制動力の鍵はピストンの数? ブレーキ性能の真実に迫る~カスタムHOW TO~
レスポンス / 2024年1月23日 6時30分
ブレーキキャリパーで高性能なものといえば4POTや6POTとなり、今や主流は6POTになりつつある。なぜピストン数が多いと高性能なのか。
◆ピストン数増えればプラスになるのがブレーキなのか?
ディスクブレーキではキャリパー内のピストンがパッドを押している。ドライバーがブレーキを踏むとマスターシリンダーからブレーキフルードが圧送される。その圧力でキャリパー内のピストンを押して、ブレーキパッドをローターに押し付けてブレーキを効かせている。
純正では片押しキャリパーが多くピストン数は1つ。そこから対向キャリパーになるとローターを挟んで内側と外側にピストンがある2POTや4POTという具合になる。高性能なキャリパーではそのピストンの数が増えていく傾向があり、現在は6POTが主流となっている。なかには8POTや12POTというキャリパーもある。
◆フルードの圧力は決まっているから
ピストン数が増えるほどにブレーキの効きがよくなるかというと実はそういうわけではない。そもそもブレーキはペダルを踏んで圧送されるフルードの圧力は決まっている。なので、ピストン数が増えても、そのピストンの面積自体は同じでないといけない。純正ブレーキキャリパーよりもピストンの面積が大きくなるともっと強く踏み込まないと効かないブレーキになってしまう。あえて、ややそういうセッティングにして踏み込んで効くブレーキにしていることはあるが、ピストン数を増やせばブレーキが効くわけではないのだ。
ではなぜピストン数を増やすのか。それは大きなローター径を使えるようになるから。ピストン数が少ないと必然的に大きなピストンになる。そうなると構造的に大径ローターが入りにくい。そこでピストン数を増やしてローターの外側にパッドが当たるようにすることで、効き自体も高めることができるし、大きな径のローターにも装着できるようになるのだ。
◆全体のキャパシティがアップ、耐久性も向上
ローターは大きい方が回転している中心から遠いところを掴むことができるので小さな力で回転を止められるようになる。つまりブレーキは効く。また、パッドが円周方向に大きくできるので摩擦面積を増やせるので効きもアップできるし、温度も上がりにくくできる。細長い形状のパッドにすることで効きもライフもアップすることができるのだ。
またキャリパーの形状も円周方向に大きくできる。大きくなっても円周方向なのでホイールと干渉しにくいのも大きなメリットのひとつだ。そういった理由から高性能キャリパーではピストン数が増えてきているわけである。なので、6POTなどのピストン数の多いキャリパーは小さな力で高い制動力を得やすい。しかし、そもそもローター径を拡大しないとそれほど制動力自体は変わらない。パッドの形状が円周上に伸びるのと、ローターの外側をメインに摩擦するのでその分の効きの高まりはあるが、劇的に効くわけではない。
というのも現代のクルマでは余程のことがない限りノーマルキャリパーでも制動力が足りないことはない。だが、サーキットで連続周回していると効きが甘くなってくるとか、パッドやローターがすぐにダメージを受けてしまうことは多い。そこで高性能キャリパーにすることでブレーキ全体のキャパシティをアップさせ、耐久性を高めたりできるのだ。
キャリパー自体の剛性は純正品よりも遥かに高い。そこから得られるブレーキタッチも魅力のひとつ。ブレーキを踏み込んでもしっかりとした剛性感がある。ブレーキペダルのストローク自体は短くなるが、そのなかで細かく効きを調整できるようになるので、扱いやすさはアップする。サーキットでプロドライバーがABSが入るギリギリの制動力を維持したりできるのも、こういった扱いやすいブレーキがついているからとも言えるのだ。
◆大切なのはピストン数を増やすことではなく
大切なのはピストン数を増やすことではなく、前後キャリパーやクルマとのバランス。フロントだけ効いてもよくない。フロントをビッグキャリパーにするならリアには効きの良いパッド入れてバランスを取るとか、リアのローター径も拡大するなどのバランスチューンが必要。
また車種によってビッグローターを組み合わせるとABSのバグが発生しやすいこともある。そういった場合はローター径の拡大をしないとか対策部品が出ている場合もあるので、プロショップのノウハウに従ってもらいたい。ブレーキは街乗りでも必ず使うものでいつでもどこでもその効きを堪能できるだけにオススメのチューニングパーツ。ぜひ安全安心なブレーキチューンを行ってドライビングを楽しんでもらいたい。
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