新型 N-BOXとスペーシアのドッグフレンドリーカー対決!【青山尚暉のわんダフルカーライフ】
レスポンス / 2024年1月7日 20時0分
ミニマムなサイズのドッグフレンドリーカーとして定番と言えるのが、ハイトワゴン、スーパーハイト系と呼ばれる軽自動車。販売面でもトップを独走する両側スライドドアと広大な室内空間を備えたモデルだ。
2023年、その代表格のホンダ『N-BOX』とスズキ『スペーシア』がともにフルモデルチェンジ。3代目へと生まれ変わったばかりだ。そこで、自称自動車評論犬!? のわが家のジャックラッセルのララとともに、両車のドッグフレンドリーカーとしての資質を探ってみた。
N-BOXとスペーシアの新型は、もちろん最新のクルマだが、実は、両車ともに室内空間の広さ、前後席の配置などに代表されるパッケージングは先代と大きく変わっていない(インテリアデザインの進化によって数mmの差はあるが)。これを念頭に、それぞれのドッグフレンドリーポイントをチェックしていこう。
◆後席部分の乗り降りのしやすさは?
まずは、愛犬の特等席となる後席部分について。両側スライドドアからの乗降性はどちらも文句なし。N-BOXはスライドドアのステップ部地上高365mm、開口幅600mm(高さ1240mm)。スペーシアはスライドドアのステップ部地上高345mm、開口幅600mm(高さ1250mm)。ともにステップ部からフロアへの段差のない掃き出しフロアで、小型犬でも乗り降りがしやすい。細かく見れば、スペーシアのほうがスライドドア部分のステップが20mm低く、より犬の乗降性に優れるとも言えるが、N-BOXの365mmも決して高くはない。
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愛犬が快適に乗車できる後席のシートは、どちらも5:5分割かつフラットで、そのまま乗車するのにも適しており、またペットカートのコットやドッグベッドの固定しやすさも文句なしだ。普通車の後席はサポート性を高め、かけ心地を落ち着かせるために座面が凸凹していたり、座面が前上がりになっていることもあるのだが、両車はそうではなく愛犬の乗車に相応しい後席と言っていい。
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◆愛犬の特等席はどちらが快適か
サイズはN-BOXが座面長480×座面総幅1080mm(540mm×2)。フロアからシート座面先端までの高さ=ヒール段差355mm。スペーシアは座面長490×座面総幅1080mm(540mm×2)。フロアからシート座面先端までの高さ=ヒール段差360mm…と、ほぼ同じである。
後席居住スペースのゆとりは両車ともに十分すぎるほど。身長172cmの筆者のドライビングポジション基準でN-BOXは頭上に235mm、膝周りに最大420mm(後席スライド後端位置)ものスペースがある。スペーシアも頭上に270mm!(だから天井サーキュレーターを設置できた)、膝周りに最大325mm(後席スライド後端位置)のゆったりとしたスペースが確保されている。
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ちなみに愛犬が後席に乗車した際に嬉しい、直射日光を遮り車内の温度上昇を抑制し、犬が嫌がる外からの干渉を防ぐスライドドア部分の窓のロールサンシェードはどちらにも用意されている。
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が、新型スペーシアの大きな特徴が、後席の「マルチユースフラップ」と呼ばれる仕掛け。なんとフラップの角度、長さを調整することで、オットマン・レッグサポート・荷物ストッパーの3つのモードを備えていること。この中で、自称自動車評論犬!? のジャックラッセルのララが実際に体験して気に入ったのが、荷物ストッパーモード。後席にドッグベッドなどを設置する際のズレ防止効果があるとともに、直接乗車した場合、写真のように上向きにしたフラップが、自宅の愛用ドッグベッドの縁代わりになり、前足をかけて寛ぐのにちょうどいいとのこと。
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そしてもうひとつの新型スペーシアのララお気に入りポイントが、天井に用意されたスリムサーキュレーター。犬は1年中毛皮を着ていて脱ぐことができないため、暑さは苦手。また、軽井沢出身にして寒がりでもあるララは、同時に寒さも苦手なのである。そんな暑がり、寒がりの犬も、スリムサーキュレーターが車内の空気を効率よく循環させ、冷たい空気や暖かい空気の偏りを解消してくれるから、1年中後席で快適に過ごせることになる。後席エアコン吹き出し口のない軽自動車にとって、静音な天井サーキュレーターは注目すべきドッグフレンドリー装備になるというわけだ(後席ヒーターダクトは別にあり)。
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◆ラゲッジスペースの広さも要チェック
愛犬の乗車スペースは後席がベストだが、人の乗車形態、大型犬の乗車で、やむなく犬をラゲッジスペースに乗せなくてはならない場合はどうだろう。まず、ラゲッジルームの開口部地上高を見ると、低床自慢のN-BOXが490mm。スペーシアが535mm(自転車の車輪ガイド部は510mm)。N-BOXのほうがよりフロアが低く、重い荷物の出し入れや犬の乗り降りはより快適だが、世界のステーションワゴンのラゲッジルーム開口部地上高の平均値は約630mm。スペーシアでもごく低いから、安心してほしい。
