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“3つのキーワード”ブリヂストンのモータースポーツ戦略…ここまでの60年とこれから

レスポンス / 2023年12月17日 10時30分

ブリヂストンは12月15日、モータースポーツ活動60周年を迎え、「『極限への挑戦』次のステージへ ‐ サステナブルなグローバルモータースポーツ活動強化 ‐」と題し、モータースポーツ60周年の活動総括と今後のモータースポーツ活動についての発表会を行なった。


◆モータースポーツ文化の発展を支える


Global CEO 石橋秀一氏が登壇し、ブリヂストンが目指す次のステージについて語った。冒頭で石橋氏は、「ブリヂストンは、心を動かすモビリティ体験を支えることにコミットする。モータースポーツ文化の発展を支えていくことをタイヤメーカーの原点と位置づけている」と語った。


同社はさまざまなレースに挑戦し、グローバルに拡大していったが、モータースポーツ活動の一番のマイルストーンとなったのは、やはりF1への参戦だ。1997年から2010年まで242戦175勝を支えてきた。これらの極限への挑戦にはブリヂストンのブランドコピーである『Passion for Excellence』がいかされている。すべての瞬間において最高の品質を追求する『情熱』、『技術力』『ものづくり力』、『ブランド力』、『人材』は現在に至るまでタイヤビジネスの基盤となっている。


そして次のステージについては、グローバルモータースポーツを強化するという。レースに参加することは、極限の状態で技術を磨くことができ、走る実験室として市販用タイヤ開発につなげられ、タイヤを進化させられる。そして、その中核となるEV時代の新たなプレミアム商品設計基盤技術が『ENLITEN(エンライトン)』だ。この基盤技術は、タイヤのニーズやウォンツを叶えるだけではなく、モビリティの特性に合わせてインスパイアさせるのが特徴。新たな価値を提供する究極のカスタマイズを実現させられる技術とのことだ。


加えて、サステナブルなソリューションカンパニーに向けて、原材料の調達からリサイクルまで、モータースポーツ界のバリューチェーン全体でサステナブル化を一気進めていくことも発表された。モータースポーツ用タイヤに使われる原材料の再生可能資源を拡充・多様化し、再生可能な資源比率65%以上を目指す。また、天然ゴムなどのトレーサビリティも担保していくようで、すでに今年のインディカーシリーズでは乾燥地帯で栽培できる植物のグアユール由来の天然ゴムを使ったレースタイヤを投入している。生産物流においては、カーボンニュートラル化を推進。モータースポーツ用タイヤ生産工場において100%再生可能エネルギーを使用し、パートナーとの競争でカーボンニュートラルな輸送の実現へ挑戦する。


◆エンライトン技術搭載タイヤはすでにレースで供給されている


同社がサステナブル化への挑戦として取り組んでいるのが、『ブリヂストンワールドソーラーチャレンジ』だ。このレースはオーストラリア大陸3000kmを走破するソーラーカーのレースで、2013年からタイトルスポンサーを務め、今年10月の10周年記念大会では、エンライトン技術を搭載したタイヤをモータースポーツで初投入している。このタイヤは低転がり抵抗・耐摩耗性能。軽量化に優れ、再生資源・再生可能資源比率63%となっている。


2023年から欧州6カ国6レースをサポートした『FIA ecoRally Cup』でも、エンライトン技術を投入したタイヤ『TURANZA 6』、『TURANZA A/S 6』装着車がモナコ大会とイタリア大会で優勝している。このように、グローバルでエンライトン搭載商品を展開し、EV化の加速、カーボンニュートラルなモビリティ社会の実現を支えるとしている。


また2026-27年シーズンからの単独サプライヤーに選定された『ABB FIA Formula E 世界選手権』についても触れた。石橋氏は「ブリヂストンのモータースポーツ活動60周年を迎えた年に約15年ぶりにFIA世界選手権に復帰を果たし、新たな挑戦に挑めることを大変うれしく思う。Formula Eのタイヤ供給を通じて、これまで説明してきたバリューチェーン全体でのイノベーションをグローバルでさらに加速させ、当社の使命である最高の品質で社会に貢献のもと、持続可能な社会の実現へ貢献する。」と述べた。


