


今日グループ全体の従業員は百三十数名で、彼らの国籍は21の国・地域に及ぶ。他極展開に早くから取り組んだのもイコナの特徴である。現在までにトリノ、上海、カリフォルニア、東京、ウェリントン(ニュージーランド)の5拠点体制を構築している。


最も力を入れたのは中国市場で、初の海外拠点は上海に開設。同地をたびたびコンセプトカー発表の場とするとともに、現地企業に積極的なアプローチを行ってきた。


中国メーカーは国内市場の伸びが以前のように望めないなか、今後EVを中心とした輸出に力を入れるとみられる。2023年9月のミュンヘンIAAモビリティにおける中国ブランドの存在感は、それを象徴しているといえよう。そうしたなか彼らが目指すのは、より収益性が高い高級モデルである。欧米日韓に対抗し得るレベルのデザインを獲得したい彼らに頼られることで、イコナの伸びしろはまだまだあると考えられる。


■スーパースポーツから自動運転モビリティまで


設立から今日までの13年間にイコナが公表している自動車プロジェクトは、冒頭のミクロリーノも含めて6台である。


2011年上海オートショーで公開した『フューゼレージ』はガルウィング式ドアを備えた4シーターセダンで、風洞実験による空気抵抗係数はCd0.26を達成している。コクピットのデザインは、ジェットファイターを意識している。


『ヴルカーノ』は、創業3年目である2013年に同じく上海オートショーで発表したスーパースポーツのコンセプトカーである。シュファートは、アメリカ空軍の超音速・高高度戦略偵察機SR-71プラックバードにインスパイアされたと語る。


エンジニアリングの監修は、元フェラーリのテクニカル・ダイレクター、クラウディオ・ロンバルディに仰いだ。


デザインにおける最大の挑戦は「パワーと美しさのバランス」であったとシュファートは振り返っている。イコナのロゴを彷彿とさせる三角形のモティーフが水平のラインを境にして、対称に反復する手法がとられている。


ヴルカーノは現地で大きな驚きをもって迎えられた。高いステージに置かれた同車を、周辺の他ブースよりもひときわ多い来場者が取り囲んでいたのを筆者は鮮明に記憶している。


その発展形として2016年モントレー・カーウィークに展示された「ブルカーノ・チタニウム」は、ボディパネルにネーキッド・チタンを用いたことで再び話題となった。


2015年上海オートショーで公開した『NEO』は、同地でのモビリティを意識した小型EVだった。後席左ドアを省略し、かつリアシートをラップアラウンドしたベンチ形状としたことで、より乗員がくつろげるようにした。


2018年ジュネーブ・ショーの『ニュークレアス』は、NEOに続くかたちで自動車の概念そのものを再考したものだった。自動運転レベル5を想定。ステアリングやダッシュボードを廃し、代わりに「自走式の6人乗りエグゼクティヴ・ラウンジ」としてモバイルリビングスペースとした。動力は燃料電池+4輪インホイールモーターを想定。2019年のジャーマン・デザインアワードで、輸送機器・ユニバーサルデザイン双方の部門賞を受賞した。


■スマートシティ向けにも積極提案


イコナはスマートシティへのアプローチも積極的に行ってきた。2019年『JD』はレベル4自動運転によるデリバリーカーで、中国のオンライン・リテーラー「JD.COM」のためにデザインされた。倉庫と配送センター間、加えてそこからターミナル配送ロボットまでの輸送を目的としている。デザインにあたっては都市景観に調和する威圧感の無さに配慮するとともに、安定性に富み、かつ機敏な挙動も念頭に置いた。


同じくJD.COMのために提案された2022年『ロボットシャトル』は同一プラットフォームで、旅客・貨物郵送から救急搬送まで、広く応用可能なトランスポーテーションだ。