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後席を使用した状態でのラゲッジスペースの奥行(後席後端位置)はN-BOXが約410mm、スペーシアが約310mmで、後席を前端位置にセットすれば奥行はそれぞれ約570mm、約520mmの奥行に拡大。しかし、後席の背もたれが高い壁になり、空調環境、飼い主とのアイコンタクトの可否…という点で不適切。が、後席背もたれを倒した状態なら、ラゲッジスペースのフロア奥行はN-BOXが約1280mm、スペーシアが約1270mmまで広がり、多頭や大型犬の乗車、大型クレートの設置も余裕で可能になる。
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そこで重要なのが、後席を拡大した時のフロアのフラット度。大きな段差や角度がつくと、犬は快適に乗車していられなくなりがちだ。その点では、後席格納時のフラット度(26インチの自転車積載のためというのが真実だが)では、先代に引き続きスペーシアがリードしている。
さらに、新型スペーシアの意外なるドッグフレンドリーポイントが、助手席前のビッグオープントレー。これは、コロナ禍の車両開発時にあったテイクアウト需要の高まりが発想の原点で、後席用のパーソナルテーブルとともに、車内でテイクアウトしたものを快適に食べるための配慮(飲み物を置くボトルホルダーもあり)。これがどうしてドッグフレンドリー装備なのかと言えば、ドライブ先でドッグカフェが見つからない、寒い時期や暑い時期、雨の日に店内ペットOKの飲食店が見つからない場合でも、テイクアウトによって車内を“どこでもドッグカフェ”として開店!? できるメリットがあるからである。
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◆車である以上当然走行性能も無視できない
と、ここまでのドッグフレンドリーポイントでは、互角、またはスペーシアがリードしている部分が少なくない(マルチユースフラップやサーキュレーター、ビッグオープントレーなどの装備による)。
が、クルマは走ってナンボである。走りのドッグフレンドリーポイントとしては、車内でどこかにつかまれない犬が安心して乗っていられるための乗り心地と、聴覚に優れた犬がストレスなく乗っていられるための車内の静かさが重要だ。実際にN-BOXとスペーシアの2台を走らせ、ララを乗せてみたところ、乗り心地面ではN-BOXが標準車、カスタムのターボモデルともにリード。より快適でショックの少ない乗り心地を示してくれたのだ。スペーシアはとくにカスタムのターボモデルの場合、標準車、カスタムNAモデルの14インチに対して15インチタイヤを履くことと、ボディかかなりしっかりしていることもあって、良路では快適なものの、荒れた路面や段差の乗り越えでの乗り心地が硬く、ショックも大きめなのである。
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では、車内の静かさについてはどうだろう。この点では、両車ともに合格。軽自動車とは思えない、上級車並みの車内の静かさが実現されていることを確認できた。とくにスペーシアは先代のウィークポイントのひとつでもあった後席の静粛性を高めているため、ララを後席に乗せ、長距離ドライブに連れ出しても「とっても静かでリラックスしたままドライブを楽しめたわん」という好印象だったとのこと(ララ談)。
◆純正アクセサリーがドッグフレンドリーなのは?
最後に、クルマのドッグフレンドリーポイントを評価する際、車両本体だけでなく、愛犬用の純正アクセサリーの充実度が良否を決めたりするのだが、これまで、ホンダ車には純正の愛犬用アクセサリー「ホンダドッグシリーズ」(後席用のペットシートマット、ペットシートサークル、ペットドアライニングカバー、愛犬を助手席に安全に乗せられるペットシートプラスわん2など)が用意され、ほかの自動車メーカーを圧倒していた。
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が、新型スペーシアではこれまでもあった後席用シートクリーンカバーに加え、後席用ペットサークル(小型犬用)、ドアトリムカバーを新発売。「ホンダドッグシリーズ」ほどのアイテム数ではないにしても、スペーシアの後席に愛犬をより安全快適に乗せられるようになった点は、ララ曰く「おおいに評価したいわん」とのこと。
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こうして新型N-BOXと新型スペーシアのドッグフレンドリーポイントを比較してみると、両車それぞれに魅力、優位点があり、あとはどの部分を優先するかで、愛犬家家族それぞれにとって、よりよいドッグフレンドーカー選びが可能になるはず。とはいえ、どちらを選んでも、軽自動車最高レベルのドッグフレンドリーポイントが備わっていることは間違いないと思える。
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