また最後に「ブリヂストンは最高を支える存在であり続けるモビリティの未来になくてはならない存在となるために、サステナブルなグローバルモータースポーツ活動を推進していく。そしてモータースポーツを愛する仲間とともに、ずっとモータースポーツに限りない情熱を注いでいく」と意気込みを語った。


続いて常務役員製品開発管掌の草野亜希夫氏が登壇。『サステナブルなグローバルモータースポーツ活動を通じた”究極のカスタマイズ”への技術開発』と題し、技術面についての解説が行なわれた。


◆一気通貫でタイヤや素材を開発できることは強み


草野氏まず、モータースポーツはブリヂストンの原点であり、「タイヤは命を乗せている」ということを大前提に、極限の場を徹底的に走ることで人が育ち、技術が磨かれ、タイヤを極めるというフェーズがあると説明。


「走る実験室であるモータースポーツを最大活用し、モータースポーツ文化を支え、極限へ挑戦していくこと。そして、ブリヂストンのDNAである絶対的な品質へのこだわりをベースに、チームやドライバーへしっかり寄り添い、現物現場を最も重要な場所として、極限への挑戦を通じてブリヂストンのDNAを鍛えていく」と語った。


このようなモータースポーツで磨かれてきたブリヂストンのコア技術のひとつは、実車性能、タイヤ性能、ゴム性能まで一気通貫でタイヤやその素材を開発できること。そしてさらに細かいナノレベル、つまりゴムを構成するポリマーを分子レベルで設計できることにある。このようなポリマー設計は、ゴムを究める技術としてモータースポーツから市販品へすでに適応している。たとえば『BLIZZAK VRX3』や『REGNO GR-X III』などだ。


◆次世代へと向けて「ゴムを極める」、「接地を極める」、「サステナブル化」の3つのキーワードを設定


次のステージについては、EVの進化を見据えて、対摩耗性能や転がり性能の低減といったEVタイヤに求められるコア性能に加えて、環境性能をも考えたタイヤ開発を進めていくとのこと。モータースポーツという「走る実験室」極限への挑戦の中、「ゴムを極める」、「接地を極める」、「サステナブル化」をいち早く推進。これら技術を極めることで、究極のカスタマイズを実現するエンライトン技術を進化させ次のステージへ加速していくと、これからのブリヂストンの方向性を示した。


ゴムを極めるについては、2024年4月から本格運用を開始する東北大の次世代放射光施設NanoTerasuを活用し、ゴムを見る技術を飛躍的に進歩進化させる。この施設を活用することで、ゴムの分子構造が静止した状態においては、よりクリアに見えるようになり、さらに今まで見えていなかったゴム分子構造が動いている状態においても、クリアに見えるようになる。これら見る技術の進化により、分子レベルでのゴムの見える化が飛躍的に向上し、よりスケールの小さな高度な原子レベルでのゴムポリマー設計が行なえると語った。


接地を極めるについての重要な要素は、路面に対してタイヤの接着状態を把握することにある。同社は路面を正確に精度よく再現することができる「ULTIMAT EYE」であらゆる路面との接触状態の見える化を可能としている。さらにこれに加えて、デジタルシミュレーション技術の進化により、あらゆる路面接地状態を再現し、タイヤが接地し変形している状態を分析。必要なタイヤ性能を正確に予測することができるようになる。


サステナブル化については、産学官が連携し、さらに従来とは異なる業界の様々なパートナーとの共創を推進していくとのこと。極限の性能が求められるモータースポーツタイヤでの実証実験を経て、市販用タイヤへの展開も考えられているようだ。


最後に草野氏は、「モータースポーツという走る実験室、グローバルでの挑戦、ゴムを極める、接地を極める、サステナブル化をベースに、すべての技術レベルを一段とアップし、究極のカスタマイズを実現するエンライトン技術を次のステージへ進化させていく」と今後の方向性をまとめた。

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