このロボットシャトル、車体を取り巻く電光表示も特色のひとつである。例として生活必需品以外のアイテム輸送時はブルーに光り、そのタスクを周囲の人々にも認識させる。倉庫を出発して幹線道路を走行。車内から降ろされる小型ロボットで個々の配達を実行する。いっぽうで生活必需品を運搬する際の電光表示は赤になり、観光地、ショッピングまたは娯楽スポットで、人々にサービスを提供する。


『ラフティニティ』は、桂林の竹製いかだを着想源とした水上用エコシステムである。同一の電動プラットフォームによるモジュール構造で、観光ラウンジや農園など、さまざまな用途に用いることができる。接続することで、水上のコミュニティも形成可能だ。充電はワイヤレスが想定されている。


加えて、インダストリアル・デザイン領域でも、写真で示すようなゴンドラ、建築さらには太陽光パネルを用いた災害地用浄水トレーラーなど、多様な提案を行っている。


■長年のコラボレーターととともに


そのイコナは2020年、東京・銀座6丁目に「イコナデザイングループジャパン」を開設。そのゼネラルマネジャーとして2023年3月、仲西昭徳氏が就任した。仲西氏は1977年に金沢美術工芸大学の修士課程を修了後、三菱自動車に入社。2006年から2009年にデザイン担当執行役員を務めたほか、同社の欧州法人などの要職を歴任した。仲西氏との一問一答は、以下のとおりである。


Q:世界各地の拠点のなかで、東京の役割は? 


仲西:日本は世界的に最大の経済圏のひとつであり、東京は国際的なビジネスハブとして多くの世界的企業が拠点を置いています。私たちの役割は、そうしたクライアントとイコナ デザイン グループを繋ぐ窓口です。


Q:同業他社と比較した際の強みは何ですか?


仲西:2010年の創立以来多くのクライアントと育んだ業務経験を基に、高品質なデザインを、スピード感をもって提供できることです。世界各地に拠点をもつことによる、多様性に富み、かつユニークなデザイン提案やソリューションが可能です。


Q:御社はモビリティとインダストリアル双方のデザインを数々手がけてきました。どのような相互作用が期待できますか?


仲西:モビリティとインダストリアル・デザイン双方のアイディアをヒントに、ユニークなコンセプトやデザイン、そしてユーザーエクスペリエンスが提案できます。両者は、新しいテクノロジーとデザインを探求する上で共通の課題追求をしています。たとえば自動車デザインでは、電動化や自動運転技術の進歩にともない、新しいデザインパラダイムが必要になります。私たちはこれらの課題にIT分野などのインダストリアル・デザインの経験を応用できます。


持続可能性も双方に共通の重要なテーマです。エネルギー効率、環境への配慮、リサイクル素材の使用など、サステイナブルなデザインアプローチは両分野に応用できます。


Q:イコナには、母体であるチェコンプ社の存在があります。


仲西:私たちは、チェコンプ社や(同じく自動車開発支援企業でトリノを本拠とする)テクノキャドTecnocad社など、エンジニアリングや社内プロタイプ製作を含む、開発プロセス全体をカバーできる企業と長く協力関係にあります。彼らとの協調で、新たなデザインとテクノロジーの分野で、クライアントに最新かつ高品質なサービスを提供できるのです。


Q:いっぽう近年は、機動力と柔軟性を武器に、プロジェクトごとにコラボレートする小さなデザインスタジオも存在感を強めています。


仲西:クライアントのさまざまなニーズに対応し、サービスサポートの多様化を検討するうえで、プロジェクトごとに外部リソースを活用することは重要と考えます。当然、クライアントと弊社のデータセキュリティを高レベルで維持できる相手であることが前提です。それを踏まえたうえで、クリエイティブなコラボレーターや研究機関と協力することで、新しいアイディアやソリューションを生み出す機会が期待できます。


***


イコナによって、日本の自動車産業に、ひとつイタリア・トリノへの“窓”が開かれた。その存在が、海外を志す現役デザイナーや、これからデザインの世界を目指す若者にも良きモティベーションになることを願いたい。


この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事を最後まで読む

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事を最後まで読む

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事を最後まで読む

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください